「寒い国から帰ってきたスパイ」(本の方)感想

自創作キャラに、過去にスパイの真似事をさせられた津本コウという人物が出てくるので、それの参考にと、以前からお世話になっている先輩に薦められてメモしてあったので、これからそのキャラが出て来る漫画の続きを描いていく参考に出来ればと思って読んでみました。リアルで面白く、しかし予想していた通り、かなり難解な部分も多かったです。

一度読み終わっただけではよく分からなかった部分も多いので、買い直して、またはそのうち、再度図書館で借りて何度も読もうかな?とも思うけど頭が悪くて、何度読み返しても解らないままの部分も多そう(よくそれでミステリまがいのものを描こうとしているよねw)

なので、ネットの解説とかも後で探したいなとも思うけど、一旦それは置いといて、作品全体は素晴らしいクオリティで凄いなと思いました(語彙力)。謎解きの面と、人間的、叙情的な部分とのコントラストが良いし、作者はミステリ作家でありながら、叙情的な部分の描写も同じくらいクオリティが高い。核心に触れる部分の感想を書くとネタバレになるから書かないけど、読み終えた後、上質な映画を見終わった後のような、郷愁をもって思い出されるような、新たに創作の泉にイメージのタネが加えられたような、そんな豊かさに浸ることができます。あと余裕があれば、映画の方も観てみたい。

観たことはないのだけど元々、007などが、超人的な人間離れしたスパイを描いたもので、それへのアンチテーゼとして位置付けられているようですね。作者が実際に英国情報部を経験しているとあって、主人公が生身の人間だなぁ、でもちゃんと有能優秀、というリアルさが良いです。

読んだ人にしかわからない感想を一つ書いてしまうと(ネタバレにまではならないかな)最後の方で主要脇役となるあの二人がその後どうなったのかが気になりました、いやこれは読解力があれば予想はつくでしょ?という類のものかも知れないけど。というかこの二人の、主人公に対する立ち位置もまた難しくて自分が読み取った解釈が合ってるのかも怪しいw

それもまた置いといて、主人公の言動の描写が、序盤の方で繋がりがちぐはぐで「?」と思いながら読み進めて、終わり近くで「あ!やっぱりそうか!」ってなった時の爽快感が楽しかったです。ミステリとしてはまさに王道なんだろうな。だからそこら辺の部分はまさに古典、なんだろうけど、そういう部分は古さを逆に感じないですね。いや、他の部分にしてもそんなに古さは感じなかった、強いていうなら冷戦とか共産党とか、女性がモノ扱いされてる部分もあるとかは、時代を感じたけど。

にしても、チラ見したレビューで他の人も書いてたけど、天才同士の抜かりない騙し合いというものは、抜かりなく騙したはずのことも、抜かりなく最初から見抜かれてしまうというのが、何も手の打ちようがない詰み感や閉塞感があって怖い。40手先を読んで行動したけど、相手は50手先を読んでいた、的な。おお、うっかりするとネタバレになりかねないからこれ以上書かないけど、そいういう世界の人たちの思考や言動の軌跡を、脳足りんの私でも欠片くらいは学べるなぁという良書。実際に自創作にどのくらい反映できるのか分からないけど、読んで良かった。

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