【掌編小説】チーズバーガー

 フジファブリック「Cheese Burger」を聴きながら。

 なんだかいつもよりよく寝た気がするなと思った1秒後、俺は「やっべえっ」と声に出して飛び起きた。
 時計を見ると6時30分。よかった、まだ間に合う。しかし、アラームかけるのを忘れたのかな。
 とにかく急いで着替えようとして、ふともう一度デジタル時計の日付を見て手を止めた。
「ああ、なんだそうか……」
 今日は土曜日だ。休日出勤でもなく、ちゃんと休める土曜日。そりゃあアラームもかけないはずだ。しかしもうすっかり目が覚めちまった。悲しい性だな。
 部屋着に着替え直して、もう一度ベッドに仰向けに転がる。
 ろくに休めない日が続いていた。仕事から帰ってスイッチが切れたように寝て、また時間が来れば起きて出かけて。やっと休めるって週末でさえこんな調子だ。
 この先も働いてる限りずっとこのパターンなのかと思うとだんだん腹が立ってきた。
 どこか遠くに行ってやろうか。
 ダウンジャケットを羽織って、財布だけ持って車に乗り込む。どこへ行こう。一昨日入れたガソリンが尽きるぐらいまで走っていってやろうか。そのまま帰って来なかったりして。それならもうどこでもいいな。
 エンジンをかけたらラジオが流れてくる。

目覚まし時計をかけずに寝ては
昼過ぎまで寝た至福の日曜日

 なんだか気の抜けたようなギターの音と共に気の抜けたような歌が始まって、俺はヘヘッと気の抜けたように苦笑いした。羨ましいな、そんな日曜日。

チーズ とろけそうな チーズ
パンにはさんだビーフ 想像しただけで 早歩き

 なんだ、ハンバーガーのCMか。
「腹減ったな」
 ふと口に出して、そうか、俺は腹が減っているのかと気づく。
 チーズバーガー食いたくなってきた。駅前のところ……あそこ駐車場なかったな。寒いけど、まあ、歩いて行くか。
 明日こそ昼まで寝てやる。

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