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乙川はカヌーポロのスタジアムだ!

今回はトップアスリート対談です。愛知県岡崎市在住のカヌーポロ日本代表の柴田勝之さん(34)と、サッカーの名古屋グランパスFWだった森山泰行さん(53)。柴田さんは今年、日本代表として世界選手権に挑戦しながら、地元でカヌーを知ってもらい、乗ってもらう普及活動に取り組みました。競技は違えど、スポーツに夢中で取り組んでトップを極め、そのスポーツでまちを盛り上げたい想いはまったく重なる。乙川の河川敷に座りながら、カヌーの可能性を語り合いました。

花見客の前でデモンストレーション

森山:春にカヌーポロのデモンストレーションがあった時にお会いしましたね。
柴田:はい、その時にごあいさつをしました。

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今年4月、桜まつりの花見客でにぎわう乙川で、柴田さんは練習仲間と一緒に、カヌーポロを知ってもらおうと、練習を“実演”。森山さんも発起人の「みんなでつくるプロサッカークラブ岡崎」(みんつく岡崎)が総合型地域クラブの運営をするためにつくった「カルチャー&スポーツクラブ岡崎」(CSC岡崎)と、一緒に仕掛けたデモンストレーション。練習の合間に河川敷の子どもがカヌーに向かってボールを投げる即興の遊びを始めたところ、いろんな人が次々と投げ始めて盛り上がった。
<参考>https://note.com/mintsuku_okazaki/n/n6f37b4346a23

森山:あの時はボール投げを始めて、子どもたちがあんなに興味を示すとは驚いた。やっぱりみんなが楽しめるっていいよね。
柴田:競技をするというよりも、まずは乙川を使ってカヌーを楽しんでもらいたいと思っています。

ルールを守れば安全にできる

森山:ぼくもカヌーしますよ!なんて話したけど、一回も行ってない(笑)。乗るのはもう、来年の温かい時期にならないとキツいですね。
柴田:まずはスクールに参加して、始めていただければいいのではないかと。

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森山:夏に乙川でスクールも開いたんですよね(7月と9月に計4回、柴田さんが教えるカヌースクールを開催)。どうでしたか?
柴田:最初は50代、60代、70代のおじさま方が参加してくださいました。
森山:たぶんそのくらいの年代のみなさんは、やってみたかったけど、なかなかやる機会がなかったとかじゃないかなあ。自分が知らないことをやってみたいって好奇心ありますもんね。ぼくはカヌーをする機会はなかったもん。長良川の近くで育ったんだけど、痛ましい水難事故もあって川は危ないイメージがあります。でも、乙川は流れもそんなに速くないし、カヌーにはいい環境ですよね。
柴田:水辺のスポーツって危なそうで警戒されがちなんですけど、ちゃんとルールを守ってすれば安全にできます。スクールで、小学生のお子さんが参加した親御さんが心配されて一緒に乗る方もいたんですけど、二回目以降は子どもたちだけで大丈夫とおっしゃっていました。一回乗れば安全性も分かって、子どもたちの上達も早い。

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近くにあった、カヌーの楽しさに気づく環境


森山:柴田さんはどうしてカヌーを始めたんですか?
柴田:長野県の町で育ったんですが、そこを流れる天竜川でカヌーができたんです。小学校の時には学校のプールでまず何度か乗ってみて、それから川に漕ぎ出すんです。カヌークラブもありました。
森山:身近にそういう環境があったってことですね。
柴田:でも自分は中学ではバレーボール部で、長野県内の強豪の岡谷工業高校に進む話があったんです。それが中学卒業の直前に親の転勤で愛知県に引っ越して、スポーツに打ち込める学校へということで三好高校へ入りました。バレー部の練習を見に行ったら、レベルがあまり…っていう感じだった。バレーに限らず球技が好きだったので、じゃあ他のスポーツをやってみようかと。寮から学校へ通う道の途中にある池で、なんかカヌーをしながらボールを扱っているスポーツをやってるなあ、面白そうだなと思ったのがカヌーポロでした。
森山:へー。すごい出会いですね。
柴田:高校に部活動もあったので、ちょっとやってみようかと思ったらはまってしまって(笑)。小学生の時にカヌーをやっていなかったら、たぶんカヌーポロに興味がわかなかった。カヌーの楽しさを知っていたからだと思います。
森山:普段の生活の中にそういった気づきや環境があると、パッと入ってくるんだね。宿命なんじゃないですか。
柴田:ご縁があってやれているのかと思いますね。
森山:いろんな選択肢があるのはやっぱりすごくいい。いろいろチャレンジできる場所があったら、人としても成長しやすいのかな。
柴田:カヌーって自然と隣り合わせで気づかされることも多いんですよ。川のゴミがすごく目についちゃったり。
森山:環境問題とかね。
柴田:スクールでも、小魚が泳いでいるのを喜んだり、日向ぼっこをしてたカメに興味持ったり、みんな視点が違う。漕いで疲れて休んで浮いている時に手を水の中に入れるのがすごく気持ちいとか。
森山:そうですよね。日常で川の水に触る機会ってないですもんね。

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日本はアジアのメダル候補だが…

森山:8月には日本代表としてフランスで開かれた世界選手権に出場されました。日本はどのくらいのレベルなんですか。
柴田:アジアだとだいたい1〜3位を常に競い合っているくらいです。今回の世界選手権は出場21チーム中の13位で、残念ながら目標のベスト8には届きませんでした。
森山:オリンピック競技に採用されたら出られそうですね。
柴田:かなり可能性は高いですね。でも、アジア大会の種目にもなっていないんです。競泳の池江璃花子選手がMVPをとった2018年のジャカルタでのアジア大会の時に、カヌーポロがデモンストレーションで開かれて、日本は優勝しました。次の2022年に中国で開催されるアジア大会で正式種目に入れるように積極的に動いていくと、国際カヌー連盟の方から聞いていたのですが…
森山:コロナの問題で?
柴田:コロナで1年延期になったのですが、開催国の中国がそれほど強くないので…。正式種目には入っていません。中国で正式種目になったら、次に愛知県で開催される2026年の大会も正式種目に入る予定で話が進んでいたと聞いています。
森山:地元開催ですね。
柴田:みよし市がカヌー会場なので、そうなったら自分のホームグラウンドでできたんです。代表でやれていたら、そこが自分の引き際なのかと思いながらやっていましたが…

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地域のクラブで活動できる場を


森山:そうじゃなくなったわけだ。ということは、柴田さんにはもっと違う役割があるんじゃないの?
柴田:そうです。方向転換して、ちょっと違う形で。
森山:普及ですね。すごい夢がある話。ぜひ頑張ってもらいたいな。
柴田:今年、乙川でやった活動を形にしたいという気持ちが、自分の中でより強くなりました。カヌーができる機会を多くつくって、カヌーポロがどういう競技なのか知っていただくような活動ができるといいのかな。クラブチームとか。
森山:学校の部活動だと教えられる人がいないからね。
柴田:そうなんです。ぼくらも高校時代、カヌーポロを教えられる先生がいなくて、顧問をしてくれる先生を見つけて、やっと部活動として成立させて活動していたので。
森山:能動的に動くのがいいですよね。そういうところ、新しいスポーツはすごい。
柴田:でも、プロのJリーグがあるサッカーとは違って、僕らみたいにマイナーな競技だと、活動を知ってもらうことがすごく難しい。だからもっと積極的にアピールしていかないといけない。
森山:なにが起きるかわかんないよ。サッカーもマイナーだったから。ぼくはちょうどJリーグができたけど、あと10年か20年早く生まれていたら、閑古鳥が鳴いているスタジアムでプレーしていたと思う。いいタイミングでサッカーをすることができたんで、今はなにか社会的にやらなきゃいけないことがあるんじゃないかと感じているんです。若手の育成とか競技の良さを伝えていくとか、自分だけが楽しければいいんじゃなくて、未来につなげていきたい。タイミングとか出会いとかきっと意味があるんですよ。
柴田:そうですね。自分ができることを積み重ねていくしかないのかなあと思っています。あと、代表は選ばれる限りはチャレンジし続けていきたいですね。
森山:カヌーポロって何歳くらいまでできるんですか?
柴田:代表では今の自分が歴代最年長ですね。でも、草大会や各地域の大会になると60歳を過ぎた方もやっています。
森山:生涯スポーツですね。

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乙川で大会を開きたい


柴田:草大会だったら、仮設ゴールがあれば、乙川でもすぐに開けます。カヌーポロは5人対5人でやるんですが、控え選手が各チーム3人いて、選手以外にも関係者や家族の応援もあって、けっこうな人数が集まるので少しは地元経済へのプラス面もあると思います。公共交通機関も高速道路もアクセスがとてもいいので各地から参加しやすいですし、なによりも大勢の方が河川敷や橋から競技を見られるこの環境は魅力です。毎年、横浜みなとみらいの日本丸のところで大会があるんですが、みなとみらいを訪れた方も珍しそうに見ていて、にぎやかな大会になっています。岡崎もそんな可能性はあります。
森山:サッカーでいえば、スタジアムがすでにあるようなもんだもんね。ぜひ実現させたいね。
柴田:年に1、2回くらいしかカヌーに乗らない方でも出られる草大会もあるんで、大会出場のハードルは意外と低いんです。大会が実現したら、ぜひ始球式をやってください。
森山:サッカーでいうとキックイン? それはカヌーに乗らないとできないのかなあ。ちょっと練習しておかないといけないですね(笑)

柴田勝之(しばた・かつゆき)長野県高森町出身。中学までサッカー、バスケットボール、バレーボールなど様々なスポーツを経験。愛知県へ引っ越して三好高に入学し、カヌーポロに出会う。2005年に歴代最年少の17歳で日本代表入り。2013年から3シーズンは主将を務め、2015年のアジア選手権で日本の初優勝に貢献。世界選手権は今年で5回目の出場。岡崎市在住の会社員で、3人の子どもの父。カヌーポロクラブ「みよしSea Monkey」所属。

森山泰行(もりやま・やすゆき) サッカー元日本代表FW。岐阜市生まれ。帝京高、順天堂大を経て1992年に名古屋グランパスエイトに加入。アーセン・ベンゲル監督時代に途中出場から高い得点率を誇り「スーパーサブ」として活躍した。J1ではリーグ戦通算215試合出場66得点、1997年には日本代表で1キャップを刻んだ。1998年にスロベニアの強豪ヒット・ゴリツァでプレー。2005年には東海社会人リーグ2部のFC岐阜に加わり、2008年にJリーグ昇格。2014年から5年間は埼玉県の浦和学院高校サッカー部監督を務めた。2019年にJFLのFCマルヤス岡崎にチームディレクター兼選手として加入。2022年になでしこリーグの朝日インテック・ラブリッジ名古屋のストライカーコーチに就任した。愛称ゴリ。


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