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映画・ドラマのレビュー

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映画・ドラマ・ドキュメンタリーなど鑑賞した映像のレビューと、作品から感じたことを綴ります。(ネタバレあります)
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#映画感想

イ・ジェフン主演_韓国映画「BLEAK NIGHT 番人」考察 -もつれた糸が切れた時-

イ・ジェフン主演映画、『BLEAK NIGHT 番人」の感想を綴りたい。 イ・ジェフンとパク・ジョンミンという今では贅沢なキャストが、2010年のインディーズ作品で見られるのは嬉しい限り。 この記事はネタバレありです。映画の見どころだけご覧になりたい場合は、以下の記事をご参照ください。 ギテの心の叫びとは 「ちょっとしたすれ違い」の積み重ねが人間関係を壊すことがある。 適切なタイミングで話し合えば解決できたことでも、誤解や言葉足らずによって修復不可能になってしまう。

心揺さぶられた映画で振り返る2021

2021年、心揺さぶられる作品にたくさん出会った。 劇場で観た作品はそれほど多くはないけれど、去年に比べたら映画館に足を運べたと思う。 さて、12月29日の時点で、動画配信サービス+劇場で98作品鑑賞。 せっかくなので、年末までにあと2作品、合計100作品まで観るつもり。 そして2021年も残りわずか。 総括として、今年鑑賞した映画のうち、特に心揺さぶられた作品について記録しておこうと思う。 *以降、紹介するすべての過去記事はネタバレ含みます。これからこれらの映画をご

韓国ドラマ『mine』から見る価値観の変化-「女の敵は女」はもう古い

かつての韓国ドラマといえば、財閥もの、記憶喪失、不治の病などなど、「これでもか!」と言いたくなるようなわかりやすい障害や葛藤が盛り込まれた、劇的展開がお家芸だった。 しかし韓国ドラマは進化した。 劇的な展開の物語は多数あれど、ありきたりな障害や葛藤が安易に使われること滅多になくなった。素晴らしきクオリティの作品が数多く配信され、韓国ドラマは、今やグローバルコンテンツとして確固たる地位を築いてる。 のはずなのだが、最近完走した「mine」はかつての韓国ドラマを彷彿とさせる内

ツンデレなのに「ツン」が弱い、愛すべき男ジュンワンー『賢い医師生活2』Ep4

今週、「賢い医師生活シリーズ」とキャストが被る「刑務所のルールブック」を完走した。 この「刑務所のルールブック」ではチョン・ギョンホが重要な役どころで出演している。加えて「賢い医師生活2(Ep4)」がジュンワンにフォーカスした内容だったことも相まり、チョン・ギョンホを堪能した一週間となった。 ということで、今週の「賢い医師生活2」はジュンワンのエピソードを中心に、思うところを綴ってみたい。 1. ジュンワンの気持ちになりきり、かなり切ないEp4Ep3のラストでジュンワン

『賢い医師生活2』Ep3ー日常の一部としての病院。そして、描写についての考察

「賢い医師生活」シーズン2が始まり、楽しみが増えた今日この頃。 いつもは「ドラマ完走」→「noteに書く」という流れなのだけど、完走前に書きたくなってしまうのもこのドラマならでは。 物語の連続性はもちろんなのだが、それよりも1話1話が丁寧に作られていて、つまりは、1話だけでも満足できる内容だからかも。 何はともあれ、エピソード3について思うところを綴ってみたい。 1.「日常の一部としての病院」が描かれているエピソード3は1時間36分と長め。 今回は主人公の5人組の話より

癒されたい時に効くドラマ『それでも僕らは走り続ける』

遅ればせながら「それでも僕らは走り続ける」を完走。 4月の終わり頃から精神的に参ってしまうことが次々と発生し、お疲れモードだった私の心を癒す作品だった。 この作品が癒しをもたらすのは「いい人たちによる優しい物語」だからだと思う。 劇的に展開するドラマも刺激的でいいけれど、私にとっては(特に今の私にとっては)「癒し」もドラマを観る重要なモチベーションのひとつ。 ひと時の癒しを得るために、せっせとエピソードを観進めた。 1.母性本能をくすぐるソンギョムの「キョトン顔」こ

『ムーブ・トゥ・ヘブン』 命が終わる時、人は何を残したいと思うのか

第一話から「絶対いい話になるだろう」と予感させ、実際にいい話が展開される韓国ドラマ「ムーブ・トゥ・ヘブン」。サブタイトルでもある「私は遺品整理士です」からも想像がつくように、亡くなった人の人生を辿る物語だ。 遺品整理士としてドラマを牽引するのはアスペルガー症候群のハン・グルとその叔父であるチョ・サング。 サングはグルの父、すなわち自身の兄であるハン・ジョンウに対し恨みを抱いていた。が、ジョンウの死をきっかけに図らずもグルの後見人となり、グルと遺品整理の仕事を請け負うことに

韓国ドラマ『ボーイフレンド』からみる純愛ドラマと年下の男

韓国ドラマ「ボーイフレンド」を完走。 パク・ボゴムの笑顔が見たい一心で一気観したこの作品、よくある純愛ドラマといえばそうなのだけど、主人公たちの気持ちが丁寧に描かれていること、そして主演のソン・ヘギョ、パク・ボゴムの演技が素晴らしく、見応えのある優しい作品に仕上がっている。 じわじわと泣いたこの作品、流した涙と共に溢れた感情を忘れぬうちに、感想を綴っておこうと思う。 1.女にとっての理想の年下男像とはソン・ヘギョ演じるチャ・スヒョンは政治家の娘として常に世間の注目に晒さ

「今」という時間の価値について『ナビレラーそれでも蝶は舞う』

Netflixで配信されている韓国ドラマ「ナビレラ-それでも蝶は舞う」を完走。 全16話と思い込んで観ていたら全12話だったので心の準備なく最終回を迎えてしまった。 ともあれ、とにかく泣いた。特に最終回。 先日「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」で号泣したばかりの私だけど、「ナビレラ-それでも蝶は舞う」でも激しく感情を揺さぶられ涙が止まらなかった。 このドラマは、スランプに陥っている23歳のバレエダンサー イ・チェロクと、バレエへの憧れを捨てきれず70歳にしてバレ

映画『スウィング・キッズ』ーそして自由の価値を知る

昨年公開になった韓国映画「スウィング・キッズ」をようやく鑑賞。 映画「フラガール」的な展開になるのかと思いきや、着地点は全く別の場所だった。 2時間を優に超えるこの作品の鑑賞後、なんとも言葉にできない感情が渦巻き、いつもはブチっと切ってしまうエンドロールまで観終えてもなお、余韻に浸っていた。 1.映画「スウィング・キッズ」の背景にあるもの物語は1951年朝鮮戦争下、捕虜を収容した韓国巨済島捕虜収容所を舞台に繰り広げられる。そこに収容されているのはアメリカ的自由主義思想に染

私は私であることから逃げられない-映画『私をくいとめて』

昨年末に観損ねた「私をくいとめて」が早くもAmazon Primeにやってきた。 主人公、黒田みつ子は31歳・恋人なしの一人暮らし。 気楽なおひとりさま生活を楽しんでいるが、脳内にいるもう一人の自分「A」との会話が心の支え。「A」はみつ子の精神安定剤的な役割を果たしている。 そんなみつ子が近所に住む取引先の年下男に恋をする。 恋人は欲しいけど、今の生活もそこそこ快適。 ゆらゆら揺れる三十路女の心情が、脳内「A」との会話と共に、コミカルに描かれるのがこの作品。 1. 誰か

自分の道は自分で切り開くー映画『あのこは貴族』

映画「あのこは貴族」を鑑賞した。 東京松濤で暮らすお嬢様華子と、上京し苦労しながら生きる美紀。 「あのこは貴族」は、この二人の人生を軸に展開する静かな物語だ。 1. 華子 ー 求めていたのは壁の内側で生きることではなかった箱入り娘の華子は東京で生まれ育ちながら、ある意味東京を知らない。 なぜなら彼女の生きている世界はとても狭く、まさに箱の中だから。 華子は親や家族の言いつけを守り、良き伴侶を見つけ結婚することこそが人生の幸せだと信じている。周りの友人も同じような価値観の人

「誰にも私の未来はわからない。私にさえも」ー映画『野球少女』

映画「野球少女」を観た。 女性の社会進出において「ガラスの天井」というたとえがよく使われる。 この物語はまさにその天井を突き破ろうと進む少女の話だ。 また、諦めないことの意味と力について考えさせられる作品でもあった。 私はと言えば、主人公チュ・スイン(イ・ジュヨン)にどっぷり感情移入してしまい、映画を見ながら涙が止まらなかった。 1. 誰であろうと私の未来はわからない前例のないことに挑むのは勇気がいる。 人に理解されないだけでなく、ひどい時には笑われたり馬鹿にされたり、

生きていくためには居場所がなければー映画『すばらしき世界』

西川美和監督の「すばらしき世界」を鑑賞。 鑑賞後なんとも言葉にできない感情が胸の中に渦巻き、気持ちの整理がつかなかった。 とにかく、心揺さぶるすごい作品なのだ。 この心の揺れを忘れないうちに映画を観て感じたことを綴っておきたいと思う。 1. 不寛容な社会と生きるための居場所について 「人生のレールを踏み外した男が見た世界とは」 このキャッチフレーズ通り、レールを踏み外した男「三上正夫」が見た世界と、挫折を味わいながらも懸命にもがき生きる彼の姿を描いたのがこの作品。