更年期うつとは?原因や症状、対処法についても詳しく解説
女性にとって更年期は必ず訪れるものです。しかしその時期に、からだだけでなく心も不調を訴えて、「うつ状態」になってしまう人は少なくありません。
「更年期うつ」は誰にでも起こる可能性があります。もしかしたら、「何もやる気が起きない」「気持ちがふさぎこんでしまう」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
自分の状態が更年期によるものなのか、判断することはとても大切です。なぜなら、更年期によるものか明確にすることで、治療法が変わってくるからです。
この記事では、自分の状態に悩みを抱えている方へ更年期うつの原因や症状、対処法を詳しく解説します。判断材料として、参考にしてみてください。
更年期うつとは
更年期うつとは、45~55歳頃の更年期にホルモンの影響を受けて起こるうつ症状のことです。
厚生労働省では、更年期障害を「ほてりや発汗、疲れやすさなどの身体症状及び気分の落ち込みなどの症状により日常生活に支障を来す状態を指す」と定義しています。
実際どれほどの人が更年期に影響を感じているかについて、年代別にみた下表のような調査発表があります。
《家事や育児、介護や社会活動への影響年代と割合》
とてもある|40~49歳:2.0% 50~59歳:3.2%
かなりある|40~49歳 : 9.7% 50~59 歳:3.8%
少しある|40~49歳 :22.2% 50~59歳:20.2%
全体の約30%が更年期による影響を感じており、負担の大きさがわかるでしょう。更年期うつは、たとえ軽度でも自分の心とからだの調子を伝えるサインといえるのです。
出典:厚生労働省|2022年「更年期症状・障害に関する意識調査(結果概要)」
更年期うつ症状
更年期うつの症状は以下のとおりです。
寝つきが悪い、または眠りが浅い
怒りやすく、すぐイライラする
くよくよ、憂うつになることがある
頭痛、めまい、吐き気がよくある
疲れやすい
何かをやる気力がわかない、楽しめない
思考力や集中力が低下する
食欲が低下する、または食べ過ぎる
上記症状が1つでも深刻化すると、日常生活に影響をおよぼします。たとえば以下のようなことはありませんか?
たたんでいない洗濯物や洗い物が増えていく
夜眠れないために日中もボーっとしている
いつも同じような服を着て家にこもる
食欲が低下して体重が減少するか、常に食べてしまい体重が急激に増加する
自分自身がこのような状態、もしくは周りの人が「いつもと違うな」を思う場合は、専門家に相談することが大切です。小さなサインに気づくことが、症状を悪化させない道となるのです。
なお、厚生労働省では女性の健康推進のためにさまざまな病気の知識を発信しています。うつ症状についてのチェックリストがあるので、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
身体的症状
更年期障害では、以下のような身体的な症状も起こります。
顔がほてる
汗をかきやすい
腰や手足が冷えやすい
息切れ、動悸がする
肩こり、腰痛、手足の痛みがある
身体的な苦痛は精神状態に直結しています。からだが苦しければ、心も同じように苦しくなっていくのです。自分が何に苦しいと思っているのか、自分自身と向き合う時間をもつことが大切です。
出典:厚生労働省|女性の健康推進室 ヘルスケアラボ「更年期障害とは?」
原因
更年期うつの原因は、更年期に卵巣の機能が低下し女性ホルモンの分泌が減少するためです。視床下部や脳下垂体に影響し、自律神経が乱れて精神症状を引き起こすのです。
しかし、更年期うつの原因はそれだけではありません。更年期は子どもの成長や親の介護など、さまざまな問題にぶち当たるため、精神的にも身体的にもストレスのかかりやすい時期といえます。
自分にどれだけのストレスがかかっているのか、見つめ直すことが大切です。更年期うつを悪化させないためには、まず自分の状態をしっかりと確認する時間をとりましょう。
参考:厚生労働省|女性の健康推進研究会「更年期に多い症状と病気 うつ」
治療
更年期うつは卵巣機能の低下による女性ホルモンの減少に伴って起きる症状なので、ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬が有効といわれています。エストロゲンの分泌低下の検査と現在起きている症状について確認をし、診断を受けたうえで治療法が選択されます。
「更年期うつかもしれない」と不安に思う場合は、婦人科や更年期外来を受診して相談しましょう。症状によっては別の病気が隠れていることもあるので、専門家に診てもらうことが重要です。
更年期うつの対処法
更年期うつは女性ホルモンの減少によって起こるため、ホルモン補充療法や漢方薬でうつ状態が改善することがあります。しかし薬に頼るだけではなく、うつ状態にならないよう生活を見直すことも大切です。
うつ状態にならないような生活は、以下のとおりです。
軽く運動する(水泳、散歩、ヨガ、体操)
家事や仕事などを詰め込み過ぎない
バランスのよい食事をとる
新しいことに挑戦したり目を向けたりする
アロマテラピーなどでリラックスできる環境を作る
まわりの人に協力を求める
内容について詳しくみていきましょう。
軽く運動する(水泳、散歩、ヨガ、体操)
更年期うつに効果的な運動は、心拍数が上がりすぎない程度の軽い運動です。たとえば水泳や散歩、ヨガや体操などの運動が最適です。
なかでもヨガは、呼吸に意識を向けて自分のからだと向き合うものなので、更年期にはピッタリといえます。特別な準備を必要とせず、手軽に始められる散歩もおすすめです。
いつもは慌ただしくて、まわりの景色を見る余裕は持てないものです。これを機にのんびり散歩してみたら、今まで見えなかった景色を見られるでしょう。
運動すると幸せホルモンのセロトニンが分泌されます。運動として頑張るのではなく、楽しみながら実践することが大切です。
家事や仕事などを詰め込み過ぎない
家事や仕事などやらなければならない予定が詰まっていると、心に余裕がなくなります。今までの「あれもこれもやらなければ」という気持ちを、これからは「少し休んでからやろう」に切り替えることが大切です。
更年期うつは身体的な負担をかけることで、より悪化します。うつ状態は、からだが苦しんでいるサインなので、からだを休めることで心に余裕が持てるようになるでしょう。
頑張りすぎることが自分自身を苦しめてしまうので、次の作業を始める前にひと息つくことを習慣づけてください。
バランスのよい食事をとる
バランスのとれた食事はからだと心の栄養になります。からだに必要な栄養素が不足すればどこかに不調が現れ、その結果心の安定も図れなくなり、うつ状態を悪化させるのです。
もちろん、忙しい毎日で全ての食事に気を遣うことは難しいものです。
1日の中で、もしくは1週間全体を通してでも構わないので、バランスを考えて食事をとるようにしてください。
女性ホルモンの減少は骨粗しょう症につながるので、カルシウムを意識することも大切です。意識を向けるだけでも違うので、無理なくできることから始めましょう。バランスのよい食事をとり栄養がいきわたることが、元気に過ごすことにつながります。
新しいことに挑戦したり目を向けたりする
更年期は子どもが巣立ったり仕事での立場が変わったり、今までと環境が変わります。そのため、気持ちの変化も大きくなり、切り替えられずうつ状態になるケースも多くみられます。
変化を受け入れることは難しいですが、今までの自分にはない選択肢に挑戦すると、新しい発見につながる可能性があります。小さな一歩を踏み出すことで、新しい自分に出会えるはずです。
アロマテラピーなどでリラックスできる環境を作る
頑張りすぎていた心とからだがリラックスできる環境作りも大切です。自律神経は緊張と緩みのバランスがとりながら調整されます。しかし緊張が続いてしまうと、自律神経の乱れとなりからだの不調を引き起こすのです。
リラックスできる環境は、人によって違います。自分はどのような環境でリラックスできるのか、探してみることも大切です。
まわりの人に協力を求める
更年期の身体的影響は大きいので、普段何気なく行ってきたことも負担に感じる場合があります。自分ひとりでやろうとせず、まわりの人に協力を求めることが重要です。
頑張りすぎる人は、自分が辛いことに慣れていることが多く、無理して頑張った結果、からだと心が限界に達してしまいます。そうならないために、最初から「大変なのだ」とアピールしてください。
大変なときに助けを求めることは自然なことです。協力を求めることは、自分自身だけでなく自分を取り巻く環境を守ることにつながるのです。
まとめ
更年期うつとは、45~55歳頃の更年期に女性ホルモンの影響を受けて起こるうつ症状のことです。
環境の変化などのストレスが重なれば、うつ病になる可能性もでてきます。症状に不安を感じているのなら、早めに専門機関を受診することが大切です。
自分の状態に向き合い、笑顔で過ごせる道を探しましょう。
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