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スラブ世界の天地創造 第2話

 夏休みを理由にちょっと間が空いてしまいました。いったい、この歳になりどの面下げて夏休みを理由にさぼれるのか、と自分でも不可解の領域ですがひとつのことに集中できない私は、あちこちに途中で止まっている業務がありまして、片付けていた次第です。ふぅ~。

 それでは、前回に続きスラブの神話、天地創造の世界へご案内いたします。

 



第2話

 白神とその暗黒色の弟は舟に揺られていた。白神は自分の金色の髭から棒を取り出し、櫂とした。目を伏せつつも、その視線は目の前にいる驚くような姿をした相手の観察をつづけていた。
 暗黒色の弟は牛の角を持ち、全身は黒い毛でおおわれていて蛇のしっぽをもち、四肢は昆虫類、または黒いカラスの足のようだと言われているが、白神同様、姿かたちを変化させることができた。
 白神は、目の前にいる相手とつながりを否定するのは難しいと思ったくらいに自分と似ていたため、心の中で相手を「黒神」と呼んだ。

黒神「我々は双子のようだが、実際は私の方が年配だな。君を生み出したのは火花だが、私は闇で創られた。それにどんな光も、いつかは終わる。闇は光よりも古く、慎重で我慢強い」

白神はその言葉を聞き、頭を振った。すると銀紙が火花を散らし、頭の周りを光が包んだ。その光があまりにまぶしく、黒神は目を覆わなくてはならなかった。

白神「そう考えるなら、、、海の底から、砂をひとつかみ、持ってきてくれないか」
黒神「それだけか?ひとつかみと言わず、もっと持ってきてやる」
白神「いや、少しでいいんだ。ただ、その時に『白神と君(黒神)の力によりて』と言葉を紡いでもらいたい」

 黒神は了解し、海の底へと潜った。そして白神の言っていた祝詞を思い出し、鼻先で笑った。白神が一人で大地を創りあげようとしていると考えたのだ。そうはさせるまい、と黒神は海底で砂を取るときに「我(黒神)の力によりて」とつぶやいた。海面に上がってくると、砂は全て指の間から零れ落ちて何一つ残っていなかった。
 再び、今度はウミヘビの姿で潜り先ほどと同じように言葉を紡いだ。海面に出るとまた何も残っていない。怒り狂った黒神は、3度目は海鳥の姿になり潜ると、今度は白神が言ったとうりの言葉を唱えると舟に上がり白神の手の上に海の底の砂を吐き出した。
 しかし、そのとき自分の舌の下に少しの砂を、自分だけのために隠し持っておくことにした。

黒神「みたか。それほど時間もかからなかっただろう」
白神「そうだな。長くはかからなかったな、、、お前が『光』と『闇』はひとつだけでは成り立たないと理解するのに -」

 白神は手の上の砂から水を絞り出しながら唱えた。
「白神と黒神の名において、大地を呼び起こす」
そうすると海は荒れ波は高くなったが、しばらくすると落ち着き、岸に金色の砂が広がる緑の丘が現れた。

白神「我々の祖大地だ」
黒神「はっ、何とも粗末な神々の島だな。小さいし、狭いし、我々二人が何とか上陸できるぐらいじゃないか」
 そういいながら、口の中の砂に困っていた。

 白神は肩をすくめ「何かを、まず初めねば。これは初めての安定した大地だ。今日はもう休もうとしよう。ん?兄弟よ、どうしたんだい?」
 と心配そうに黒神に尋ねたが、その理由は実は知っていた。
 「何か気にかかることでもあるのか?それとも嫉妬か?」
 そう言い、めいいっぱい黒髪の背中を叩くと、黒神の口の中から岩が飛び出し、唾は沼となった。そして白神が「もう休むとしよう」と上陸すると黒神も「そうしよう」と賛同したが「ここでは白神、お前が支配者か」と苦虫をかみつぶしているのを白神は聞き逃さなかった。


 いいですね~、キリスト教の天地創造の『なんでも問題なくできてしまいますのよ~』というノリではなく、しょっぱなからこう、人間臭いドロドロの感情、嫉妬の渦が満載です。このドロドロさ、これからどんどんレベルアップしますので、乞うご期待。(ん?!)


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