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お花見カヌーで盛り上がったこと

  愛知県岡崎市の市街地を流れる乙川で4月3日(日)、満開の桜に詰めかけたみなさんにカヌーの練習を見てもらいました。小雨模様で花冷えの一日。水の競技に興味を持ってもらうにはあまり条件はよくなかったのですが、途中から想定外の展開となって、花見客が“飛び入り参加”して盛り上がりました。任意団体「みんなでつくるプロサッカークラブ岡崎」(みんつく岡崎)が総合型地域クラブを運営するために設立した、一般社団法人「カルチャー&スポーツクラブ岡崎」(CSC岡崎)の活動をお伝えします。

代表候補ら国内トップクラスの練習

 今回、練習をしたのは、水球のカヌー版といえるカヌーポロの国内トップクラスの選手たちでした。3月20日にあった日本カヌー連盟の選考会で選ばれた男子の日本代表候補9人のうち、4人が愛知県みよし市の保田ケ池を拠点にしています。そこから岡崎市在住の柴田勝之さん(34)ら3人がこの日は参加。保田ケ池には常設のカヌーポロコートがあるので7クラブが活動し、そこの「みよしSea Monkey」と「みよしマーメイド」の男性8人と女性2人との計10人による練習でした。
 筋肉自慢という選手の太い腕には、見学したみんつく岡崎発起人の森山泰行さんも驚いていました。ボールを奪うためにカヌーでぶつかる光景や音は迫力がありますし、不安定なカヌーを操りながらボールを遠くまで投げる体幹の強さ、水をかくパドルでボールを止めキャッチする技術などはさすが。乗るどころか見たこともない人も多いと思われるカヌーですが、そんな凄さは実際に見てもらえば伝わるかなという目論見でした。

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 屋台やキッチンカーで買ったものを食べながら見たり、練習風景をスマホで写真におさめたり、河川敷から注目はされているようでした。でも、用意していた説明用のチラシはなかなか手に取ってもらえません。汗ばむような晴天だったら水しぶきに「気持ちよさそう」となって「なにそれ?」と興味を持ってもらえることがあったかもしれない、肌寒い中では難しいだろうな、などと思っていたところ、雰囲気が変わり始めました。

「私もボールを投げてみたい」

 練習開始から1時間ちょっと経った正午すぎのことです。休憩で岸に近づいてきたカヌーの選手たちを見て、小さな女の子が「私もボールを投げてみたい」とお母さんに言い始めたのです。それに、マネジャーとして岸から練習をフォローしていたチームメイトの女性がすかさず反応して、「いいよ、投げてみて!」と声をかけてくれたのがきっかけでした。
 顔ほどの大きさのカラフルなボールを川に向かって投げる女の子。それだけでも楽しんでもらえたのでしょうが、選手のサービス精神は旺盛でした。キャッチで少しバランスを崩したふりをして、カヌーをひっくり返して水中に潜り、一回転してから水面にザバッと飛び出して、喜ばせてくれます。沈(カヌーがひっくり返ること)から起き上がるロールという技術を惜しげもなく披露。そこから次々と、自分も投げてみたいという子どもが現れました。
 「一番遠くまで投げます!」という若い男性にも投げてもらいました。川の中ほどまで届いたボールを選手が拾い、カヌーに座ったまま軽々と岸まで投げ返すと、それだけで凄さが伝わります。次に、男性の連れの女性が遠慮しながら投げたら男性と同じくらい飛び、拍手とどよめきと笑いが。そうしているうちに「キャッチしてみたい」という子どもも現れました。寒い日に水に濡れたボールを受けるのも平気。しばらく河川敷で即興のアトラクションが開かれたようでした。

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 スポーツを知ってもらいたいという時、どうしても「競技」のモノサシで考えがちになります。高いレベルでプレーする様子を見てもらえば、自分もやってみたい、そうなりたいと思ってくれる人が現れるのではないか、という発想でした。でも、それはなんか上から目線ですよね。凄いの見せてあげる、的な。特に、あまり一般的ではないカヌーでそれをやっても、よほど超人的で分かりやすい動きでもないと響きません。
 そんな時に、女の子が「自分にもできそう」と興味を持ってくれたのがボールを投げることでした。選手にしたらどうってことないプレーですし、カヌーをコントロールする技術やパワーの方が競技的には優先でしょう。でも、川に向かってボールを投げるのはちょっと珍しい体験だし、そこにキャッチする選手がロールでオチをつけてくれたので、面白い遊びとして成立しちゃったようです。おかげで敷居が下がって、お花見客と選手の間で交流が生まれ、体験を共有してもらえました。
 CSC岡崎は今春、サッカーの中学生チーム「FC岡崎竹千代U -15」の活動も始まり、「乙川でサッカーとカヌーを組み合わせたイベントができそうだ」という声も仲間内で出ました。乙川を挟んで対岸へ向かってサッカーボールを蹴る日本で一番大きなキックターゲットをして、岸に届かなかったボールをカヌーで回収するとか? 妄想はこのあたりでやめておきます。今後、乙川で試乗やスクール、クラブの活動を模索していく中で、今回のように手軽に楽しんで親しみを感じてもらい、興味へのきっかけをつくってもらえそうな活動も組み込んでいけるといいなあと思いました。

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 今回、遠征してのカヌーの練習に協力してくれた選手のみなさんには感謝でいっぱいです。チームメイトにカヌーの運搬を頼んで、岐阜県多治見市から電車を乗り継いで参加してくれた方もいました。カヌーの置き場所さえ確保できれば、そうやって電車でやって来られるというのは、乙川のメリットです。パドルが川底についてしまった浅い場所もあったそうですが、そういう所を避ければ、流れも緩やかで、ポロやスプリントの練習には十分に使えそうです。いつか乙川が新しいカヌーの練習場所となったころに、ぜひまた来てください。

 この日の天気予報は雨が一日中続き、降水確率は70〜80%。気温も上がらない予報で、迷った末に、午前8時に小雨の中で決行を決めました。しかし、いつの間にか雨が上がり、夕方には雲が薄くなって空が明るくなってきた乙川で、新しい可能性を見つけた思いです。

20220403_表_カヌーチラシ

20220403_裏_カヌーチラシ


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