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中国の資本政策「国九条」とは

 中国の金融市場は様々な課題に直面しており新たなガイドラインを手掛かりとした断固たる措置が求められています。経済成長のスピードが鈍化してマクロ経済のファンダメンタルズに下方圧力がかかり経済運営における不確実性も高まっています。不安定な不動産市場により市場心理がさらに悪化する懸念が高まるとともに国際資本市場に悪影響が及ぶ不安が国内の混乱の引き金となる恐れがあります。さらに土地譲渡益の大幅減少が地方政府の債務急増に拍車をかけ債務不履行リスクも高まっています。
 こうした状況で新「国家九条」の発表は低迷する金融市場の刺激と体系的リスクへの対処を中国政府が本気で取り組もうとしていることを知らしめるものです。ガイドラインは監督強化・リスク防止・質の高い発展を促進するかたちで中国資本市場に自信をつけ安定性を高め持続可能な成長を促すことを目指しています。
 「安定した発展」や「健全な発展」を優先していた過去の国家九条とは対照的に新国家九条では「厳格な監督・管理」に重点が置かれています。こうした戦略的転換はリスク軽減と規制監督にたいする積極的な姿勢を印象付けるものであり、市場の安定と健全性の保護が不可欠である点を反映しています。
 「国家九条」には資本市場の質の高い発展を促進するために不可欠となる5つの必須原則を具体化した厳格なガバナンスを遵守する旨も盛り込まれています。5つの原則として党の指導へのゆるぎない忠誠・人民の福祉を優先する金融慣行の実施・監督ならびにリスク防止メカニズムの包括的強化・改革のさらなる深化・弾力性のある実体経済と現代産業システム構築への献身的な奉仕が挙げられています。
 中国資本市場の最大の問題点は経済発展のニーズに十分対応できていないことです。結果、貯蓄資金が円滑に投資に転嫁されず過剰流動性と中小企業の深刻な資金不足が併存することになります。また、巨額な貯蓄を海外市場で運用せざるをえず、大量の外貨準備が積みあがることになりました。
 中国は世界第二位の経済大国であり14億人もの人口を抱えています。経済成長の鈍化・若者の失業率上昇・不動産市場の崩壊など様々な問題を抱えています。従来の成長モデルが限界に達したことで生産設備の稼働率が低下し抱える債務が過剰になっています。国内市場不振から輸出に活路を見出そうとしていますが、欧米からは不当ダンピングで制裁を受ける格好となっています。
 中国の10年ぶりの資本政策はリスクコントロールしながら質の高い資本市場の発展を促進させる意図が出ています。国有企業は配当性向が高く投資家にとって利回りが良いため人気が出ているようです。またストックコネクトと言って一方の取引所を通じて他方の取引所の取引銘柄を売買することを可能とする制度を拡充し、ETFの範囲を拡大したりREITを組み入れたりしています。
 香港株を示すハンセン指数は4月から急上昇しており、ニューヨークダウを上回り日経平均に迫る勢いです。理由は低いPER(株価収益率)にあり香港株は9.39倍ですが、日経平均は22.7倍、NYダウは19倍、上海株は11倍とこれらと比較しても割安なことにあります。人民元を組み入れ、中国本土の代表的企業の上場支援も行っています。アリババ・バイドゥ・京東・トリップドットコム・NIOはセカンダリからプライマリに切り換えとなり中国人からの投資を呼び込もうとしています。

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