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〜洗礼〜教師オーラなんて要らないの。【企画】忘れられない外国人のあのひと

日本語教師になるために受講する養成講座は
420時間です。


でも、当時私の通ったスクールには
それ以外にも追加で
希望すれば無料で
いくつも受けられる
1コマ90分の講座がありました。


そこで、我々受講生は
フリーの講座目当てに
今日は銀座校、明日は新宿校など
せっせと通い詰めていました。


私が受けたフリーレッスンは...


○学習者体験〜中国語授業を受けてみる〜
○ら抜き、さ入れ、れ足すを考える
○領土問題
○日本語教育にNLP(心理学)を取り入れる
○茶道の教え方
○クールジャパン!漫画を授業で取り入れる
○歌舞伎と能の繋がり
○国による視点の違い
○大阪弁の作りを精査する
○聴覚障がい者に日本語を教えるコツ


など、それぞれ面白いものばかりでした。


その他に、つい受講し忘れてしまい
ずっと後悔していた
フリーレッスンがあります。


それは、

○教師オーラを出す方法

でした。


私は童顔でニヤニヤしていて
見た目からして弱そうなので、
何とか教師オーラが欲しい!
と思っていたのです。


新人1年目の頃、
私は専門学校で4クラスを
担当しました。


3クラスは日本語能力試験の
N2レベル(2級のようなもの)でしたが、
水曜に週1回だけ担当する1クラスは
N1レベルの2年生。
全て中国人の
真面目なクラスでした。


小心者でいつもガクガクブルブルする私。
↓こちらの記事でも紹介しましたが。


このN1クラス、
週に2度しか日本語科目の授業が
ないのですが、
1年生の頃は、この2度の授業を
学校一教え方が上手だと
有名なO先生が教えていました。


更に‼︎


2年になっても、
O先生がもう1日を教えるのです。
つまり、このクラスの学生たちは
日本語担当の教師は
この素晴らしいO先生しか
知らない
、ということです。


そんな中に、ぽんと入れられた新人の私。
ガクガクブルブルを通り越して
毎週お腹を壊す始末です。


そんな時...


何で「教師オーラを出す方法」の講座を
受けなかったんだ〜‼︎
教師オーラ、カモーン‼︎


こんな後悔を、
し続けていたんです。


教師オーラを出そうと
思い切り背伸びして
4月から教え始めましたが、
ゴールデンウィークを明けてから
真面目なそのN1クラスが
1人寝始め、2人寝始め...


そして、文型を教えていた時、
いつも前に座っていて
よくお喋りしてくれる
チン セイさん(仮名)が
言いました。


「あ〜も〜っ‼︎カッタイなぁ‼︎
 もうちょっと面白く出来ないの⁉︎」


「O先生の授業の時は面白いですよ‼︎
 90分のうち半分は笑っています!


他の学生が即座に
「お前、やめろよ!そういうこと言うなよ‼︎」
と止めてくれたのですが、
そうか、みんな、我慢していたんだね。
私の授業が辛かったんだね。


そこで気がつきました。
私は、教師オーラを出すことばかり
自分のことばかりに
気をとられていなかったか。


教師だけど外国語を教える者が、
カタい教え方でいいのか。


それで、先輩方に相談して
たくさんのアドバイスを頂きました。


「カタいならカタい教師になれば
 いいんですよ。
 他の先生と違っていいんですよ


人の真似はね、不自然に見えるのよ。
 みおいち先生らしさを出しなさい」


アドバイスの内容は、
どれも似通っていました。


つまり、
自分の色を出せ、ということ。


そこで私はどういう人間か
考えました。


決して出来る系ではなく、
クールキャラでもない、
下らないことでよく笑うドジな努力家。


また、
外国語を学んでいた時、
どんな先生が好きで
どんな先生が嫌だったかも
考えました。


面白い先生は、やる気になった。

語学は楽しい!と思わせてくれる先生が
好きだった。

ひたすら怒っている先生は
「大人に向かって、何、その態度」と
不快に思っていた。


そうだ!
教師オーラなんて要らないんだ!私には。
気取るのをやめて、私は私らしく、
ヘナヘナしていても熱心に。

等身大でいいんだ!

そう思いました。


あの時、チンさんに
「カタい」って言われていなかったら、
私は勘違いをしたままだったかも
しれない。


背伸びしてカタい自分を演じ続けて
自分も学生も苦しいままだったかも
しれない。


担任の先生は私に
「チンさんに洗礼を受けたね」
仰っていましたが、
言われた直後は心は痛んでも
今思っても心から感謝すべき
経験でした。


その後このクラスでの授業が
どうなったかって?


盛り上がるようになりました...
なんてことは無いです。


相変わらず試行錯誤して、
熱だけはあっても技術が伴わなくて
苦しいまま教え続けて、
授業で学生たちは相変わらず
シラっとしていました。


先輩の先生方に
「1年目の学生は捨てなさい」と言われて
それだけは嫌だ!と
ジタバタしましたが、
苦しんで喘いでそれは必死で頑張っても、
やっぱり今思うと
1年目の教師のレベルなんて、
熱量が多いだけで
質なぞ到底、ついて来ない。


苦しみながら予定の半年を終えて
このクラスの担当から外れ、
次の学期が始まって
暫くしたある日、
担任の先生に言われました。


「みおいち先生、学生たちがね
『どうしてみおいち先生は
 今学期はいないの?
 あの先生が好きだったのに』と
 言うんですよ。
 Aさんも、Bさんも...Cさんも言っていたわ。
 きっと波長が合うんですね。
 また遊びに来てやって下さいね。」


びっくりしました。
私、がっかりされていると
思っていたから。


私の1年目の授業は
酷いものでした。
それは絶対に!謙遜じゃない。
今だってたいした授業は
出来ていないけれど、
今考えても赤面する程だったもの。
全くもって
上手く導けていなかったもの。
本当に、学生が、かわいそうだった。
私が学生の親だったら
こんな教師に担当して欲しくなかった。


数年経ってから何度も心の中で
1年目の学生には
ごめんね、と謝り続けた。


だけど、下手なりに
頭をいっぱいにして考えて、
熱を持って授業したことだけは
学生には伝わったのかな。


学生には悪かったけど、
自分のことだけを考えたら
チンさんが言ってくれたことが
今の私に繋がっていて
本当に「洗礼」でした。

この道を通らなければ、今は無かった。
いい経験でした。


もうだいぶ前のことだけど、
何度も言います。
教えてくれてありがとう。
上手く教えられなくてごめんね。


今、後輩にアドバイスをするのなら、
こんなことを言いましょうか。


1年目は絶対に
先輩方の授業の質と
肩を並べることは出来ない。
どんなに努力しても、
圧倒的に経験が足りない。
それは学生にもはっきり分かってしまう。
辛いです。


だけど、そこで痛みを感じても
無視しないで向き合うことが
未来に繋がっていくんじゃないのかな。
恥ずかしい自分にしっかり目を向けて
足りない部分を補うように
努力することで
成長できるんじゃないのかな。


チンさんに大事なことを教わった私。
このメッセージもどなたかの
大事なことになればいいな、
と思います。


最後になりましたが、
この素敵な企画を産み出して下さった
チェーンナーさんに感謝を‼︎


#忘れられない外国人のあのひと
#日本語教師
#日本語教育
#教師
#毎日noteの会

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