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ロシアでプーチン氏が最長統治者へ

 ロシア大統領選で圧勝のプーチン大統領は、新たな任期の6年間を全うすれば、実質的な統治者として君臨する期間は合計30年となり、ロシアの前身であるソ連を四半世紀率いた独裁者スターリンをしのぐ長さとなります。
 プーチン大統領の考えは、伝統的価値観と愛国主義に集約されます。ロシアの価値を愛国、大国、国家主義、社会的連帯と定義し、伝統的価値の再興に向けて、地方に対する統制を強め、中央集権化を進めています。
 クリミアは歴史的にロシア領とみる世論多数派を背景に、ウクライナに対する特別軍事作戦が続き、欧米との対立が深まる中、国民はあと6年、ロシアのかじ取りをプーチン氏にゆだねた形となりました。
 一方でウクライナとの戦争でロシア経済が疲弊しているのも事実です。ロシアの家計は苦しくなってきており、ウクライナへの戦争を支持する人は徐々に減りつつあります。民衆が貧困に苦悩し、不満をつぶやく姿が見られるようになると、治安当局は彼らの顔を撮影し、その画像を手掛かりに一人ひとりの氏名、住所、勤務先などの個人情報をあぶりだします。反体制派の身元を割り出すことで、勤務先の経営幹部に通報し、解雇をちらつかせながら改心を迫ります。政敵を最大限に利用し、反政府勢力がどの地域に分布し、どれだけの人数、規模なのかを解明します。
 そのような中、スウェーデンのNATO加盟が正式に承認される見通しとなりました。北欧諸国とバルト三国、ポーランドに挟まれて、ロシアはバルト海からヨーロッパに抜ける航路を実質的に封じられてしまいます。反発するロシアがウクライナを舞台とする戦闘を東欧や北欧に拡大させる懸念が高まっています。
 プーチン政権が崩壊しない限り、戦争を止めることもできず、ロシアによる核攻撃の危険性もつきまといます。歴史的にロシアは、長引く戦争や皇帝の専制に対する民衆の不満が高まったことで革命がおこり、体制が転覆し、新たな指導者が生まれてきています。
 300年も存続したロマノフ王朝を打破するために、革命家たちは「イースクラ(火花)新聞」という名の新聞を発行し、民衆たちの不満を爆発させました。現在の硬直するロシア社会の本格的な変革を望む声が高まれば、誰かがプーチン体制を倒す導火線に火をつけ、新たな指導者になると思います。
 あるいは、今回の大統領選での不正を訴える民衆が暴徒化し、抗議集会がモスクワだけでなく、ロシア全土で起こる可能性もあります。その場合は、ロシアの18%を占めるイスラム教徒の動向がカギを握ります。ウクライナ戦争で彼らは大量動員され、戦死しています。プーチンの戦争に利用されたイスラム教徒を中心に不満の矛先が地方行政府に向けられ、建物の占拠など、民衆が暴徒化する可能性はあります。
 ただ、これまで政権批判しても潰される事態が続き、閉塞感がより強まっています。そうなると突破口はプーチン氏の暗殺しかありません。その実行者が誰になるのか、まったく予想がつきませんが、どこかから不意に現れる可能性はあります。
 いずれにしても、核戦争の懸念が常にあり、私たちが生きているこの世界はいつ何が起きてもおかしくありません。そのことを私自身も含めて今は多くの人が肌で感じていると思います。明日、世界が終わるなら私は何をするだろう。そうした問いかけに対して、誰もが今は本気で考えます。何か大変なことが起きて、このまま世界が終わるかもしれない、どこにも逃げることができない、ここで最期を迎えることになります。いつ何が起きてもおかしくないこの世界で自分は何を大切に生きていくのか、そのことについて少しでも思いを巡らせてもらえたらと思っています。

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