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まるで清涼剤!癒しドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』の感想&考察を綴る

2022年夏の癒しドラマ、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』を完走。

ここでは、ドラマの感想&考察を綴ってみたいと思う。


1.愛すべきウ・ヨンウの成長に癒される

ウ・ヨンウ。
韓国初の自閉スペクトラム症弁護士であり、韓国の最高学府ソウル大ロースクールを主席で卒業した天才。
キンパをこよなく愛し、クジラを語らせたら右に出るものはいない。
ユニークの塊、それが彼女だ。


そして、そのユニークさゆえに様々な壁にぶち当たる。同調圧力が強い東アジア文化圏において、「人と違う」ことは生きづらさに直結してしまうのだ。

それでも、他の追随を許さない明晰な頭脳を武器に、ヨンウは周囲に認められていくという展開。


そしてそれは、彼女を取り巻く善良な人たちの支えがあってこそ。
ヨンウを誰よりも愛する父はもちろん、親友のグラミ、理解ある上司チョン弁護士、ロースクール時代の同期で同僚の「春の日差し」ことスヨン、そしてヨンウに「恋」という新しい扉を開かせた、ヨンウのサポーター、訟務チームのジュノ。

この善き人々と、水戸黄門的な「ヨンウのひらめき(爽やかな風と共に)」のコラボレーションが、このドラマをほっこり度満点の癒しドラマに仕上げている。


さて、私は自閉スペクトラム症の方に出会ったことがなく、ヨンウのようなふるまい(歩き方や話し方)が、その症状を持つ方々特有のものなのかどうかの知識は持ち合わせていない。

でも、ヨンウの動きや表情、無意識に出てしまうオウム返しなど、それらすべてが愛おしかった。そしてそれこそが、ヨンウを愛さずにいられない大きな要素となっていることは間違いなく、「もっとウ・ヨンウを見たい」という、視聴者の素直な欲求に直結。結果、このドラマの人気を押し上げたのだと思う。
ヨンウを演じたパク・ウンビンの演技の賜物。。

さて、この物語の主題は、ウ・ヨンウの成長物語だ。

彼女は周囲の人を巻き込み&支えられ、社会の荒波を渡っていく。
自身の個性を活かしつつ、一歩づつ前に進むヨンウの姿は、ゆるやかにそしてジワジワと感動を呼ぶ。

個人的には最終回のラストシーンが秀逸だと思っている。
それは、ヨンウが回転扉を一人で突破するシーン。

裁判に勝って賞賛されるとか、弁論が素晴らしいとかそういう華々しさのある成長ではなく、ちょっとした進歩。これがめちゃくちゃヨイ!

人は小さな成功を積み重ねていくことで成長していくものだけど、それが本人にとって価値ある成功であれば(たとえ他者にとってすごく些細なことだとしても)、その達成感は大きい。
できなかったことができるようになること。
その喜びをヨンウが感じた瞬間、私も一緒になって爽快な気分を味わった。

つまり、このドラマに癒されるのは、こういう小さな喜びを視聴者が素直に共有できるから。それはヨンウのキャラクターが秀逸だからこそなせる技。

何はともあれ、愛すべきヒロイン、ヨンウの成長、それを見守ることで視聴者は癒されるであった。


2.見守り男、イ・ジュノの功績

さて、ヨンウ以外で視聴者を癒した功労者は間違いないく、イ・ジュノ。

心優しく溢れんばかりの他愛精神を持つ男。おまけにイケメンで誠実とくれば、視聴者が惹かれないワケがない。

ジュノは訟務チームの職員として弁護士であるヨンウを支える立場にあるが、その関係が、プライベートまで発展していくという展開。

そもそもだけど、ロマンティックコメディで視聴者が惹かれるヒロインの相手役といえば「守ってくれる男」が王道だろう。昨今はツンデレ系に萌える傾向にあるけど、その基本にあるのも「女を守る男」であり、それはある意味普遍的な要素とも言える。

ジュノももちろん、その基本をしっかり備えている。が、彼がよくある「守ってくれる男」と違うのは、その表現がかなりソフトだということだ。
というより、ほとんどの場面において「男らしさ」的なものをアピールしない。

たとえば、パニックを起こしたヨンウを落ち着かせるためにバックハグをするに至っても、ヨンウに「もっと強く!」と要求され、慌ててそれに従うという感じ。

仕事における彼らの立場や関係性がそのまま移行しているとも言えるけど、とにかく、守ると言ってもジュノの場合「見守り」がメイン。そして、それこそがこのドラマの萌えポイントでもあるのだ。

懸命に前に進もうとするヒロインを支え、見守る。

このスタイルがウケるのだと思う。


事実、私もジュノの笑顔と、ヨンウを見守る底無しの優しさにググっときたワケで。

ヨンウとジュノ、彼らの不器用ながらも純粋な恋を、視聴者としてずっと見守っていたい・・・。そう切望したのであった。



そして、彼らの恋のハッピーエンディングもステキ。
大袈裟さがなくて、とても好感が持てるのだ。

ジュノに孤独を感じさせてしまうのではないかと懸念する、ヨンウの健気さはせつないが、それを知ったジュノの言葉がイケている。

彼は、ヨンウに対する想いを「猫に片想い」と表現するのだ。
それに対し、「猫も飼い主を愛しています」と返すセンスの良さたるや!
思わず唸ってしまったではないか。(脚本家に拍手👏)

ともあれ、見守り男、イ・ジュノにはガッツリ癒され満足度が急上昇⤴️

ありがとう、イ・ジュノ、そしてカン・テオ!


3. 愛すべき脇役たちに愛をこめて

ヨンウとジュノというメインキャスト以外に、個人的に印象に残った登場人物について綴りたい。

まずは、物語のスパイスとして投入された、腹黒弁護士クォン・ミヌ。
クォン弁護士を演じたチュ・ジョンヒョクは『D.P.』や『ユミの細胞たち』でもみかけたけど、このドラマでの存在感は格別。
彼はきっと悪役も善良な人もそつなくこなす、かなりの演技派だと思う。

クォン弁護士は『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』に流れる緩い空気を、適切なタイミングでキュッと引き締める、ある意味キーパーソンでもあった。
そんな彼が、物語終盤では(予定調和感は否めないものの)良い人の仲間入り&良いイメージで着地したのは嬉し。

そして、「春の日差し」こと、スヨン。
彼女を演じたハ・ユンギョンは『賢い医師生活』でソンファの後輩としてお馴染みだが、このドラマにおける彼女の存在は、まさに安定の「春の日差し」。
姉の如くヨンウを支える彼女のクセのなさは、ヨンウのユニークさを際立たせるのに効果絶大で、なくてはならないキャラクターだったと思う。

最後に、このドラマで最も注目を集めていた脇役といえば、ヨンウの良き上司、チョン弁護士を演じたカン・ギヨン。薄いお顔立ちとほっそりとしたスタイルの彼は、妙にスーツが似合っていて、立ち姿も美しい。
チョン弁護士の「現実と理想のバランスの取り方」は絶妙で、「ヨンウの世界」と「ヨンウ以外の世界」を結ぶかけ橋としての役割を存分に果たした。


そして、脇役ではないけれど、エピソード9「笛吹き男」では、今をときめくク・ギョファンが、未成年者略取誘拐の被告人としてカメオ出演!

彼が演じた「おならプー」という意味のパン・グボンは、ユニークな思想のために生きづらさを抱えているという設定で、これは、ヨンウの状況と重なる部分がある。

このエピソードはややおとなしめな内容だったけど、彼の存在感は圧倒的。社会問題をさりげなく取り入れるこのドラマのスタイルにマッチしつつ、物語の持つほんわかムードを損なわない、最高のカメオだった。


4.最後に、少し辛口、ツッコミどころを少々・・・

さてここで、好きなドラマだからこそ、少々辛口なツッコミを。

声を大にして言いたいのは、ヨンウの出生の秘密。
正直、テ・スミがヨンウを生み捨てた経緯はいくらなんでも苦しすぎた。。
どんなにヨンウの父が善良だとしても、自身の将来設計よりも感情に流され、子供を産んでくれと懇願するのは微妙。そして、テ・スミともあろうものが、自分が産んだ娘のその後をウォッチしていないとは考えにくい。そもそもテ・スミの置かれた環境を考えれば、恋人にどんなに頼まれたとしても、産まないだろうと思ってしまう。

そしてもう一人。微妙な立ち位置だったのがハンバダの代表。
悪役にも善き人にもなりきれず、中途半端な印象が否めず。
どうせなら悪役に振り切ってほしかったけど、このドラマが持つのほっこりさを保ちつつ、「政界進出を狙うライバルを潰す」というドロドロの要素を、バランスよく着陸させるためには致し方なしというところか。

最後のツッコミどころは、チョン弁護士のガン発覚。
これは要らなかったなぁ。。個人的にはこの展開には冷めてしまった。
それでも、チョン弁護士がハンバダを辞め、個人事務所でも設立し、ヨンウがチョン弁護士の事務所で働くことになるとか、彼が病気になる必然性がある展開が用意されていたなら納得できた。

でも、そうはならず。
とにかく、エピソード消化のためのエピソードという感じがして、やや残念。
(個人的にはこのドラマは12話くらいで終わってよかったと思っている)


と、ブツブツ言ってみたけれど、このドラマに癒されたのは間違いなく。
だって、最終回ではほんのり泣いてしまったよ。


そして、『逆から読んでも、ウヨンウ、キツツキ、トマト、スイス、子猫、南、ウヨンウ』をもう一度聴きたい。

1話完結系ドラマだし、シーズン2もイケるんじゃないかしら?どうかしら?


何はともあれ、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』は、2022年の暑い夏を清涼剤のようなドラマ。

クジラと共に、「癒し」と「涼」をありがとう〜。



*主演のパク・ウンビン出演の大ヒットドラマ『ストーブ・リーグ』についてブログ書いてます。


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