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before還暦diary 川越日帰り旅の巻    その4 さとみほ舌なめずり

  金蔵おじさんは、それからも境内のみどころを次々に案内し、ポーズに厳しい注文をつけながらも、おばさんペア写真を撮ってくれた。            

なかなかの案内っぷりに、さすがのマイ警報機も、ちょっと様子見モードにシフトしようかと警戒音を下げかけたその時、なんと金蔵氏は、彼一押しの記念撮影ポイントであるらしい山門の前で、我々二人に、マスクをとるように言い放ったのである!(きゃ~っ、いや~)                   はっ??(怒)、コロナコロナ!!ここは当然拒否だよね(怒怒)!とアイコンタクトを取った私をあっさり無視したマサ子先生は、「はぁ~い(ピヨピヨピヨピヨピヨ)」と、ためらうことなくマスクをはずしたのである!

え~!!びっくり仰天すぎるわっ。  

「まさかマサ子まさかマサ子(続く)・・・・」と、動揺しつつ、私もしぶしぶマスクをはずしたのであった。(はずしたんかいっ)
                                  そしておじさんはマサ子先生に、彼女のiphoneを渡すように促したのだが、それを受け取りながら放った独り言を私は聞き逃さなかったね。

「マスクとったら全然違うな」

つまり、金蔵氏は、我々を40代、いやもしかすると30代(それはないか・・すまぬ。)の二人組だとふんで声をかけてきたのかもしれない。  こちとら、昨今のマスク文化の恩恵を受けた世代。目元メイクには、お金も時間もかけている。マツエク装着、アイラインばっちりの目元の印象だけでは、そこらのおじさんに女の年齢など確定できるはずもなかろう。(至近距離での観察禁止条例発動中)                       

ところがどっこい(どっこいとは、「しかし」「だが」などの逆説を表す『ところが』の強調。Byグーグル総帥。為念)、マスクをとってみれば、頬の肉下がり、ほうれい線が深く刻まれ、マリオネットラインくっきりの、どうみても50代後半の女たち(2歳年下のマサ子先生はわたしよりずいぶんましです。気遣い気遣い・・・ふう)だったのだから、金蔵氏の失意ったらないだろう。 「50代?いや60代か?今日ははずれだ。うう・・無念でござる」と、奥歯をギリギリさせ、わが身を呪ったことであろうよ。

すると、それまで通奏低音のように、私の脳内に鳴り響いていた疑心暗鬼測定器の警報音がピタリと止まり、代わって脳内在住トランペット奏者がファンファーレを高らかに吹き始めたのだ。                               

金蔵め(いつのまにか金蔵呼ばわり)とうとう馬脚をあらわしたな!                おぬしの心中お察しいたす。                     50女で相すまぬ。それもギリギリ50代だしな。            私は、かけなおしたマスクの下でひひひ・・と舌なめずりしつつ、残忍な笑みを浮かべた。               

それでも金蔵は、すばやく気持ちを立て直したらしく、我々をマサ子先生のiPhoneカメラにおさめた。
                                  なんだか妙な脳内物質が湧き出てきたらしく、多幸感に酔いしれた私は、マサ子先生とともに、金蔵のポーズ指定に従い、手をつないだり、万歳したり、口角あげたりして、中院山門前のおば撮影会は、そこそこ盛り上がりをみせたのであった。         

続く

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