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人生の流れのなかに


最近、引っ越した。
彼とのふたり暮らしをするために。

大好きだった街から離れ、少し離れた気になる街へやってきた。

そこは、たくさんの飲食店がある。チェーン店・個人経営問わず。
いい感じの八百屋さんもある。大きいスーパーもある。

前の街は大きなスーパーがなかったことがウィークポイントだったので、料理が好きな私は心躍った。
駅のスーパーには美味しそうなお魚も沢山売っていて、ちょっと高いけど、値引きのシールが貼られたら、それをもとに献立を立てる。

前の街のお気に入りポイントは、ちいさな本屋さんがあったこと。
それと、住んでいた部屋の向かいにお気に入りの居酒屋があった。
グランドメニューの倍くらいの「本日のおすすめ」があって、季節に合わせたおいしい料理が食べられた。
お通しも種類が豊富で美味しい。3種類盛られたお通しが、被ったことは一度もなかったように思う。


夜ちょっと疲れて帰ってきて、どこか飲みにいくか、となった。

前だったら、その家の向かいの居酒屋に行っていたのに。
気取らず、窮屈なものがなにもなく、メニュー全てが美味しそうで、そして出てくるものがおいしい場所。とっても恋しくなった。

それはさておき。


彼がパスタを食べたいと行ったので、以前何かのきっかけで妹と行ったことのあるイタリアンのお店へ。
(あれは何のお店だろう…となり食べログで調べた。私のイメージの中のイタリアンとは違ってだいぶ落ち着いているのだけど、イタリアンなのね。)

少し緊張しつつ、髪の毛も整えて向かったけど。本当に行ってよかった。
ご夫婦で営んでいるようなお店で、イマドキなんだけどあたたかくて…もちろんお料理も美味しくって、また何度も何度も行きたい。
おすすめのワインが最高で、2杯飲んだ。
ああ、誰かにプレゼントしてこの美味しさを味わって欲しいって思った。

好きなものが増えていくって、本当に幸せだ。

好きな音楽、好きな本、好きな場所、好きなお店、好きな料理。
どんどん、気心の知れた、私の場所が増えていく。


先日尾道へ行ったとき、「紙片」さんに寄った。
路地を抜けた先には本に包まれた静かな空間が広がっていて、一瞬でその場所が好きになった。

谷川俊太郎の「幸せについて」が平置きされていて、何の気無しに手をとった。
何ページかページをめくると、はらはらと、涙がこぼれてきた。

人生という流れの中に、あ、この瞬間があってよかったなって強く思う。
きっと何度もおもいだす。

些細なこと、些細な感情の動き。それを大事にしたいんだ。


今日この秋を感じる気持ちのいい日。(下書き入れっぱだったのでかなりのタイムラグです)
窓を開けて、風が入ってきてカーテンがゆらゆら揺れているのを見ていたら、ああ、このお家を選んでよかったなって思ったんだ。

りんごのチーズケーキを焼いて、その匂いをおかずにチャイを飲む。(チーズケーキは一晩冷蔵庫に入れなきゃだからね)

明日の夜ご飯のデザートに食べられることを楽しみにする。
明日の献立はどうしよう?あらかた決めていたけど、お魚に値引きシール、貼られていないかな。


2023.9


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