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京都のお供#3 山を歩きたくなる小説『冬虫夏草』(梨木香歩)

こんにちは。今朝は意気揚々とお出かけするはずが寝過ごしてしまい慌てて布団をはねのけました。明日は雨の予報なので、何としても今日は出かけるぞという意志を持って寝たのになぜでしょう。

さて、今日は山を歩きたくなる小説をご紹介します。梨木香歩の『冬虫夏草』です。以前インスタでこのような投稿をしました。

いつも風景から思いついた小説をインスタに投稿しています。このとき、何を考えたのかというと、この小説に出てくる京都にある毘沙門堂でのムジナとの遭遇です。

――そういえば、人の列に交じって、面妖な顔が降りてきて僕に歯を剥きだしたなあ。あれはムジナであったのかなあ。

このインスタを投稿した時は毘沙門堂のお庭、晩翠園のサルスベリが美しい夏だったのですが、秋もまた美しい景色を見せてくれます。毘沙門堂は勅使門前の敷き紅葉が人気で、2011年のJR東海の「そうだ京都、行こう」で全国的に有名になりました。

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この小説では京都に住む主人公が、消えた愛犬ゴローの足跡を追って山を駆け回ります。比叡山を超え、天狗や河童に出会いながら愛犬を探し回るのですが、そこで描かれる山々がなんと険しいことか。比叡山から鈴鹿を目指して歩いているので、それもそのはずです。

毘沙門堂でムジナと遭遇するシーンはまさにゴローがいなくなる直前。ゴローの番犬っぷりが発揮されるエピソードです。そもそもなぜムジナが毘沙門堂に現れるのか。毘沙門堂では「ムカデ封じ」のお札が手に入ります。このお札こそムジナの興味の矛先。ムジナとムカデの関係とは?読むときっと「ムカデ封じ」のお札が欲しくなることでしょう。ちなみに、このお札はムカデを撃退するだけではなく、金運のご利益もありますのでお参りの際には是非お求めを。

険しくも豊かな自然はいつも人外の存在を感じさせ、敬虔な気持ちを呼び起こします。まさにそのような場で龍神信仰に触れたり、天狗や河童と会話したりする主人公の姿に、古来より信仰とは大自然と密接に結びついて起こるものだったのだ、と改めて気づかされる小説です。何かを探しながらひたすら歩き、ふと辺りを見渡すと雄大な自然が広がっている、そんな体験はいかがでしょうか。

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京都のお供にこの一冊。

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