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18の春。歌舞伎町。 家出をしたから卒業式には出られなかった。ネットカフェに泊まる金のために知らない男とホテルに行って、解散しようとしたときに着信がなった。スマホの画面に表示されたのは昔のメンヘラ仲間。 「もしもし、たくぞうさん?どうしたの」 「蝶ちゃん、久しぶり。久しぶりでこんなこと言いづらいんだけどさ、、」 久しぶりに聞いたたくぞうさんの声色はなんだか暗かった。 「耀一郎とつきあってたよね」 「すぐわかれたけどね」 「蝶ちゃん別れてからもずっと引きずってたし、言わなきゃと

    • 歌舞伎町家出少女、ホストクラブに行く

      自我というものが、蝶子にはほとんどなかった。ご飯をどこで食べるかと問われても、どこでもいい。友人や恋人と待ち合わせて、何がしたいかと問われても、なんでもいい。口癖は 「うん」  だった。  そこが家出少女の宿だと知ったのは、自分が家出少女だからである。歌舞伎町の完全個室のネットカフェの前で、蝶子はうずくまって電話の切れたばかりのスマートフォンを片手に涙を拭っていた。 「どうしたのお姉さーん、楽しいことして悲しいことは忘れようよ。ホストクラブ行かないー?」  上から降ってきたキ