見出し画像

言葉の扱い方

人間は弱い生き物だ。
丸腰で何ができるだろう。

武器を、
相手を傷付け、自分を守るものとするならば、
人間の武器は”言葉“だと、私は思う。


動物行動学者のローレンツは、
オオカミの闘いにおいて、勝者のオオカミが、敗者である相手を殺すことは決してないといっている。
また、カラスは、仲間の眼をつつかないことを、自らの体験もまじえて記している(「ソロモンの指環」)。


私たちは、自分たちの持つ武器(言葉)のことを、どれほど知っているだろうか。
相手を死におとしめるほどの力があることを、自覚しているだろうか。

―――――

SNSが普及した昨今、顔も本当の名前も知らない相手に、簡単にメッセージを送ることができる。
これはすばらしいこと。

目に留まった言葉は、生身の人間が生み出したものだ。(AIが部分的に使われていたとしても、発信しているのは人。)

お気に入りの作家さんであっても、
書かれている言葉すべてが自分にぴったり合うことは、まずない。

何を心地よいと感じるか、不愉快に感じるかは、ひとりひとり違う。
全員に気分よく受け取られようと思うと、何も話せなくなってしまう。
書けなくなってしまう。

―――――

以前、チラシを作成したときに、
“大切な方とご一緒に、ぜひご覧ください”
と書いた。
「“大切な人”がいない方を傷つけるから、よくない」
とご意見をいただき、文言は変えた。

気がつかなかった。
ただ…、あれから何年も経った今でも、
“ご家族、ご友人”ではなく、
“大切な人”という言葉で書かれたものを見ると、
私は作り手の心遣いを感じる。

いつも心がけていることは、
どのような言い方をするか。
どのような書き方をするか。

「大丈夫?」も、言い方によってはキツくなる。
心配している、大切に思っている気持ちが伝わってこそ、
優しく思いやりのある言葉になる。

書かれている内容や、選んだ言葉の重みは言うまでもない。
ただそれ以上に、どのような想いでその言葉にしたか、受け取りたい。

―――――

先の「ソロモンの指環」では、以下のような衝撃の事実も書かれている。

ハト2羽を広いケージに入れ翌日見にいくと、丸裸の無惨な姿の死骸の上に、1羽が勝ち誇ったようにのっていたという(広いとはいえ、このような閉鎖環境は、自然界ではありえない)。

オオカミは、当然だが、牙を相手を殺す武器だと自覚して生きている。
そして、セーブして使えるように遺伝子に組み込まれたのだ。


私たちは…、残念ながらハトだろう。

だからこそ、言葉は丁寧に扱いたい。
いら立っているなと思ったら、
ひと呼吸、ふた呼吸。

送る前には、必ず読みなおす。
そんなに急がなくても、大丈夫なのだから。

もし、否定する言葉を投げられたら、
自分自身を否定されたわけではないことを、思い出したい。

そして、

武器(言葉)は相手を救うこともできることを、忘れないでいたい。

2023.5.15 / 2024.1.25〜29

この記事が参加している募集

#生物がすき

1,399件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?