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乳癌になった話 その7

10月2日(火)の転移告知の日には夫と長男が付いてきてくれた。


先生から「○○さん、初期の初期、 転移ないよ。リンパにも乗ってない!切ったら終わり!大丈夫だよ!」と言われ3人が大きなため息をついた。
しかし、決めるべきことはまだまだある。
乳房再建手術だ。


「それでね…」と先生が出来上がっている説明用の下敷き状のメニューのようなものを出してきて「傷口はこんな風になります」とか言うんだけど「それ、マクドナルドのメニューみたいですね…」と言わなくていいこと言ってしまう。


「乳房再建はしない方向で」と言ったら、先生がちょっとびっくりしたところをみると我々の世代あたりは保険も適用になったし乳房再建手術を受ける方が多いのかもしれない。


先生は「お風呂入る時にはこんな入浴着もあるしね、こんなのもあるんだよ」と義手や義足のような義おっぱいを見せてくれた。


私はどちらも「うーん」という感じで、
「公衆浴場って『刺青、タトゥーお断り』って書いてあっても『片乳お断り』とは書いてないですよね、
私は片方のおっぱい無くなっても胸張って生きます。

それに、先生私のおっぱい散々見ましたよね。こんなに大きくないのにソレくっつけたら右と左がガチャガチャですよ!」と言ったら先生は慌てて、
「これは見本だから…」と言って困った顔をしていた。笑いたいけど笑ってはいけない場面だからだ。


ちゃんとある方の胸から型取りをして制作してもらうのだそうだ。ネットで調べてみると精巧に出来ていて30万ほどかかる模様。


作って2〜3回使ったらその辺で転がってシリコンだからめっちゃホコリ付けて放置している自分が安易に想像できてしまう。


乳房再建手術については、
夫婦ではじめからしなくてもいいと話し合っていたし
元々貧乳でおっぱいに重きを置いてこなかった人生が幸いして本当に
「別に…いらんな」
という気持ちだったのだが、
どちらが主流なのか好奇心で調べてみるとどちらが
主流であるのはわからないままだったけど、
アメリカで乳房再建手術をしない「GO フラット運動」なるものがあって、フラットになったおっぱいの
なにが悪いのよ的な感じがカッコよかったので私も便乗して
GOフラットで生きることにした。


この日、待合室で私みたいにMRIを撮らなきゃいけない人がいて先生は最短の日付を提示してくれてるんだけど本人が「その日は大殺界だからダメ」と言っていて再検査から13日で癌告知まで行った身としては
「はよ撮りや!」と思うものの、みんないろんなものを信じて生きてるんだなぁ…と思うと同時に
彼女が良性でありますように…と願った。


今でもそうだけど、
自分は発見が早く転移もなく病理部だけを切除してエストロゲンを止めるお薬を10年間飲み続けることになっている。
しかし、どこかで抗がん剤をしていない自分に後ろめたさのような気持ちがある。
癌患者…といっても複雑なのだ。


私も今回、癌についてたくさん本を読んで「癌」といっても性格や顔つきは色々で1つのカテゴリーでは縛れない。それなのに「癌にはこれがいい」とか「甘いものばっかり食べるから」などと言われて「甘いもの作るけど食ってねえよ!」と思ったし、知りもしないのにいろいろ言われるのがストレスになった。


私たちは癌について知らなすぎるし、
「もう死ぬ」みたいな勢いで来る人には「まだ死なんで!」と何度も言ったりした。


身内に既往歴なし、太ってもおらず、乳癌になりやすい人の傾向にひとつも当てはまらなかったけど乳癌になりました。


そして左乳房摘出手術の5日前に「軽度異形成」と言われていた子宮頸部は「高度異形成」という生検の結果が出て、乳房摘出手術と同時に子宮頸部を切り取る手術も一度の麻酔の間にすることになり、取った子宮頸部から後日の生検で0期といわれる「上皮内癌」が出てきました。


2年に一度の検診でたまたま見つかった乳癌と子宮頚上皮内癌。


先生が言うには乳癌は5年前くらいに種を作ってやっとシコリとして認知できマンモグラフィーに映ったのだろう…ということ。
おそらく乳癌と子宮頸部の上皮内癌はエストロゲン由来で因果関係はあるだろう…ということ。



「怖いから検診に行かない」とよく言われるが、
もっと怖いことになるから検診は行った方がいいよ…と身を持って思う。


あ、後日談だけど父親に電話で乳癌になったけど、
転移してないし切り取って終わりだから。
(先生にお父様にそう説明して…と指示してもらった)

経緯は全部お姉ちゃんが知ってるし、
心配しないで!あとお母さんに変なものとか癌に効くものとか送ってこないで!って言っといて!って告げると気丈に「わかった」「理解した」とか言ってたくせにそのまま受話器持ったまま、「ミホが……ミホが……」と崩れ落ちて床に伏せて泣いたらしい


……もう思った通りやし。


母がものすごく慌てて
(ミホはもう死んだと思ったらしい)
詳細聞いても号泣してラチあかず「お姉ちゃんが!お姉ちゃんが知ってるらしい」というヒントだけ与えて泣いていて、母は姉に電話して詳細を知ることになる。姉に軽いタッチで「乳癌やけど初期やから切ったらええらしいで」と言われ自分の周りの乳癌の人たちもピンピンしてるので母は特に問題なかった。


心配していた変なものも送ってこなかったし、
それだけでも気が楽になった。


姉のことは「陰陽師」と呼んでいる。
私にとって時に魑魅魍魎な両親を封じることができる唯一無二の存在
それが姉だ。
姉がいてくれて良かった…心からそう思った。

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