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なにも知らない


山手線から千代田線に乗り換えるなら、有楽町から日比谷を目指すよりも、東京から二重橋前へ歩くことが好きだ。

丸の内仲通りはキラキラしている。

金曜日の夜は、22時過ぎでもスーツの男女が横に並びながら歩いている。

暑すぎる毎日、金曜のテラス席で解放されたポロシャツを着た若い男性たちが、おしゃれなビールを瓶のまま飲んで語らっている。

わたしもそんな風になりたかった。
キッチリとスーツを着て、きっと自分にしかない何かを持って、社会を動かしていたい、って思ってた。

わたしにないものを持っている人たち。
わたしにないものってなんだろう。
でも、確実にそう思う。

もし、私があの時こうしていたら、って思うことが何度もある。

小さな頃から、地頭は良かったと思う。
そして、人から怒られないことが私が楽に生きる術だった。

中学までは、授業をきちんと受けて提出物を出していれば、学年で10位以内の成績を取ることは容易くできた。そう、中学までは。

高校になったら、努力が必要になった。
いつものノリで臨んだ初めての定期テストは散々な結果で唖然とした。
でも、そこで、ひたすらに努力することを選べなかった。

大学受験も、滑り止めに行った。
サークル活動やアルバイトが楽しくて忙しくて、未来のことなんて考えられない、なんて。就活も真面目に取り組まなかった。

だって、だれも、怒らない。


まわりと比べて、タラレバ言って、そんなふうにただ時間が過ぎるのを、あっと気づいた時に後悔するのはもうやめたい。

わたしも、わたしの人生に自信をもちたい。


きっともしかしたら、こんなもんか、こんなもんなんだって、満足しているのかもしれないな。

でも、自ら、わたしがなりたかったもの、なりたかったひとたちを見て、自分を傷つけることをやめられない。

そっか、わたし、傷ついているのか。


時間は止まってくれない、もう自分の後ろを見たり横を見たりして、立ち止まるのはやめたい。
前を向いて歩きたい。

2022.8

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