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カラスの子育て。

 夕暮れのような朝の早い時間。カラスの声で、目が覚めた。
 カラスが3羽で何かしゃべっているのが、完全におばちゃんの井戸端会議に聞こえる。
 カラスって本当によくしゃべるよな。ちゃんと言葉をしゃべっている。
 1羽は自分の話をずーっと延々しゃべり続けてて、もう1羽は、それにずっとウン、ウン、て、相づち打ってて、あとの1羽が、もう、いい加減にしろよ!って、時々叫んで、でも、おばちゃんカラスしゃべるのやめない(笑)
 そんな感じでしばらくギャーギャーやっていたけど、急に静かになった。

 これが、昨日の話。

 今日、昼間に近所の商店街に買い物行って戻ってきたら、お隣のお姉さんが、何やら道端にたたずんでいた。私に気が付いて、手をふっていたので、「どうしたの~」と、声をかけながら近づくと、そこにカラスの子どもがいたのだった。

 そこは、昔あった邸宅の庭を一部分だけ残してある小さな緑地帯で、大きな、高さ10m以上くらいはある楠が生えている。
 今は、資源ゴミ置き場を兼ねた、公園というほどでもない小さな場所で、草が生い茂って水仙や菊やあやめも咲く、ちょっと不思議で素敵なところなのだ。

 お姉さんが言うには、楠の木の上にカラスの巣があって、どうやら、そこからこの子が落ちたらしい。で、ずっと、アー、アー、って鳴いてるから、心配して出てきたんだって。
 私は、あっ、と昨日の朝の事を思い出した。
あれは、カラスの子育て会議だったに違いない。巣立ちにあたり、お母さんカラスが子どもに心配しながら色々言いきかせて、子どもはウンウン、と聞きながら、お父さんカラスは、もう、ええやろ!とキレた…。

 めっちゃ、つじつまがあったわ!

 でも、これ、どうしよう、とお姉さんと道端で思案する。カラスの子は体長30cmくらいで、まだ飛べないみたいだし。野鳥のヒナは拾っちゃダメらしいし。
 「夕方になったら、親が帰ってくるんじゃない?」
 「でもこれ、うちの猫にみつかったら、絶対やられるわ」

 そう、問題はうちの猫なんである。うちの猫は、めちゃくちゃ賢くて、サッシの窓の鍵をはずして窓を開けて、勝手にパトロールに出かけてしまうのである。
 近くにいないかな、と探してみたけど今はいないみたい。「どうしよう…」

 その時、近所で建築工事をしている作業員の人が近づいてきた。カラスの子どもがいたのは、道端に工具を置いたブルーシートの上だった。
 私たちが話しこんでるので、工具を置いてる事が邪魔なのかと思ったらしい。「いや、実は…」と、ブルーシートを指差すと、そこにはカラスの子どもが。

 巣から落ちた、というと、その方、「巣に戻そうか」と、おっしゃる。ええっ、結構高いですよ!
 ハシゴあったかな~と、本当にやりそうなので、ちょっと待って下さい、と止める。
 その時、カアー、と親ガラスの声が!戻ってきた?警戒してる?頭上高くを旋回し始める。
 工事の人、工具そばにあった、小さい段ボール箱にカラスの子どもを入れて、いきなり木に登りはじめた。さすが、身が軽い!お年は60代くらいのベテランか? ガッチリはしてなくて、かなり細身の方。
 私、思わず、「おっちゃん、危ないて!カラスに襲われる~」と言うと、「これ、持っといて」と、カラス入りの段ボール箱を渡される。標的は私に~(泣)

 おっちゃん、身軽に木の枝に足をかけて、確認すると、私から箱を受け取って、木の枝のところに置いた。カラスの子どもはおとなしくなり、親も襲ってはこなかった。

 子離れで、様子を見ているのかなあ。

 とりあえず、これで様子を見て、うちの猫が帰ってきたら、外に出さないでおこう。
 おっちゃんに、ありがとうございました、と言って、うちの猫が狙いそうで、というと、「あー、あのデカい猫か」と(笑)。
面が割れていた…
 それに、年もそんなに変わらないだろうに、おっちゃん、なんて言って失礼しました。
 次から私のことも、おばちゃん、と言って下さい。

 とりあえず、カラスの子育ては近所で見守ります。また何か動きがあったら、報告いたします。
 現場からは、以上です!!


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