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多情多恨なあなたのこと

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寂しさはパズルのように。
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2021年5月の記事一覧

よそゆき顔で

「テキストからの妄想」と切り捨てられてしまうならそれまでだった、恋。 Episode 12. December 2019 - January 2020 あなたはいま、だれと生きているのだろうか。この一連の恋文を、あなたは今も読んでくれているのだろうか。ひところ続きを書きあぐねていたら、「筆が止まるのは情熱が失われたからだ。お前にとって、うなされるように絞り出すほどの言葉ではなくなったんだろう」とあなたに笑われて、何も言い返せなかった。けれど、「きみはこのひとについて書くと

傷の愛しかた

埋めたり埋められたりしてきたから、結局今回もわたしはあなたに晒してしまう。見せたくなかったこの生傷さえも。 Episode.11 Summer and Autumn, 2019 夏の夜あなたから、「ググらずに考えてる。『底抜け』はポジティブな表現だが、『底が抜ける』だとネガティブに感じるのはなぜなのか」などとLINEが来ていて、ああ、その倒置法すら愛しい、と思わず息を飲んだ。言葉を仕事にするひとがそういう思考に時間を費やすのが、とても好きだ。ひとつひとつのことばを蔑ろにし