お子様ランチの味は

まだ私が幼かった頃、外食のとき子どもはお子様ランチを頼まなければいけないと思っていた。他のものを食べたいとも思っていなかった。当然、お子様ランチを選ぶものだと思っていた。他の子もみんなそうしていると思っていた。

しかし、小学校高学年の時、食事どころでたまたま居合わせた同級生がお子様ランチを頼んでいなかったのを見た。

「お子様ランチじゃなくてもいいんだ」と私は学習した。加えて、小学校高学年になってもお子様ランチを頼んでいる自分を、その同級生と比べて、恥ずかしく感じた。


少し時が過ぎ、私は中学生になった。やんちゃが多い学校だったので、周りにはギャルがたくさんいた。短いスカートに細い眉、授業中に携帯を触っては怒られ、休み時間は先生に追いかけられて走り回る、そんな感じの生徒がたくさんいた。

彼女たちの間では取り留めのない会話が繰り広げられ、論理も文法もめちゃくちゃだった。楽しそうに笑っているけれど、私は何も面白くなかった。

私は「この学校で生きていくには、校則を守らなかったり、支離滅裂なことを話したりしなければならないんだ」と悟った。

中学3年の春、クラスのやんちゃに同調して、教室の窓から外へ降りてみた。教室は一階だから、窓から降りても何も問題はない。

しかし、降りた瞬間、ちょうど学年主任が通りかかって見つかってしまった。

先生に名前を呼ばれて叱られた。先生曰く、

「お前はこんなことするタイプじゃないと思ったんだけどなあ」

とのことだった。謝罪してその場を終えたけれど、釈然としなかった。

時たまやんちゃたちに嫌なことを言われたり、家で嫌な思いをしたりしている私に気づきもしないで、助けもしないで、私のことを何も知らないで、「お前はこんなことするタイプじゃない」などとのたまう教師に辟易した。

少し戻って、小学6年の時。私の母は私に向かって毎日のように、父のことを悪く言っていた。ある日、いつものように母が私に向かって話し始めた。母曰く

「今日、友達にお父さんの愚痴を話した。その友達は口が悪くて、サバサバものを言っていてすごいなと思った。」

私は、「お父さんの愚痴をサバサバ言えば良いんだな」と思った。それから私は、父のことを出来るだけ悪く、汚い言葉で話した。すると、そんな私をみた母が

「最近どうしたん、言葉遣い悪い。最近のあなたは可愛げがないよ」

と私に言った。


このように、私は度々その場の雰囲気やTPOを理解することができず、嫌な思いや恥ずかしい思いをしてきた。

「小学校高学年は、お子様ランチを卒業しつつある年齢なんだよ」
「でも、小学校高学年でもお子様ランチを食べてもいいんだよ」
「無理してやんちゃたちに合わせなくてもよかったんだよ」
「お母さんに合わせて、お父さんの悪口を言わなくてもよかったんだよ」

と自分に言ってあげたい。人のことなんて気にせずに、空気なんて気にせずに、自分の思うように振る舞えばいいんだ、と、今なら思える。

明日は、お子様ランチを食べよう。

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