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7_片側顔面痙攣の手術_ICUを出る

2020年7月29日に片側顔面痙攣(へんそくがんめんけいれん)の手術をしました。その経緯を綴っています。

7月30日、手術の翌日。

さて、ICUでの記憶は、ただただ気持ちの悪さ、吐き続けたこと、意識朦朧の中ラジオがかかっているような気がしたこと(ラジオの真偽のほどはもう確かめようがないけれど…)。寝たり、起きたり、吐いたりを繰り返して、気づいたら夜勤の、昼とはちがう看護師さんになっていた。そして知らぬ間に夜が明けていた。寝たり起きたりを繰り返しているせいで、時間の感覚がない。

頭を絶対に動かせないという強迫観念で身体中(とくに背中)が痛いのと、その苦しさから身体中から脂汗が出ていた。その辛さから逃れるように、寝てしまえ!と自分を眠りに追い込もうとするのだが、すでにたくさん寝ているのとしんどいのとで浅い眠りにしかならず、意味不明な奇妙な夢をたくさん見た気がする。

もちろん、昨日の手術日は食事なしだったが、手術翌日の今日は、朝から少し食べてみようかという話になっていた。「ちょっとだけでも食べられそうですか?」と聞かれたような気がする( ”ような気がする” が多くて申し訳ないのだが、いろんなものと闘っていて記憶が曖昧なのだ)。

しかし食事はおろか、口内の気持ち悪さを吸い飲みの水ですすぐ、その水でさえも吐き気をもよおしてしまうありさまだったので、食事なんてとうてい無理だ。ただ、空腹感は感じていて胃が痛かった(空腹になると胃痛しませんか?私だけ?)。検温にきた看護師さんに「お腹すいた…」と私がつぶやくと「あら、もう食事さげちゃった。食べもの少し残しておけばよかったね」と言ってくれたが、そう聞くといやいや何も食べれられる気はしないと思ってしまうのだった。

吐き気と身体中の痛みと闘いながら看護師さんに吐き気止めの薬を入れてもらっている時だったか、けたたましく緊急地震速報が鳴った。「終わったな」と思った。こんな身体も不自由な状態で大地震が来ても、逃げ遅れて死ぬと。でも揺れる気配がない。看護師さんたちが「地震?」「知らない」と会話しているのが聞こえる。誤報というか、警報にも関わらず地震はこなかったようだ。後日調べると、この警報は9時35分のものだった。

今日、7月30日はICUから一般病棟に戻る。実はこの手術翌日の記憶がかなり曖昧なのだ。ICUには体感としては2日間くらいいたような気がするが、実際には翌日にはもうICUを出ている。特に「今から一般病棟に戻りますよ」という説明もないまま(私が忘れているだけかも)、ストレッチャーが用意され、看護師さんたちが私を取り囲んでいる。

ベッドからストレッチャーに移動するだけでも大変。看護師さん3人がかりで私を抱え上げ、ベッドに横づけしたストレッチャーに私を移す。要介護老人になった気分だ。頭を一切動かしてはいけないと思っていたので(動かすのは実際怖かったし)看護師さんは大変だったろうと思う。ストレッチャーに移ると、「手足をバンドで拘束しますよ」と確認された。私をリラックスさせたいためか、看護師さんが「私も同じ出身地なんですよ」「どこ中学でした?私は●●●中学出身なんですよ」などテンション高めで話しかけてくるのだが、私はまだ瀕死の状態だったので、健常者テンションがキツかった。

ストレッチャーに縛り付けられ、一般病棟に戻る。私はいつ自分が吐いてしまうか心配だったので、小さな洗面器を持たせてもらった。エレベーターで移動するのだが、小さな段差でガッタン!となるたびに頭が怖かったし、その振動がきっかけになって自分が吐いてしまわないか心配だった。

ちょっとこのあたりの記憶が曖昧でよく覚えていないのだが、この日私はMRIとCTを撮りに行っている。エレベーター内の全面鏡に車椅子に乗った髪の毛ボサボサで灰色の顔をした、ガリガリに痩せた幽霊が映っていた。私は胸のあたりまで髪の長さがあるのだが、手術の邪魔にならないように先生がネットのようなもので髪の毛をまとめたのだろう。そのネットが中途半端に取れて、髪に絡まっている。まるで火事場から逃げて来た人みたいなありさまだった。

(追記:実はこれは記憶違いで車椅子でMRIを撮りに行ったのは8月1日の出来事でした)

ICUから一般の病室に戻ると、入院前に諸々の入院に関する説明をしてくれた事務の女性の方が私に会いにわざわざ来てくれた…のだが、申し訳ないことに、この方の顔を見るなり激しい吐き気をもよおしてしまい、吐き続けてしまった。せっかく来てくれたのに…。洗面器の吐瀉物の片づけまでして頂いて…。スミマセン…。

一日に何回かおしぼりが支給されるのだが、消毒の匂いなのか、このおしぼりの独特な匂いでまた吐き気をもよおす始末。お腹は空いているのにこの日の夕飯もほとんど手をつけられず。頭を動かせない身体の痛みで顔から噴き出る脂汗をおしぼりで拭きながら、一体この苦しみからいつ解放されるのか、絶望的な気持ちでした。

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つづく。


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