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スラブ世界の天地創造 第4話 前編

 南部ではすでに初雪が降ったポーランド。今年の秋は、エネルギー代が炸裂高騰中だというのに例年に比べて嫌がらせの如く、寒いです。それで、街を歩くとき家々の煙突を見るのですが、どの家も煙が出ていたとしてもほんのちょっぴり。いままでなら、すでにモクモクと煙がでていたでしょうに。皆さん倹約モードに入っていますね。なんて、他人事ではない我が家も全力で倹約モードです。

 さて、ちょっと間があきましたが、スラブ世界の天地創造の4日目の前編、見てみましょう。

 



 白神は、オークの木の一つ目のうろの中で槍を作ったり、新たな火の鳥を創り上げたりと忙しくしていた。火の鳥はWyraj天上界の門を守り、まだ生まれてない魂、もしくはもう一度生まれ変われる選ばれた魂を見つけるため、星の下ではばたいていた。
 黒神は白神のやることを近くで眺めていた。
 白神は、二つ目のうろに風呂場を作った。ある日、白樺の枝で身体を叩き、藁の束で体をこするとその藁を外へ投げ捨てた。
 突然足元に転がってきた、その藁の束を拾い上げた黒神は
「ふん、、、ただのゴミにも見えるが神の汗がしみ込んでいる。新しい命の元が感じられる。この藁から自分の姿に似せた、我のみに仕えるモノを作り出してみるとしよう」とそばにいたオオカミに話しかけた。
 自分の唾液、そして時には隣にいるオオカミのよだれを使い藁の束から人の形をつくりだした。
 こうして、未来の人間は様々な病気や、野蛮な破壊行為の残虐な欲求などの素がしみこんだ。
 
 創られた藁人形は、人形のままで黒神が考えていたような人にはならなかった。がっかりした黒神は藁人形を地面に叩きつけ
「何の役にも立たないゴミだ!兄弟が今までしてたように、使った藁は火で焼かれるべきだったのだ。今回はオレが踏みつけてやる」
怒りにまかせ、唾を吐き捨て足で踏みつぶそうとすると、背後から白神の声がした。
 「ちょっと待ってくれ、兄弟よ。素適なおもちゃを持ってるじゃないか。我々に似たような形にしたんだな」
「だから何だっていうんだ。こんな命のない役立たずに用はない」
「いや、そうでもないぞ。その人形の中には命の素がある。私の汗と、そしてお前の唾液とで出来たものだからな。お前は外側に重きを置きすぎて、内側をおろそかにし過ぎたのだ」
 「何が足りないというのだ」
「魂とよばれるものだ、鍛冶場の火のように、まず火の元を起こしてしろげなければ」
 白神はその人形に少し手を加え、見た目をよくした。この時に人の見目は神に近く、よいものとなったが黒神の唾液は内側にしみこみ、それは苦痛と死に変わった。そして白神は炎と主に命を吹き込み、その人形は「人間」と名づけられた。
 「人間」は死んで炭になると土、もしくは海の底に戻る ― つまり黒神のモノになり、魂は白神の元、Wyraj天上界に行くことになった。


 
 



 黒神のゲスっぷりが相変わらずですが、白神もなかなか策士ですね。そして、オオカミの唾液が人間の元につかわれているから人間は病気になったり残虐になったりするという、関連性が面白いかも。でも、オオカミの話で「そうきましたか!」と驚くのは、次の後編です。
 

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