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映画・ドラマのレビュー

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映画・ドラマ・ドキュメンタリーなど鑑賞した映像のレビューと、作品から感じたことを綴ります。(ネタバレあります)
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2020年10月の記事一覧

『アルハンブラ宮殿の思い出』 2周目にして思うこと

 「アルハンブラ宮殿の思い出」2周目を完走。 この作品はARの世界と現実の世界が交錯する複雑な物語。 とてもチャレンジングな作品だ。 加えて、ヒョンビン演じる主人公が輝かしい場所から転げ落ちていく過程が描かれること、またハッピーエンドではないところも、これまで見てきた彼の主演ドラマとは一線を画している。 それが観了後の余韻になるとも言えるし、消化不良になるとも言える。 つまるところ、人によって感じ方が大きく分かれるドラマだと思う。 ここでは、「アルハンブラ宮殿の思い出

「リ・ジョンヒョクへの想い」半年後の熟成度ー『愛の不時着』

「愛の不時着」に出会ってから、もう直ぐ半年が経とうとしている。 このドラマを完走してからしばらくは、ほぼ毎日欠かさずリ・ジョンヒョクに会いに行っていた私。 そこから韓国ドラマの世界へ足を踏み入れ、たくさんのドラマを鑑賞した。 そして原点に帰るべく、先日久々に通しで「愛の不時着」を鑑賞してみた。 ここでは、そこで感じたリ・ジョンヒョクへの想いを綴ってみる。 1. なぜ リ・ジョンヒョクに何度も会いたくなるのか以前「なぜ リ・ジョンヒョクに何度も会いたくなるのか」というタ

K-POPの世界を覗くーNetflixオリジナル『BLACKPINK ライトアップ・ザ・スカイ』

すごいものを観てしまった。 Netflixで配信中の、韓国人気ガールズ・グループBLACKPINKのドキュメンタリー映画「BLACKPINK ライトアップ・ザ・スカイ」を鑑賞。 数ヶ月前にやっと韓国ドラマデビューを果たした私にとって、K-POPは未知の世界。昨今巷で話題になっているのは知っていたが、あえて聴いてみようとは思わず、つまりこのドキュメンタリーが私にとっての(ほぼ初)K-POP体験となった。 まず驚いたのが彼女たちのパフォーマンスの完成度の高さ。 彼女たちが歌

配られたカードで勝負するしかないー『ミセン-未生』からみる組織と人

U-Nextで韓国ドラマ「ミセン-未生」を完走。 会社員経験のある人なら誰もが共感するエピソードがふんだんに盛り込まれた物語だ。たとえば、社内不正、パワハラ、セクハラ、非正規雇用、社内政治、社内派閥、出世競争など様々な問題や出来事が描かれる。 また、主人公である新入社員チャン・グレの苦悩と奮闘、上司オ・サンシクの中間管理職としての戦い、チャン・グレの同期たちそれぞれの悩み・葛藤には感情移入せずにはいられない。 ところで「ミセン」は日本のドラマかと見紛うほど、韓国ドラマで

「私にとって写真とは何か」を考えるー『浅田家!』を観て

映画「浅田家!」を観た。 写真とは長い付き合いの私にとって、この作品は映画として楽しんだだけでなく、写真について考える良い機会となった。 私にはかつて、写真を真剣に学んでいた時期がある。 その経験を生かし現在もカメラマンとして仕事をすることもある。 そんな私がこの映画を観ながら考えたことは「私にとって写真とは何なのか」という根本的な問いだった。 映画の主人公である浅田政志(二宮和也)が、自分のスタイルを確立するきっかけになったのは、写真学校の卒業製作のお題「もし1度きり

『82年生まれ、キム・ジヨン』 自分が主役の人生を生きるために

映画「82年生まれ、キム・ジヨン」を観た。 泣いた。 とにかく涙が止まらなかった。 今まで心の奥底に封印していたあれこれが映画を観て一気に吹き出したような感覚だった。 映画「82年生まれ、キム・ジヨン」は、韓国作家チョ・ナムジュの同名小説が原作。小説が大ヒットしたことで映画化された作品だ。 この映画は公開前からすごく楽しみにしていたので、台風前の悪天候にも負けず、仕事を早々に切り上げ公開初日に映画館へ足を運んだ。 *以下、ネタバレ含みますのでご注意ください。 1.

チャン・デヒあってこその『梨泰院クラス』ー悪役がドラマの質を左右する

韓国ドラマ「梨泰院クラス」を完走したのは8月半ば。 夏真っ只中だったあの頃から早2ヶ月。 季節は変わり、秋の夜長に「梨泰院クラス」を再観することに。 そして、ドラマ2周目にしてつくづく感じたのが悪役の方々(長家の親子)の演技の素晴らしさ。 前回はオ・スアを中心にドラマの感想をnoteに書いたが、今回は長家の会長であるチャン・デヒとその息子チャン・グンウォンに焦点を当ててみたい。 1. チャン・デヒという男について長家の会長チャン・デヒは、一代で会社を国内外食産業トップに

『ミッドナイトスワン』 なりたい自分との距離が生む苦悩

2020年/日本 監督:内田英治  出演:草彅剛・服部樹咲 「ミッドナイトスワン」 哀しみと希望、そしてせつなさが入り混じる作品だった。 あらすじは以下のとおり。 トランスジェンダーの凪沙はニューハーフクラブで働きながら孤独に生きている。そんなある日、従姉妹に虐待されて育った彼女の娘「一果」を一時的に預かることになる。はじめは相容れない二人だが、バレエに興味を示す一果とそれを支える凪沙の間に、信頼関係と温かな感情が芽生え始める。 社会的マイノリティという孤独凪沙(草彅