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before還暦diary 川越日帰り旅の巻    その3 一粒300メートル

前回までのあらすじ                         ある日、私(さとみほ)は、友人マサ子先生と小江戸川越を旅した。市内七福神巡りの途中、我々年齢不詳ペアに突然話しかけてきた、怪しげなおじさん、金蔵が現れたのだ!                        どうする!?さとみほ!!      

おじさんは、私の三白眼に気が付かないのか、「喜多院行く前に中院みたの?」と聞いてきた。 中院は、目的地である喜多院の隣に建つ、由緒ある天台宗のお寺であるらしい。狭山茶発祥の地でもあり、春は桜、秋は紅葉が美しく、手入れの行き届いた広大な庭を目当てに、観光客が多く訪れるお寺であるということだ。(BYグーグル総帥)
我々も、道すがら中院山門から見える庭をのぞき、美しい景色だと思ったものの、中院に七福神はお祀りされていないので、スルーしていたのだ。そう言うと、おじさんは「だめだめ!中院は行かなきゃあ」ときっぱり断言し、マサ子先生の肩を押した。その勢いにつられ中院まで引き返すことになったのだが、私の疑心暗鬼測定器は、今や針も振り切れんばかりである。

そもそも、私のパーソナルスペース(他者に近づかれると不快に感じる空間)は、非常に広範囲だ。平均的な感覚があるとすれば、その何倍にもなると自覚している。突然話しかけてきた知らない人物には、即座にキモイ人認定が下され、万が一肩にでも触れられようものなら、全身寒イボに覆われて、おでこの中心に「呪」の一字が浮き上がるだろう。         しかしピュアオバマサ子は、5分もしないうちからすっかり打ち解け(おいおい早いな)、金蔵氏と肩を並べて歩いてる。二人の後ろを追いかける私はといえば、30年来の友人を置いて逃げるわけにはいかず、マサ子殿ここは一蓮托生でござると、共にこの運命に身を投じる悲壮な決意を固めたのであった。    

金蔵氏に案内された、春の日差しが降り注ぐ中院の庭は、枯れ葉一枚落ちておらず、汚れちまったアタシの心も洗い流されるような、美しく清澄な空気に満ちた場所であった。(流されなかったけど)            おじさんは、中院の庭の見どころを効率よく案内してくれた。      そして、おじさん的撮影ポイントでは、我々のiPhoneを出させて、ぴよこちゃんと三白眼ペアの写真を撮ってくれたのだが、金蔵氏はなぜか、我々被写体のポーズについて、激しくこだわるのである。                   腕を空にあげる角度は地面から160度、腕は決して曲がっていてはいけない。足は左を前にクロスし、つま先はカメラに対して垂直で!                         (こ、これは・・・・左足さえ曲げれば、glicoの一粒300メートル・ゴールインマークポーズではないか!)                         

金蔵氏の繰り出すハイレベルな指導に、貴様、何奴じゃ??という疑問をぶつける隙も与えられず、脳内の警戒音に耳を塞ぎ、いわれるがままポーズをとってしまうbefore還暦さとみほ。脳裏をよぎるのは、大阪道頓堀に掲げられた看板。白地に赤く「グリコ」と染め抜かれたランニング、短パン姿の男子であった・・・(泣)

続く

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