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米国経済の強さは米ドルの信用力にあり

 米国は世界最大の経済大国で、米ドルは国際通貨のなかで中心的な地位を占める「基軸通貨」です。そのため、米国で発表される経済指標は、世界経済動向や金利、為替などに大きな影響を与える傾向があります。毎朝みているテレビ東京「モーニング・サテライト」では様々な経済指標を駆使して分析がなされているので非常に参考になります。経済指標とは、各国の経済活動状況をあらわす統計データのことですが、各国の公的機関が定期的に集計・公表するデータを指します。日本は経済指標の数、内容のどちらをとっても米国と比べると乏しい感は否めません。
 長い間、米国は世界経済の中心であり続け、今も世界一の経済大国です。しかし、その実態は恒常的な財政赤字と貿易赤字を抱えた未曾有の借金国です。米国の国債は世界中で買われており、世界中の国から借金をして自国の財政をまわしています。貿易面でも輸入は輸出額の約1.5倍で貿易赤字国です。
 それでも米国が経済大国であり続けているのは、米ドルが世界中の経済を動かす基軸通貨であること、第二次世界大戦後、欧州の復興を支援するため、1948年のマーシャルプランで多額の融資や贈与を行い、米国の輸出品を買ってもらうため、米ドルは世界中にばらまかれることになったからです。米国が借金大国でも世界中で米ドルが使われ、世界の金融システムが米国を中心にまわっていることで米国は経済大国のままでいられるのです。米ドル以前は、英国のポンドが基軸通貨でしたが、英国は第一次世界大戦で打撃を受け、基軸通貨として持ちこたえられなくなりました。
 米ドルの強さには軍事力という背景もあります。強い国の通貨は信用され、米国はソ連崩壊後、世界最大の軍事大国となり、米ドルの信頼を高めるため、米国は何かにつけて他国に軍事介入してきました。イラク侵攻も大量破壊兵器は口実で、イラクが石油取引を米ドルからユーロに変えようとしたためという側面があります。
 これで米国はどんどんお金を刷って、海外のものを買い、借金を重ねます。世界の人々は金の裏付けなしに米ドルの価値を信じて米ドルを使い続けたのです。世界中の国が米国債を買い、世界はより米ドル依存を深めます。こうして現在の米国=米ドルの覇権が確立されたのです。このことで米国はマネーゲームに走り、結局、リーマン・ショックのような金融危機を招くことにもなりましたが、米国経済の強さは米ドルの信用力にあるといえます。
 日本は、バブル崩壊後、長く経済が低迷し、この30年間で給与は上がっておらず、平均賃金はOECD加盟国のなかで下位に甘んじています。かつて世界第二位の経済大国だった日本はなぜことように没落したのでしょうか。第二次世界戦の敗戦にもかかわらず、産業インフラはそれほど損傷しなかったので早く復興しました。池田勇人内閣の租特倍増計画で所得に焦点をあてたことで労働者と企業が協調(雇用は守る、ストライキしない)、高度経済成長を達成しました。
 1ドル=360円の固定為替レートで人件費も安かったので高品質低価格の日本製品は世界中で競争力を持ち、輸出攻勢で米国は対日貿易赤字が拡大しました。日本は余ったお金で欧米の不動産などを買収、脅威を感じた米国は日米構造協議を持ち掛け、日本をけん制しました。米国に逆らえない日本は総額630兆円というGDPを超える公共投資を約束させられ、衰退していきました。教育や福祉、先端事業への投資をせず、公共事業のみへの投資は癒着を生むだけでした。
 日米構造協議で約束した総量規制という、銀行が企業に貸すお金に制限を設ける制度でバブルは崩壊し、大不況下で非正規雇用が増えました。同時に2000年代から給与の低さによる頭脳流出で中国や韓国に人材が流れ、電機産業は中韓が日本を追い越すことになりました。給与が上がらず、若い人は結婚できず、人口減少の時代となりました。給与が低いままなので大企業は最高益を更新、内部留保としてその利益を企業内に蓄え続けます。
 日本は景気低迷し、国内消費が縮小し、経済成長率、GDPが低下しました。格差が拡大し、貧困率も高くなっています。要は儲かった企業のお金が循環していないのが問題なのです。労働者と企業の関係が高度経済成長期の労使協調のままで労働者が声を上げることができなかったことも給与が上がらない要因です。日本経済を活性化するにはとにかくお金の循環が必要です。原油高・通貨安で物価上昇する中で個人消費は冷え込むままです。大企業の賃金、いわゆる春闘のベアが過去最高といっても、大部分を占める中小企業の統計、連合の毎月勤労統計や非正規雇用の平均時給の賃金が物価上昇率を上回り続けなければ政府の目指す賃金と物価の好循環は生まれません。日本経済を活性化するにはお金の循環が必要です。給与を上げ、日本の個人消費を活性化し、教育に投資することに尽きます。

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