見出し画像

乳癌になった話 その8

手術日は10月24日(水)に決まった。

癌発覚からうつ伏せに寝て胸潰れたら
癌が乳腺からはみ出したりしないのかな?圧で…
とか今まで落ち込みゼロで休職をエンジョイしてるけど手術の後、急にテンション下がって落ち込むのかな?…とかよくわからない事に頭を悩ませていた。


乳癌の5年生存率は私の1期では100%。
しかし直前に味わった台風21号のせいで
「癌宣告されても癌で死ぬとは限らない…」
という想いが強くなっていた。


乳癌は再発しやすいとも言われていて再発箇所も肺や脳、取らなかった方の胸など近場が多いらしい…職場恋愛みたいやな、手っ取り早いどこ行くんか…と思った。
そういえば夫とも職場恋愛したんやったわ。


考えて癌が消えるなら悩むけど
考えても仕方ないことは神様に預けてしまおう
今までの人生でも上手くいったこともあれば思い通りにならなかったことも多々あり、その都度一喜一憂することが面倒な年齢になっていた。


4月には次男坊を志望大学に入学させることができて
(ま、本人ががんばったんやけど)
受験という荒波を乗り越えるための、サポートメンバーの筆頭として鎮座していた私としては、子育てが終わったこの時期で本当にありがとうございます…と言う感謝の気持ちでいっぱいだった。


虫で言うたら、次の世代を残したのだ、
奴らは下手すると交配して相方の栄養になる。
生きてるだけでも丸儲け…


乳癌に関するブログをたくさん読ませてもらったが、
お子さんが小さい方や抗がん剤治療の苦労など
沢山の方々が今も治療に励んでおられる。
乳癌とは現在、12人に1人がなる癌である。


経験者ブログや「乳癌学会」の記事などは
沢山読ませてもらったが一方で遠ざけたものもある。
代替療法の記事や信憑性に欠けるコラムなど
ピンクリボン月間で樹木希林さんが鬼籍に入られたこともあり乳癌の記事がネットには溢れていた。


取捨選択をする。


これが私に課せられた主題であったと思う。
乳癌コーディネーターさんに言われたことは、
「正しい知識を入れて相手(癌)を知り、主治医と相談しながら自分で選ぶことが大切」ということだった。


久しぶりにあんなにマジで勉強した。
ねじり鉢巻で乳癌学会の本を読み漁り、
ありとあらゆる可能性に対応する脳内チャートを作るのに夢中になった。
言いなりのまま、後悔するのだけは御免と思っていた


入院は1日前の10月23日(火)


夫の職場の方々のはからいで、
検査や入院手術、退院の時などすべてお休みさせてくれることになっていた。

10月23日(火)は長男も休みで、
病院に夫と長男も同行してくれた。
主治医はA先生とは別のT先生になることも事前に聞かされていたが、この日がT先生とはじめましてのご挨拶になった。
何しろ、怒涛のスピードで現実が進んでいくのだ。


T先生は個室で夫と長男同席のもと、
手術の概要を説明してくれた。
柔らかいA先生とは違って冗談言っても笑わなそうな
先生だった。うええ…と思った。  そのときは。


どんなに診察室でこっちが面白い解答の球を投げても
「アハ……笑っていいのかな?」と我慢してあははと
笑ってくれなかったA先生。
毎回、おもしろ解答と笑いたいけど笑わないA先生との攻防戦が続いていた。


夜になって夫と長男が帰ったあと、
A先生が外来診療を終えて様子を見に来てくれた。
A先生の顔を見るとホッとして泣きそうになるのを堪えた。A先生とはなぜかホッとする空気を纏っているのだ。緊張感がふっと消えた。


A先生はおもむろに
「○○さんね、今日眠れなくても大丈夫だよ。
明日麻酔でめっちゃ寝るからね……」
と、カシコ特有の冗談か本気かわかりかねるが
渾身のおもしろ発言で和ませてくれた。


あんなに、
あんなに我慢して笑ってくれなかったのに
ようやく心が通った気がした。


ヨシ!手術!これで安心してイケる!と思った。

#乳がん
#乳癌
#癌
#がん
#コラム

うれしかった時にお金を入れる缶がわが家にはあります。1年間のうれしいをまとめてクリスマスに募金しております。サポートしていただいたら世界のどこかで役に立つかも!