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映画・ドラマのレビュー

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映画・ドラマ・ドキュメンタリーなど鑑賞した映像のレビューと、作品から感じたことを綴ります。(ネタバレあります)
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#映画

心揺さぶられた映画で振り返る2021

2021年、心揺さぶられる作品にたくさん出会った。 劇場で観た作品はそれほど多くはないけれど、去年に比べたら映画館に足を運べたと思う。 さて、12月29日の時点で、動画配信サービス+劇場で98作品鑑賞。 せっかくなので、年末までにあと2作品、合計100作品まで観るつもり。 そして2021年も残りわずか。 総括として、今年鑑賞した映画のうち、特に心揺さぶられた作品について記録しておこうと思う。 *以降、紹介するすべての過去記事はネタバレ含みます。これからこれらの映画をご

アラフォー女、仕事と恋と人生と 『恋愛ワードを入力してください』

「恋愛ワードを入力してください〜Search WWW〜」を完走。 「日本語タイトル、どうなのよ」とツッコミを入れてたくなるところはさておき、ドラマはめちゃめちゃ面白い。 38歳の非婚主義バリキャリ、ぺ・タミ(イム・スジョン)を中心とした、お仕事ドラマであると同時に、年下男とのロマンスにときめく。 個人的にはかなり共感性の高い作品だった。 ということで、ドラマの余韻を忘れないうちに「恋愛ワードを入力してください〜Search WWW〜」について感想を綴っておく。 1.ペ

『イカゲーム』登場人物たちが "守りたかったもの" についての考察

Netflix配信ドラマ「イカゲーム」を完走。 鑑賞後、劇中で繰り広げられる「ゲーム」の参加者について、様々な感情を抱いた。 彼らの共通点は、人生の崖っぷちにいること、そして多額の借金を抱えるなど金銭的な問題を抱えていることだ。 そして、追い詰められた彼らには、デスゲームへの参加しか選択肢が残されていない。 それは、「死ぬかもしれないという恐怖」と「大金を手に入れ人生をリセットしたいという欲望」のせめぎ合いに身を投じることであり、それこそがこの物語の骨格にもなっている。

『賢い医師生活2』Ep5にみる、それぞれの日常

毎週のお楽しみ「賢い医師生活2」。 今回はEp5でフォーカスされた登場人物たちの日常について綴ろうと思う。 1.母の支配から抜けきれないソッキョンの日常Ep5では、ソッキョンの離婚についてはじめて詳細に描かれた。 薄々わかってはいたけれど、ソッキョンの母親はいわゆる毒親的な存在で、それが離婚の原因。 これ、かなり重たい現実なわけだけど、「賢い医師生活」ではそれを深刻には描かない。 そんな母がいることもソッキョンにとっては日常だからだ。 そして彼はそのことに対し、ある種の諦

韓国ドラマ『mine』から見る価値観の変化-「女の敵は女」はもう古い

かつての韓国ドラマといえば、財閥もの、記憶喪失、不治の病などなど、「これでもか!」と言いたくなるようなわかりやすい障害や葛藤が盛り込まれた、劇的展開がお家芸だった。 しかし韓国ドラマは進化した。 劇的な展開の物語は多数あれど、ありきたりな障害や葛藤が安易に使われること滅多になくなった。素晴らしきクオリティの作品が数多く配信され、韓国ドラマは、今やグローバルコンテンツとして確固たる地位を築いてる。 のはずなのだが、最近完走した「mine」はかつての韓国ドラマを彷彿とさせる内

ツンデレなのに「ツン」が弱い、愛すべき男ジュンワンー『賢い医師生活2』Ep4

今週、「賢い医師生活シリーズ」とキャストが被る「刑務所のルールブック」を完走した。 この「刑務所のルールブック」ではチョン・ギョンホが重要な役どころで出演している。加えて「賢い医師生活2(Ep4)」がジュンワンにフォーカスした内容だったことも相まり、チョン・ギョンホを堪能した一週間となった。 ということで、今週の「賢い医師生活2」はジュンワンのエピソードを中心に、思うところを綴ってみたい。 1. ジュンワンの気持ちになりきり、かなり切ないEp4Ep3のラストでジュンワン

『ムーブ・トゥ・ヘブン』 命が終わる時、人は何を残したいと思うのか

第一話から「絶対いい話になるだろう」と予感させ、実際にいい話が展開される韓国ドラマ「ムーブ・トゥ・ヘブン」。サブタイトルでもある「私は遺品整理士です」からも想像がつくように、亡くなった人の人生を辿る物語だ。 遺品整理士としてドラマを牽引するのはアスペルガー症候群のハン・グルとその叔父であるチョ・サング。 サングはグルの父、すなわち自身の兄であるハン・ジョンウに対し恨みを抱いていた。が、ジョンウの死をきっかけに図らずもグルの後見人となり、グルと遺品整理の仕事を請け負うことに

韓国ドラマ『ボーイフレンド』からみる純愛ドラマと年下の男

韓国ドラマ「ボーイフレンド」を完走。 パク・ボゴムの笑顔が見たい一心で一気観したこの作品、よくある純愛ドラマといえばそうなのだけど、主人公たちの気持ちが丁寧に描かれていること、そして主演のソン・ヘギョ、パク・ボゴムの演技が素晴らしく、見応えのある優しい作品に仕上がっている。 じわじわと泣いたこの作品、流した涙と共に溢れた感情を忘れぬうちに、感想を綴っておこうと思う。 1.女にとっての理想の年下男像とはソン・ヘギョ演じるチャ・スヒョンは政治家の娘として常に世間の注目に晒さ

「今」という時間の価値について『ナビレラーそれでも蝶は舞う』

Netflixで配信されている韓国ドラマ「ナビレラ-それでも蝶は舞う」を完走。 全16話と思い込んで観ていたら全12話だったので心の準備なく最終回を迎えてしまった。 ともあれ、とにかく泣いた。特に最終回。 先日「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」で号泣したばかりの私だけど、「ナビレラ-それでも蝶は舞う」でも激しく感情を揺さぶられ涙が止まらなかった。 このドラマは、スランプに陥っている23歳のバレエダンサー イ・チェロクと、バレエへの憧れを捨てきれず70歳にしてバレ

2021年春ドラマを真剣に見ているーおすすめドラマ(その2)

韓国ドラマ沼にどっぷり浸かったままだけど、2021年春の国内ドラマを真剣に見ている今日この頃。 『2021年春ドラマを真剣に見ることにしたーおすすめドラマ(その1)』に続き、『2021年春ドラマを真剣に見ているーおすすめドラマ(その2)』を書いてみたい。 ということで早速、前回記事以降に放送がスタートしたドラマの中から、オススメ作品を探すべく、Tverをフル活用してチェックしてみた。 それにしても、昨今は深夜ドラマが花盛り。 特に土曜日の深夜は凄まじい。まさに「ドラマの

『マイ・ディア・ミスター 私のおじさん』 断ち切るべき罪悪感について

ずっと気になっていた韓国ドラマ「マイ・ディア・ミスター 私のおじさん」をようやく完走。 このドラマは心優しい中年男、パク・ドンフンと、彼の部下である派遣社員の女、イ・ジアンを中心に繰り広げられる。 物語前半は、ジアンのドンフンに対する酷い仕打ちにヤキモキして、一視聴者として気持ちが落ち着かなかった。 でも、二人の心がかよい始めるにつれ、ずっと泣きっぱなし。 深く心に刺さる作品だった。 登場人物それぞれが抱えている傷や生きづらさを丁寧に描いたこのドラマには、「幸せになるこ

2021年春ドラマを真剣に見ることにしたーおすすめドラマ(その1)

昨年「愛の不時着」を観て以来、韓国ドラマの世界にどっぷりハマっていた私。 その影響で国内ドラマはとんとご無沙汰だった。 とはいえ、昔からドラマは大好きで、新しいクールが始まるととりあえず全てのドラマをチェックしていたほど。でも、いつしか国内ドラマを面白いと感じなくなりそれも止めてしまった。直近(と言っても数年前)オンエアで視聴した連ドラは「凪のお暇」「おっさんずラブ1」くらいだと思う。 でも、せっかく韓国ドラマ沼をきっかけにドラマ熱が再燃しているで、国内ドラマに回帰してみ

映画『スウィング・キッズ』ーそして自由の価値を知る

昨年公開になった韓国映画「スウィング・キッズ」をようやく鑑賞。 映画「フラガール」的な展開になるのかと思いきや、着地点は全く別の場所だった。 2時間を優に超えるこの作品の鑑賞後、なんとも言葉にできない感情が渦巻き、いつもはブチっと切ってしまうエンドロールまで観終えてもなお、余韻に浸っていた。 1.映画「スウィング・キッズ」の背景にあるもの物語は1951年朝鮮戦争下、捕虜を収容した韓国巨済島捕虜収容所を舞台に繰り広げられる。そこに収容されているのはアメリカ的自由主義思想に染

私は私であることから逃げられない-映画『私をくいとめて』

昨年末に観損ねた「私をくいとめて」が早くもAmazon Primeにやってきた。 主人公、黒田みつ子は31歳・恋人なしの一人暮らし。 気楽なおひとりさま生活を楽しんでいるが、脳内にいるもう一人の自分「A」との会話が心の支え。「A」はみつ子の精神安定剤的な役割を果たしている。 そんなみつ子が近所に住む取引先の年下男に恋をする。 恋人は欲しいけど、今の生活もそこそこ快適。 ゆらゆら揺れる三十路女の心情が、脳内「A」との会話と共に、コミカルに描かれるのがこの作品。 1. 誰か