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【掌編小説#5】チョコレートファンタジア
甘い香りがする。
熱せられ溶けたチョコレートの甘い香り。
チョコレートが作り出す甘い幻想。
チョコレートファンタジア。
自分の息子をこういう表現をするのもどうかと思うが、まぁまぁな『イケメン』である。
別れた妻の面影が強く出ている。
そこそこモテてもいるようだ。
私といえば、40代中肉中背のすっかり『おじさん』ってやつだ。最近じゃ髪も薄くなってきた。
高校生になるイケメンは最近お菓子作りに興味を示しだし、簡単に作れるお菓子を夜な夜な作っている。
「今日は何作るのさ?」
「ん?生チョコだけど」
「へ〜そんな簡単に作れるの?」
「板チョコ溶かして生クリーム混ぜて冷やせば出来るんだってさ」
レシピはだいたいネットに落ちている。便利な時代だ。それにしても今回は量が多い気がする。
「そんなに作ってどうすんの?」
「ホワイトデーに部活の女子に配る。15人分」
「???」
ちょっと理解が及ばなかった。
部活仲間の女子たちに手作りの生チョコレート?
本命の彼女ならまだしも。
いや、そもそも男子が手作りチョコを渡すものなのか?
「ホワイトデーに手作りすんの?ほんとに?」
「今時の高校生は手作りなの!!」
時代は変わったらしい。
昭和生まれのおじさんには理解し難いが、それを受け入れる心は持ち合わせようと思った。
「お菓子作るのはいいけど、ちゃんと片付けまでやってよ!」
「わかったよ」
私は読書のために自室へ入った。
____
しばらくしてキッチンへ行くとイケメンは悪戦苦闘していた。柔らかく粘着質な生チョコを上手く切ることが出来ないようだ。
「全然上手く切れない!!」
「お前がキレてどうする」
「パパ、ちょっとやってくんない?」
「いや…まぁ…いいけどさ…」
確かに生チョコのカットにはコツが必要だった。とはいえ普段料理をするのは自分だ。包丁の扱いには多少慣れている。
カットして、コロコロ丸めて、ココアパウダーをまぶして…
それを小袋に分けて入れる。
最後に封をするのだけはイケメンだ。
「いや待て!これって結局ほとんどパパが作ったものじゃん!」
「まぁまぁ、いいじゃん!」
____
翌日女子高生たちは『おじさん』が作った生チョコを『イケメン』が作ったものとして大いに喜び食べてくれたという。
幻想は幻想のままで。
チョコレートファンタジア。
【解説という名の言い訳】
掌編小説5作目です。今回『チョコレートファンタジア』を書かせて頂きましたが、全く同じテーマ、出来事をこの掌編小説とエッセイ『生チョコの真実』の2作で書いてみました。同じ出来事を表現を変えて出してみるのも面白いかなぁと思いまして。小説は脚色してますからね。息子はそこまで『イケメン』ではありません笑
よろしければ『生チョコの真実』もご覧ください。
いつものごとく、ど素人なので色々大目に見てくださいね笑
読んでくれた全ての人へ!
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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『手作りはいいけど食中毒とか心配しちゃう者』
ミノキシジルでした。
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