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黒のキャンバス

父が亡くなったゴタゴタで
暫く着付教室に顔を
出していなかったのですが、

ご無沙汰していたら
主任の先生が

「いい加減来やがれや、ゴルァ!」

という内容のLINEを
大変お上品に、下さったので

戦々恐々として本日
行ってまいりました😅


私の籍があるコースは 

「なんでも好きなこと
 やってちょうだい。
 裏技を教えてあげるわ、んふっ💕」

という内容で、

子どもの七五三が近ければ
それをやればいいし、

花嫁衣装でもオトコ着物でも
何でもどうぞ、という
かなり自由がきくコースです。


一応、毎回の日程は
決まっているのですが、
内容が内容だけに
直に先生と連絡を取って
先生のご都合のつく日に
お願いするときもあります。


今回もいつでも良いという
お話だったので
今日をお願いしたら、
ちょうど別のコースを
やっている日だったため
それに交ぜて頂きました。



着付教室に伺うのは
正直疲れます。


私は授業で着物を着るときは
冬でなければ
長襦袢(という下着)を着ません。

「うそつき」という下着で
涼しく軽く過ごしています。


紐でぎゅうぎゅう
我が身を縛るプレイ(?)もしません。

ゴムで簡単に
おさえて終わりです。


これで90分授業を4コマ、
だいたい1日1万歩、
階段は登るだけで
スマホによると約20階分、
こなしても着崩れないので
文明の利器は使うに限ります。


だけど、
着付教室だと
下着から正式に
丁寧に着なければなりません。


自分で自分を縛ってね。
いや〜ん💕


私は仕事ではいつも
半幅帯なのですが、
着付教室ではこれは邪道なので
暑いのに名古屋帯で
お太鼓を背負って
行きましたよ。




何の苦行よ、これ!


と、思ったけど
意外と軽く涼しかったです。

さすが麻の夏帯。

下から撮ったので写真が変ですが、
今日のコーディネート。
単衣の藍染めの小紋に麻の薔薇の名古屋帯。
丸ぐけの帯締めと帯揚げは黄緑色。


多分、
着物が面倒で嫌だという方は
「着付教室の着方」で
着る前提があるんじゃないかしら。


着付教室は
「フォーマルの」着方なので
言わば、あれですよ。

ドレスなら
コルセットのつけ方、とか
あのウエディングケーキみたいな
デコデコドレスの着方、と同類です。


普段からあんな丁寧な
着方をしていたら
着るのが嫌になって
当然ですよね。


普段に着るなら
もっとカジュアルに楽に
着られる方法がたくさんあります。


でもまあとにかく
数いらっしゃる先生方の中で
主任の先生いわば
この教室のトップの技が
盗めるのは
大変貴重な機会なのと、

無理にでも行って練習しないと
手が忘れてしまうので
頑張って行ってきました。



今日は留袖のクラスに
交ぜて頂きましたが、

留袖なんて看板免許を取るまでに
数えきれないほど着たり着せたり
していたのに、

普段着ない、着せない着物の
筆頭なので
細かいところを忘れてしまっている。



留袖、というのは
絶滅危惧種です。


親族の結婚式には
必要なのですが、
女性なら1人1着持っている時代では
なくなってしまいました。


私の母も
留袖を幾つか持っているのに
私たち三人姉妹の結婚式では
レンタルしていました。


レンタル品よりも
ずっとモノがいいのに
勿体無い、と思ったけど


呉服屋の娘だった母は
こういうものにもちゃんと
流行があることを
よく知っていたのですね。

今なんて着物自体を
着る人が少ないから
多少時代遅れでも分かりません。


着ればいいのに、と思ったけど


式に参列した
母の兄弟は呉服屋。
祖母も呉服屋。
母の義妹は着付師。


さすがに勇気が
無かったのでしょうか。


ちなみに
絶滅危惧種の筆頭着物と言えば
喪服です。




私は質の良い喪服一式を
嫁入り道具として
持ってきたのですが、
全て処分してしまいました。


喪服というのは
喪主よりも格が高いものを着るのは
ルール違反です。


和装の喪服は
洋装よりも格が高いので、
喪主が洋装だったら
着てはいけない
のですね。


だから、
和装の喪服を着る方が
珍しくなった今現在、
安心してそれを着られるのは
自分が喪主の時だけ、
ということになります。


私が喪主となり得るのは
ダンナのときだけだし、
そんなとき一度きりのために
保管しておくのは
場所を取るので
売ってしまいました。


誰がそんなルールを
作ったのでしょうね。


喪服が廃れてしまうのも
残念ではありますが、


留袖が絶滅しそうなのも
つらいものです。


留袖と言っても
色留袖と黒留袖がありますが、
一般的に普及しているのは
黒留袖でしょう。


日本人には
藍が似合う、と
いつだか書きましたが
黒も似合うんです。


黒留袖は、
黒の色地に染め抜きの五つ紋。


上半身だけ見れば
黒留袖を纏っている女性は
皆同じように見えますが、


一口に黒、と言っても
草木染めだったり
泥染だったり、

よく見ると
それぞれに味の違う黒。

キャンバスとなる
黒の美しさだけで
素敵ですが、
ここに裾部分の絵羽模様の美が
追加されるのです。


おめでたい柄という
縛りはありますが、
この自由度と言ったら!


刺繍だったり
金が入っていたり
色合いも様々で、

黒の下地に
個性的な職人さんが
競って様々な美を表現した様は
圧巻です。


黒のキャンバスに似合う色は、
吉祥文様は、
どんなものがいいか
趣向を凝らして作るのでしょうね。


私は黒留袖は
母から譲り受けたものを
2着、持っているのですが


今回教室に伺って
他の生徒さん方の黒留袖を拝見して、
まあびっくり。

モダンだったり
鮮やかだったり
シックだったり
十人十色です。


こんなにタイプの違う黒留が
存在するのか!と
改めて感動しました。


1人の好みで選んだ着物は
どうしても似通ってしまうのでね。

私が今日着た黒留袖は
竹、菊、梅の伝統文様。
色合いに可愛らしさが溢れる
素朴な印象です。

これね、
他の黒留袖と比べると
けっこう地味、といおうか
いかにも江戸っ子的だと分かります。


母は江戸の武家の血を
ひいていることを
誇りに思っていて、

その趣味も決して
優雅な公家や
鮮やかな商人の、
上方の、好みではないんです。


ちなみに着付けの仕方も
江戸と上方では
伝統的には、違うので、
私が京都的に裾を長めに着ていると
苦言を呈してきます😆



私はかなり
京のテイストは好きですけど、
母は言わば
江戸小紋の人なんです。
つまり
近くでじっくり見ないと
分からない良さが好き。




以前、ドレスコードが黒留袖の
パーティーがありました。

美しいのに
着る機会が限られてしまう黒留袖に
もっと脚光を!という
コンセプトでした。


こちら、
見てみてください。
こんなに様々な黒留袖が
あるんですよ!



こんな機会がもっと
増えるといいと思います。


真の美しさが知られることなく
衰退の一途を辿ってしまうのは
悲しすぎますものね。

ありがとうございます!頂いたサポートは美しい日本語啓蒙活動の原動力(くまか薔薇か落雁)に使うかも?しれません。