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蛍よ

蛍の光を見た

蛍を探しに出かけて
蛍の光を見た

車の行き交う音の聞こえる
川のほとり

ほわっと宙を舞う
黄色と緑の混ざった
ちいさな光

静かな光
音のない光
じゃましない光
切なく悲しくほのかな光

生きている光


ハンカチの中で光る蛍
こどものときの記憶が灯る


探さなくても逢えた光
手を伸ばせば触れられた光
美しいものが
どんどん減っていく

――

蛍は、街灯の届かない、静かできれいな水辺が好き。
生息できる環境は、明らかに減っている。

昨日出かけた野川(東京都)では、
1986年から地道な活動を続けた結果、2018年に復活したそうだ。


壊すことは、たやすい。
一度壊れたものは、元通りには戻せない。

大木を切ることと似ている。
心もそうではないか。
体も。
そう、平和も。

近いかたち、
新しい平穏を作りなおすのには、
果てしない時間と労力がかかる。


――

蛍を観賞する際に、
川辺の草むらには入ってはいけないそう。
ズカズカ近くに行こうとしてしまった。
水辺の土の中にいるさなぎや、
羽化したばかりだったり、
休んでいる成虫を踏みつぶしてしまうことがあるのだとか。


こどものとき、本当の目と鼻の先を飛んでいたけれど、
私はどこに立っていたのだろう。

――

逢えたのは3つの光
3つの命

限りあるものと分かっている
はかない光





蛍よ
いなくならないで

お願いだから
これからも
この川にいておくれ

助けを求める光のように
弱く強く諦めず
生きていると知らせておくれ

私が必ず見つけるから
生きていたいと光っておくれ


あぁ蛍よ
消えないで

お願いだから
いつまでも
この川にいておくれ

暗闇で握る手のように
ただ在るというそのことで
進む道を教えておくれ

進む道は生きる道だと
私に思い出させておくれ


2024.6.15  / 16


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