Z世代とミレニアル世代に変化あり
米国は、GDPの約7割を個人消費が占め、個人消費動向が米国経済の先行きを左右します。総人口3億3200万人の中でも、今後、消費動向が本格化し、米国の消費動向において存在感を増すとみられるのが1997~2012年生まれのZ世代です。米国経済は強く、経済指標上、衰えは見えませんが、最近、米国最大の化粧品専門チェーンのアルタ・ビューティやアクティブウェアを販売するブランドのルルレモンが売り上げの軟調や減速を示唆したことから米国個人消費の先行きを不安視する見方が出ています。
米国の人口構成を世代別にみると、2020年時点で「ミレニアル世代」(1981~1996年生まれ)が構成比22%と最多で、「ベビーブーム世代」(1946~1964年生まれ)が21%、「Z世代」(1997~2012年生まれ)が20%、「X世代」(1965~1980年生まれ)が19%と続きます。米国の消費をけん引しているのは「ミレニアル世代」ですが、今後、「Z世代」が就業することで可処分所得を増加させ、消費者としての存在感は高まるとみられています。米国でも高齢化が進み、総人口に占める労働人口の割合は減少する一方で、労働人口に占めるZ世代の相対的重要性は高まるとみられます。米国においてZ世代の特徴や購買行動を理解することは、需要をとらえるうえで重要な要素となります。
Z世代の多くがリーマン・ショック(2008年)後の景気後退期間に幼少時代を過ごし、先行世代が住宅ローンや学生ローンに苦労した姿を目の当たりにしたことから、債務やローンを嫌う傾向があると指摘されています。調査会社によれば、Z世代の回答者の65%が商品購入の判断にあたって「割引の利用可否や買い得であるかが重要な判断材料になる」と回答しており、購買行動においては保守的であり、買い得感のあるセールを好む傾向が比較的強いと指摘しています。さらに米国の各世代研究の専門家は、Z世代は購買行動において現実的かつ実用的な考え方をするため、商品やサービスの金額に対する価値を重視する傾向があると述べており、Z世代が節約志向を持つと同時に、多少金額が高くても価値あるものを購入するという側面もあると指摘しています。
Z世代は、スマホやタブレットなどのデバイスが身近にあり、個人が情報発信の主体となり、ユーザー間で相互に情報交換が行われる「WEB2.0」の環境下で育ったデジタルネイティブ世代でもあります。Z世代は、写真・動画共有アプリのInstagramやYouTube、TikTokなどのSNSを日常的に使用しており、1日平均4.5時間程度をSNSの閲覧・投稿などに費やしているとされています。購買行動に際しては、SNSにおいて多数のフォロワーを獲得する「インフルエンサー」など第三者のユーザーとつながり、第三者から得た体験情報やアドバイス、口コミ、レビューを判断材料として信頼する傾向も見られます。
冒頭、米国最大の化粧品専門チェーンのアルタ・ビューティやアクティブウェアを販売するブランドのルルレモンが売り上げの軟調や減速を示唆した背景として、Z世代やミレニアル世代が、「コロナ禍で買い物依存になり、浪費癖がついてしまった」と言っており、SNSの影響で視聴者と配信者がコミュニケーションを取りながら商品やサービスの宣伝および販売を行う「ライブコマース」などを通じてオンラインで商品やサービスを購入する機会が多くなり、その結果、クレジットカード・ローンの返済に追われて苦しくなってきたとされています。Z世代やミレニアル世代が、「しばらく買い物は控える」「必要なもの以外は買わない」という購買姿勢に変わったことが今後の米国の個人消費動向にどのような影響を及ぼすのか、要注意です。
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