ポーランド妖図鑑 ババ・ヤガ Baba Jaga
ポーランド一般的なババ・ヤガ (Baba Jaga)のイメージは、年老いて、しばしば眼の悪い干からびた(?)容姿の老婆なのですが、このJaga の語源はJędzaからきています。さて、Jędzaがどういう意味かと言いますと、ポーランド国立学術出版の辞書によれば以下の通りです。
その① 背中の曲がって鼻の長い老婆 - 童話の中の悪役
その② 諍いの好きで口うるさい女性
ちなみに、その②の用法は現在も会話にちらほら出てきます。まぁ、この言い方をされた女性って相当嫌われてますね。「イジる」とかいう、かわいいレベルじゃありません。「かなり嫌な女」認定は確実です。
さて、次に私の手元にある「ポーランド妖怪大辞典」によると、
その① 人間に病や繰り返し災禍をもたらす女の妖怪。死者の世界との関
係があると思われる。思い描かれるイメージは老婆で気味の悪い
容貌 (骨ばった一本足、垂れ下がった胸、盲目もしくはほとん
ど見えない)で、森の中に住み、住む小屋は鶏の足で立ってて、
フクロウ、狼、もしくは猫と一緒に住んでいる。森で迷子になっ
た子供をさらい、食べてしまう。
その② 人間の姿をした女の森にいつく妖。
その③ 民話の中で登場する魔女の一種
となっております。
さて、ババ・ヤガが出てくる話で一番ポピュラーな終わり方は、主人公に退治されてしまうってところでしょうか。なんてったって、ババ・ヤガとくれば、反射的に悪役なのですから。
しかし、どうもこのババ・ヤガ=悪というのはキリスト教の影響を大きく受けているという説もありますし、これ有力でしょうね。というのも、数は少ないのですが初期段階の話ではババ・ヤガは「よくものを知っている女」「薬草を扱える女」というニュアンスを含んでいて、何が何でも主人公とやりあう必要もなかったようです。
また、「ポーランド妖怪大辞典」のその①②にあるように、
この地域がキリスト教に改宗する前の時代に森に住んでいた女神の一人(キリスト教に改宗後はこのような神たちは妖へと位置づけが変わります)だったという説もあります。
ポーランドが国としてキリスト教を国教と定めたのが966年。でもですね、国が「よし、今日から神はイエス様だけだ!わかったな!」と言われても、普通の民は「何言っちゃってるの、この人」という感覚でしょう。この地ではその後長いことかつての神々が息づき、古来からの神事が民衆レベルでは執り行われていてキリスト教会からは「おい!こら!いいかげんにしなさい!」と言われるほど人の話を聞かなかった、、、というか、キリスト教が浸透するには時間がかかっています。そして、今現在もその名残があったりします。夏至の日、古来からの呼び名では「ノツ・クパウィ」とよばれる祭があります。この祭、キリスト教会には気に食わなかったそうで圧力をいろいろかけたのですが民衆はこの祭りを続けたためなんと、キリスト教的な祭に仕立て上げ「ノツ・シヴェントヤインスキ」と呼び始めました。ちなみに、かなりキリスト教化された今現在でも一般レベルで「ノツ・クパウィ」の呼び方は通用します。
っと、話がズレてきちゃいましたが、話をババ・ヤガ (Baba Jaga)に戻すと、今一般化されている悪者というラベルの裏側には宗教に絡んで妖へと替えられた、かつての神がいるようですね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?