見出し画像

編集力ってどう身につく? 歴18年のわたし、涙のビギナー期

本記事には、一部アフェリエイトリンクが含まれています。

こんにちは。
新卒22歳から山あり谷あり、編集/添削業に携わって、早18年。
編集者の若橋未央と申します。

得意ジャンルは、本業でずっと携わっている教育分野。
そして、自邸建設をきっかけにハマッてしまった、住宅分野です。

家づくりとマネー戦略をテーマにした著書、『将来貸す家、建てました!』もKindleで出版しました。

「編集者」って、どんなイメージをお持ちですか?

文章のプロフェッショナルで、原稿をジャッジし、ダメ出しの朱入れ(あかいれ。修正指示)をびっしりと入れてくる、凄い人…?

…では、ありません。

私は、いわゆる「ライター」を経験せず、22歳・新卒採用の編集者として社会人をスタートしています。
文章の素人が、編集部で編集者をしていたんですよね。

そのころのエピソードをご紹介します。

謎の職業「編集者」のことが、ちょっと身近に感じられるかも。

本記事は、大手Webメディア編集長を務めるまむしさんと、わたし若橋未央が、過去にX(旧Twitter)スペースで対談した内容です。その後、まむしさんが、ニュースレター「みんなの編集会議」2014.3.18版でまとめてくださったものを、転載しております。



「背中を見て学べ」とは言われるけれど


まむし※以下、「ま」)僕自身はコンテンツの企画や編集スキルについて発信しているのですが、自分自身が誰かにこれらを教わったかというとそうではなく、あくまで我流を継ぎ足し継ぎ足してフレームワークっぽく落とし込んでいるところが大きいんですよね。

これは僕だけではなくて、大きな企業に所属していても「先輩の背中を見て学びました」みたいな方は多い印象があります。
みおさんはその辺、どういう風にスキルを磨いてこられましたか?

未央さん※以下「み」)本当におっしゃる通りで、背中を見てという風潮はありますよね。

私は新卒で教育系の大きな会社の編集部に入って、編集者として社会人デビューしました。
3-4年目のOJT(日常業務を通じた教育)担当の先輩にガッツリ原稿を直されて、学ぶ。でも、その原稿をさらに編集長に見せたら、先輩の修正をさらに上書きするようにガッツリ直されて「ああ、編集長はこう直すんだな」と学ぶ。そんな感じでした。

ま)笑。。。そういう光景、ありますよね。

僕は記者出身なので、ライターに近いスタートだったんですけど、OJTの先輩に言われた通り修正したら、その個所を「お前馬鹿じゃねえか」とデスクにさらに直されるみたいなこと、よくありました。

み)あるあるポイント「その1」ですよね。笑
OJT担当の人と、さらに上の人の指導内容が違うっていうのは。

ま)新入社員相手だと、みんなが「教えよう」と力みあっているような光景ってありますよね。
「簡単にお前の原稿通さねえぞ」と思われている感じというか。

み)そうそう。OJTの先輩は先輩なりに、編集長に持って行っても恥ずかしくないようにと力を入れてくれるんですけどね。
それでも編集長にはけちょんけちょんにされる。

ま)どこも一緒なんでしょうね。
新聞も雑誌も、ライターも編集も。そんな感じなんだろうなぁとか。

み)そこを乗り切って「先輩の背中を見て育った」と言えばきれいに聞こえるかもしれませんけど、OJT担当と編集長との間で板挟みになってつぶれてしまう同期もいましたよ。
少なからず私だって混乱してましたし。

振り返ると、新入社員と言えどももう少し客観視できていたら良かっただろうなと思います。

先輩方の修正にも、確固とした正解があるわけではない。
それぞれの人が、それぞれの立場で意見を言い合っているけれど、それは自分自身を否定されているのではなくて「コンテンツを良くするために必要な作業なんだ」と客観視を持てていると、もっと心穏やかにいられただろうなって。
でも右往左往、しちゃいますよね。最初のうちは。

私の新人時代はこんな感じだったんですけど、最近、副業で新しい媒体に携わるときも、似たようなことを感じることがあります。

はじめて携わる媒体ってまだ、その編集部の責任者の意向とか、雰囲気が分からないじゃないですか。
だから緊張したり、「これでいいのかな」と不安になったりする。
まずはその編集部の空気感や、目指す方向性を掴めるかどうかが、最初の混乱期を抜け出すポイントだと思うんですよね。

ま)確かに。。仮に、複数の方向から修正指示を受けたとして、「これは活かして・これは活かさない」という線引きを考える軸みたいなものがつかめていくと、ぐぐっと仕事がしやすくなりますよね。
赤入れも、そう怖くなくなってくるというか。

み)そうそう。そう思うと、新しい媒体で記事を書く時、最初のうちは「揉まれる期間」っていうのが必要になっちゃうんだろうなって。

そう思うと、編集部に「社員」として迎え入れられるのは恵まれているんですよね。外部委託としてライター・編集者をしていると、社内の動きが見えませんから。
自分の原稿が、編集部内でどんなふうに揉まれているのか、過程が分からない。それが不安につながることもあるように思います。

専門家への「赤入れ」で意識すること

ま)みおさんの経歴の方に戻ってお話を聞いてみようと思います。みおさんは「新卒でいきなり編集者になった」ということですよね。

み)そうですね。

教材を制作する会社だったので、編集部が企画をたてます。
そしてライターさんや、先生に書いてもらった原稿をチェックして陣頭指揮をとり、一つの教材へと仕上げていく感じでした。
コラムや小さなページなんかは、自分で書くこともありましたけどね。
大きなものは専門ライターさんにお願いして、それ以外は自分でも書く、みたいな感じ。

ま)「人の制作物を修正する」という業務だと、単なる国語力だけではなく、ライターや寄稿者の方とのコミュニケーションが大事になると思うんですが、そういう方面で困らなかったですか。
特に、自分より経験の長いライターや先生に修正の指示をするときとか。原稿への赤字って、入れられるのも怖いけど、他人に入れる時もちょっと緊張しますよね。

み)1-2年目の頃は、泣いてましたね。笑

ま)まじですか。

み)まじです。強気の専門ライターさんに「それはおかしい」と言い負かされて。こちらは新人で自信がなくて確固としたことも言えずに立ちすくんで、打ち合わせの後に「どうしよう・・・ポロポロ」みたいなことはありましたね。
必要ならOJTの先輩にも同席してもらったりして、乗り切っていましたね。

でも3年目位になってくるとこちらも慣れてきて、物おじせずに意見できるようにもなってきました。

先生がたに修正の依頼をするときも「専門的な立場ではそうかもしれませんが、今回の教材のターゲットとなる生徒の学力はこのくらいで、ここでつまづくから、ここを分かりやすくしたいんです」みたいに通せるようになっていく。
うん、3年目以降からやっぱり、こなれてきたと思いますね。

ま)1,2年目と3年目以降は、何が一番違ったんだと思います?

み)1、2年目で完成物をたくさん目にして、読者の反応をたくさん知っていたということが大きかったと思います。

制作物がどう届いて、どんな影響を与えるかという実感が持てるんですよね。最初のうちはどうしても、それが持てなくって。
教材の制作って、1年以上のスパンになるものも珍しくないですし、モノによっては3年単位のものすらあるんですよ。

ま)ええええええ。。そんな世界なんですか。3年先の教材をつくる。

み)ありえます。

例えば中学3年間でこのカリキュラムを習いますというものがあった場合、中学1-3年分の教材ラインナップを揃えて、シリーズ統一的な紙面構成やコンセプトを考えます。
そうするとどうしても制作ボリュームが大きくなってしまうんですよね。編集者も潤沢ではなかったので、3学年分の教材をつくるとしたら、制作にも3年かけたりして。
1,2年生を片づけないと3年生用の教材がつくれない!みたいな感じになったりします。

そういう事情もあって、「制作物に対して、生徒はこういう風に反応するんだ」という実感を得られるまでに、1年半とか2年かかるのはざらで―――やっぱり3年目になってようやく、生徒たちの反応を語れるようになっていく。
そうすると、教材の制作に協力してくれているライターさんや先生にも説明ができるようになっていくんです。読者の立場についての根拠、証拠を自信を持って語れるようになっていくというか。

ま)確かに、業務の全体像もつかめるし、読者の反応もつかめるというのが大きそうな感じがしますね。

み)そういう意味では、今ライターをされている方も成果物のスパンの短いものから始めるとか、先輩のつくった制作物に対する世の中の反響をチェックするとか、そんなチャンスを逃さないようにすると、お仕事や媒体の理解は早く進むかもしれませんね。

「媒体」の専門家としての編集

ま)めちゃくちゃためになるし、僕も身に覚えがあります。

僕は医療業界なので、医師の原稿を編集する機会は多かったんですが、医師の方って専門も確立していて、自分よりもはるかに現場に詳しい。
知識ではまず勝てないというのが確定している相手の原稿を、どこまで直すかというのは、ものすごく悩みました。
分かりやすくしすぎると言いたいことが致命的にずれたりすることもあって。

多くの人に、分かりやすいと思ってもらいたいとは思う一方、寄稿者の方の言うことも基本的には正しいので、折り合いをつけるのに難しさを感じたんですよね。
「自分って、どんな役割を担えばいいんだろう」と。
そういう時に考えたことが、みおさんのお話と近くって。

いろいろ考えた結果たどり着いたのは、「媒体の編集者って読者に対するプロなんだろうな」というところで。

そういう気持ちを持てた瞬間にすごく仕事がしやすくなると思うんです。「この難易度では理解されない」「あまり読まれない」みたいな知見のストックがあってようやく、専門家にも立ち向かえるような感覚があって。

こういうものがあってようやく、「赤ペン先生」的な編集ではなく、コンサルティングみたいなことができるようになっていったので、そこにいかに早く到達するかが、編集に関してはとても大事な気がしたんですよね。

み)わかります。今だと業務委託としてライターや編集者の仕事を請け負う人も多くて、媒体のプロになるチャンスがないままに制作部分だけになってしまっている、みたいな光景が増えている感じもしますよね。

ま)そうですね。まさに。

み)外部の業務委託人材であっても、編集部側に、読者の反響や媒体内での記事の評判を根掘り葉掘り聞くことで「媒体のプロ」になる、というのも手だとは思うんですが、それにも限界はありますよね。

そもそも読者も媒体も変化し続けるし、外部の人間であるという前提での割り切りもある程度必要だとは感じます。
「このくらいの深さまで媒体理解が済んだらサクサクと進めるのが自分的にもやりやすく、クライアントの役にも立てて、読者にも満足感を与えられる」みたいなバランスを取ることが大事だと思いますね。

ま)たしかに。逆にそういう外部の視点が、新しかったりもしますしね。


続きはコチラ
中堅どころになった、編集5年目ごろを振り返っています。

他の記事もどうぞ!(クリエイターページのトップへ)

★この記事を書いた人★
「おっ?」と目がとまったら、フォロー、コメント、お気軽に。

 ・みお(若橋未央)
 ・「将来貸す」前提の一戸建を宮崎に建て家族で移住
 ・編集/添削歴18年
 ・noteは月に1〜数本
 ・最近は自邸紹介のインスタに力いれてます♪週2程度更新

▼若橋家の家づくりとお金について振り返ったKindle本、amazonで好評発売中です。


この記事が参加している募集

#編集の仕事

1,152件

#はじめての仕事

4,054件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?