見出し画像

私の死生観について。

小さな頃から1番性格が似ている…と言われていた
叔母がいた。

人の面倒見がよく、料理が上手く、優しく
お坊さんの読経の後ろで笑わせてくる。
笑わないようにするのに下を向き耐えなければいけない。見つからないように「やめて」というジェスチャーをすると声を出さずにひひひと笑う。
いたずらの好きな叔母だった。

叔母と私は母性の蟹座で7月生まれ。
誕生日は1日違い。

叔母は
「姪の産んだ子は可愛い」と長男を冬のコートの中に入れてずっと奈良の町を抱いて歩いてくれた。
あの日の白いウールコートの光景がまだ映像で残ってる。

ある春の日、
叔母は49歳で彼岸の人になってしまった。
自らの手で彼岸の人になってしまったのだ。
お茶目な人であったが、心に深い苦しみを抱えていた。

叔母の苦しみについては我々も知ってはいたが、
結果的にどうすることもできなかった。

まだ20代の私は「人はなぜ生まれてなぜ死ぬのか」
わからなくなっていた。

たくさんの本を読んだけれど、
答えはない。あるのは悲しみと
「人間は簡単に死ぬ」という事実だけ。

運動場に引く白線を思い出して欲しい。
白線を飛び越えて向こう側に行くことなど
たやすいことだ。
死はそれほどに身近であると思った。

それから「死」という概念が頭から離れなくなった。恐れたのは自分が死ぬ…ということより、
愛するものを失う怖さ。
愛を得ると失うことがこんなに怖くなるのか
…と恐怖に震えた。

愛するものを亡くした時、
救ってくれるのは時間しかない。
深い悲しみには忘却する時間が必要だった。

5年ほど「生死」について考えていたと思う。
叔母が亡くなった日は長男の1歳の誕生日の少し前だった。桜の季節に桜が散るように逝ってしまった。

画像1

長男が2歳7ヶ月の時に次男を産んだ。

子育てに追われつつも哀しみは癒えず、
暗い穴に落ちたような日々を鬱々と過ごしていた。
心は乱世。ふとした瞬間に憂鬱になった。
答えの出ない問いについて考えても仕方ないとわかっているのに楽しい場面にふと思い出して苦しくなった。

「この子たちを失ったら生きていけない」
叔母の一件でかなりナーバスになっていた。

愛するものを失う怖さは失った者にしか理解できないと思う。
関係性が深く身近で親密であればあるほど喪失感が深いのだ。

叔母の死から5年ほど経った頃だろうか、
本当にふと啓示のように

「失うことを恐れるより、いつ別れてもいいように常に愛を伝えればいいじゃないか」


…という考えが降りてきた。
それから愛を伝えることに積極的になった。
生きてる限り愛を伝える。

子どもにも言葉で、料理で、行動で愛を体現した。
多少オーバーなところもあったと思う。
私がいつ死んでも「自分はこんなに愛されていた」と自信を持てるように。

大人になって社会に出る為の教育や哲学、知恵の類はいつ切れてもいいように精一杯のベストを尽くして伝えていく。


それからこんな風にも考えるようになった。

人間は死亡率100%である。
いつ切れても後悔しない関係性を構築することに努力する。


…と。

今、私は叔母が亡くなった49歳。
子育て卒業でこれから楽しい年齢に差し掛かったところだ。

でもおばちゃん、
私、癌になって告知も受けて手術もしたけど、
すごく元気。心まで病気にならなかったよ。

おばちゃんの「死」で得た「死生観」がとても
役に立ってるの。
子育てに悔いはないし、夫や同居のお姑さんとも楽しくやってる。
投薬で再発を防いでいてなにかと副作用もあるけど
ネタにしてあんまり気にしていない。

おばちゃんの死は本当に無念であったし、
また逢いたいと心から本当に思う。

「あんたは何をしてあげても嬉しそうにするね」
と褒めてくれた言葉が今も私を支えてる。

おばちゃん、物じゃなくておばちゃんがいつも
私たち姪っ子の為になにかしてあげようと心を砕いてくれてることがうれしかったから素直に嬉しかったわ。

私はまだ死なないみたい。
棺桶入るまでが人生。
生きるって走馬燈のページを増やすことなんじゃないかって癌告知された時思ってん。


いろんな人と関わるといろんなエピソードが生まれる。

その1つ1つがページとなって、
死ぬ瞬間に再生されるのだとしたらすぐ終わる走馬燈よりページ数は多い方が楽しいじゃないか。

生きていたら楽しいことばかりではないが、
辛いことばかりでもない。辛かったこともまた時間が経てば思い出に変わるのだ。

走馬燈のページを増やす為に日々のエピソードを生きている


それだって立派な生きる理由になるんじゃないかと思う。



うれしかった時にお金を入れる缶がわが家にはあります。1年間のうれしいをまとめてクリスマスに募金しております。サポートしていただいたら世界のどこかで役に立つかも!