うそつき宇宙人
うそ。
うそつきがすきだ。
人間は、うそをつくただひとつの動物らしい。
えらい演出家のひとが言っていた。
でも、あかちゃんは、人間じゃないのかしら。
あかちゃんがいつも泣いているのは、たぶんうそじゃない。
あかちゃんはうそをつかない。いや、つけない。
そうしたら、あかちゃんは宇宙人か。
(まさか、ね)
だけど、
おとなたちは、こどもが泣くと、駆け寄ってくるから、
じつは、あいつら、
しめしめと思って、泣いているのかもしれない。
なんせ宇宙人なのだから、油断できないとおもう。
わたしも、むかしはおとなのために泣いたのかもしれない。
もしかしたら、
おとなたちのために、泣くことを覚えたのかもしれない。
むかしすぎて、忘れてしまった。忘れたことも忘れてしまった。
ーおんぎゃ!おんぎゃ!おんぎゃ!
ーーおー、ママでちゅよー、
ーーマ。マ。(しめしめ)
うそはおもしろい。
うそをついている人は、もっとおもしろい。
わたしの部屋に、ゾウはいない。
天井が低いから、はいれてもこどもゾウだ。
でも、ほんとうには、
この部屋には、ゾウがいないというわけでもないのだと思う。
もちろん、ゾウがいることがほんとうになるわけではないのだけれど。
あかちゃんが泣いているのは、嘘でもほんとうでもない。
だって、わたしは宇宙人だったときのことがわからないから。
(あかちゃんは、かなしいから泣くのだろうか)
おとなたちが泣いていても、
嘘かほんとうかにしかなれないから、おとなはかなしいとおもう。
あかちゃんは、嘘でもほんとうでも、なかったはずなのに。
人間でいることは、むずかしい。
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