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442.大事なひとの大事なものを大事にしたい(BTS考)


最高の一日だった。かんくん(小5息子)はAチーム(小6)の公式戦にスタメン出場し、エースピッチャーゆうくんが球数制限で70球を投げ切ったのちの最後の回に、5年生ながら抑えのピッチャーとしてマウンドへ。
ほとんどが年上であろう相手チームに、落ち着いた投球を続けてしっかりと勝利。2回戦進出となりました。

ホームとサードのランダムプレイの時も、さっとホームベースのカバーに入ってアウトを取っていたり。彼は決して運動神経がいいタイプの野球選手ではなく、ただ野球というゲームへの理解度が高いのでそつなくプレイができているというタイプなので、向いていることに出会えて良かったねと思った。


で、だ。

BTS 2021 MUSTER オンラインライブSOWOOZOO(소우주 )。
のことを書かないわけにもいかないのだけれど、なんと書いていいのかわからない。

ミュージシャンのライブというものはさまざまな切り口から語られるものだ。歌手だったら歌唱力や、演出だったら演出、ダンス、衣装、表情、音響、照明、映像とのコラボレーション、構成、コンディション、カメラワーク。

本当に良いライブだった、という時、それらすべてがかけ合わさって総合作品としてひとの心に残る。

BTSって、それらを総合作品としてきっちり魅せております。
というところの、さらに一段高いところとさらに一段深いところを両方やってのけるので、わたしは「いいものを見た」というだけではどうしても言葉が足りなくって、口をつぐんでしまうのだと思う。


『進撃の巨人』の登場人物アルミンの名言で

「何かを変えることができる人間がいるとすれば、大事なものを捨てることができる人だ」

というせりふがある。


わたしにとっていつも彼らがまぶしく新しく見えるのは、彼らが誰も通ったことのない道を答えのわからないまま20代という若さの中で進みながら、おそらくいつでも「怖いか怖くないかでいえば、怖いほう」を、「困難か困難でいえば、困難なほう」を、選び続けているその”アティテュード”のせいに他ならないと思っている。

わたしが今日のオンラインライブで、いちばん心に響いたのは、彼らの歌でも踊りでもなく、ジョングクが半袖を着ていたということだった。

ジョングクは長いこと、半袖を着てテレビに映ることがなかった。映るときは「映ってしまった」ときで、そのときはいつも彼の右腕にはモザイクがかかっていた。
ジョングクはその右腕に、たくさんのタトゥーを入れているから。
そしてそれを、良しとしない外圧がいつでも彼らを取り囲んでいたから。

ジョングクは、彼がアイドルでいる限り半袖を着ることはないのだろうか。もし着たのならそれはいつでもモザイクで”ないこと”にされてしまうのだろうか。
タトゥーを「手術で消すべきだ」というファンの意見を尊重するために?

今日、彼はさわやかな夏らしい半袖姿で、その右腕を惜しみなくさらしながらしっかりとマイクを握って登場した。
いつも中途半端に隠されて、避難の的になっていた美しく彫りめぐらされたタトゥーとともに。

真偽のほどはよくわからない。
ライブ映像でカメラでモザイクをかけながら撮り続けるのが不可能だったのか、長袖が不自然だったのか。
けれど、ジョングクは、メンバーは、事務所は、「そちら」を選んだのだな、と思った。

そして、言い方は間違っているかもしれないけれど、「そちら」を選んだことで、それで離れていくかもしれないファンや、韓国社会における良識者の声を、捨てたのだろう。
大事でなかったはずはない。世間体も体裁も保守的なファンも大事にしていただろう。けれど、彼らは捨てた。

今回のオンラインライブでいちばんわたしの心を打ったのは、そのことだった。

他にも、物語とトークとパフォーマンスを完全にイーブンにした構成で、激しく消耗させる見せ方からアーティストを守る方向を選んだことで、それらを「ぬるい」と感じるであろうファンを「捨てる」ことにしたとも感じた。

『Dynamite』と『Butter』はつかみでしっかり観せたけど、そのあとの構成はアルバム『Be』を中心に”音楽性に感度の高い、いわゆる音楽リテラシーの高いARMY”に向けた構成にすることで、いわゆるポップベスト的なセットリストを望んでいたであろう層のことも「捨てた」。


転機ってあるよね。
表現者の潮目が変わるとき、それまでの表現を愛していた層が離れていかざるを得ないとき。

BTSは、その潮目のタイミングのときにこそ、恐れずに舵をきるチームなのだと思う。「ここからは、もうこのままではいられない。自分を愛するため、自分自身を生きるためには、先に進むしかないんだ」という物語と痛みと、彼らのパーソナルな人生を交錯させて、表現として見せていく力がある。

あ、言いたいことを伝えるために、あえて「捨てる」という言葉を使ったけれど、BTSはもちろん絶対にそんな言い方はしていないし、そういう意識があるのかもわかりません。
ただ、彼らのパフォーマンスを見て、わたしが感じたことに過ぎない。

今日のセットリストはすごく良かった。一言でいえば、頂点に立った彼らはどうしようもなく成熟せざるを得なかったし、そこから新たに次の冒険へと彼らとARMYが一緒に進むためには、「歌を極めて」「ダンスを極めて」「ヴィジュアルを極めて」「パフォーマンスを極める」ということ、”以外の要素” が絶対的に必要で。
(だってそれらはもうすでに、極まってしまったものなのだ)

頂点、成熟からその先にいくためのプロセスを、彼らが真摯に模索しているということが、しっかりと伝わってくるものだった。
そしてそれは、わたしたちがこれから、彼らをどんなふうに見つめ続けて、愛し続けていくかという問いかけと、ちょうど対になっている。


歌って踊って汗ばみながら「暑いね」と笑いあっていた、初夏の夜の彼らの中で、ジョングクが半袖を着ていたことを嬉しく感じた。
あのうさぎのように可愛いまんまるの目をした男の子の全身が、もし真っ黒いタトゥーに覆われているのだとしても、それを隠してなんてほしくない。
それがあなたなんでしょう?と思うから。

その絶対的に狂わない天性のピッチの良さと、高低どちらも耳ざわりの良い声質とみずみずしくかつセクシーな表現力を持つダンス歌手であるジョングクを、ジョングクたらしめているものがそのタトゥーなのだとしたら、わたしはそれを大事に思いたい。

大事なひとの大事なものを大事にしたい。
モザイクなんていらない。また夏になったらいつでもジョングクの半袖姿が見られる未来にわたしはいたい。



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