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『窓を開けよう』~小さなエッサイ4編~

Ⅰ  冬の木
窓を開けると、ふわっと甘い香りが入ってきた。しとしとと静かに降る雨で、柔らかな香りはいっそう際立ち、気持ちを和ませる。
小さな柊(ヒイラギ)の木。その小さな小さな白い花。
周りの木々が次々と葉を落とす中、ツヤのある緑の葉は、12月が来るのを楽しみにしているようだ。

Ⅱ ここちよさ
部屋を借りるとき、「窓から緑が見えること」だけはゆずれない。もちろん、窓から木々を見たいから。
でもそれ以上に、窓を開けたとき、緑の香り、土の香りを感じたいから。
虫の声を聞きたいから。
生きている命が、すぐそばにあることが嬉しいから。

Ⅲ 受け取る
窓から入ってきた風が心地よくて、促されるままにぐーんと伸びて、深呼吸をした。今まで息を止めていたことに、はっとする。風は知っていたんだよね。

日はとっくに沈んでいるのに、窓の外はほんのり明るい。サンダルをひっかけて表に出る。まんまるの月が、「たまには上も見てね」と笑っていた。

窓からの小さな世界は、季節の移り変わりの中にある美しさを、その中に今私もいることを、いつもそっと教えてくれる。

Ⅳ とっておきの窓
これから大寒へと、寒さは日ごとに厳しくなっていく。
窓を開けるのは、少し勇気がいるときもある。
窓が、今いる場所と外と繋ぐ場だとしたら、自分だけの「とっておきの窓」を見つけておきたい。
それは料理かもしれないし、アートかもしれない。読書の人もいるし、人と話すことだという人もいるはず。
読んでくださっている皆さまは、音楽なのかな。

この冬、心をほぐし温かくする何かへ、さまざまな窓を通して出逢っていただけたら嬉しい。
窓を開けるって本当は、「換気のためにがんばって行うもの」ではないでしょ?
さぁ、『窓を開けよう』

みんなでつくる音楽祭in小平2022
ペンネーム「森のかたつむり」として
2022.12.3〜1月末まで公開

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