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足立実の『ひと言』第14回 「敗戦記念日に」 1984年8月10日

 あと五日で、また敗戦記念日がくる。
 あの悪夢のような侵略戦争は、誰が、誰の利益のために起したのだろうか。
 誰が-天皇、財閥、軍閥がである。 
 誰の利益のために-アジアを日本の植民地にし、財閥が最大限の利益をあげるためだ。「東洋平和」や「国を守るため」ではない。
 何をしたか-中国、朝鮮、東アジアを軍事占領し、殺害、略奪、侮辱をほしいままにした。同時に日本人民三百万を殺し、 国土を廃墟にした。
 こういう悪事ができた理由のひとつは、青年を少年少女時代から軍国主義教育でだまし、戦場に狩り出したからである。
 資本家にとって企業内搾取の延長が政治・外交であり、政治・外交の延長が軍事=侵略戦争だ。これは昔も今も変らないかれらの本質である。
 財界はいま土光を先頭に、行革を錦の御旗に政治を牛耳っている。中曽根は教育臨調で、再び少年少女をだまそうとしている。そして天皇は戦争犯罪人の身の程もわきまえず、全斗煥と握手して米日韓軍事同盟=侵略戦争に再び一役買おうとしている。何と悪らつなことか!
 私たち労働者は、このような戦争準備と闘い平和を守らねばならない。
 侵略戦争を阻止できなかった労働者の側の原因に、当時労働者の自覚が低く是非を判断できない者が大多数だったこと、労働者の団結と組織力が戦争を阻止するには、あまりにも弱小だったことがあげられる。
 したがって、私たちはつねに階級的自覚を高めることを怠たらず、「国益」に奉仕する全民労協の罪悪をバクロして、全国労組連の拡大のため本気で取組まねばならないと思う。(実)

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本文中用語解説

東洋平和
♪勝って来るぞと 勇ましく
ちかって故郷(くに)を 出たからは♪で有名な日本の軍歌『露営の歌』の5番に・・・ 
 戦(いくさ)する身は かねてから
 捨てる覚悟で いるものを
 ないてくれるな 草の虫
 東洋平和の ためならば
 なんの命が 惜しかろか
という歌詞がある。
戦前の日本帝国主義のアジア侵略戦争遂行の方便として使われた。

「政治・外交の延長が軍事=侵略戦争だ。」
プロイセンの将軍カール・フォン・クラウゼヴィッツの戦争に関する名著『戦争論』には以下の記述がある。
「戦争とは他の手段をもってする政治の継続である」
参考
【戦争論】
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E6%88%A6%E4%BA%89%E8%AB%96

土光
土光敏夫
1896~1988年。岡山県生まれ。昭和の実業家、財界人。石川島播磨重工業の前身である石川島造船所、東芝の経営再建をした。経団連(日本経済団体連合会)の会長を長きにわたり務め、中曽根内閣の第二臨時行政調査会会長時代には、「増税なき財政再建」「三公社民営化」などの答申を打ち出した。「ミスター合理化」「行革の鬼」などとも呼ばれた。「社会は豊かに個人は質素に思想は高く暮らしは低く」を信条とし、妻と2人きりで摂る夕食のメニューはメザシに菜っ葉・味噌汁と軟らかく炊いた玄米と質素で「メザシの土光」ともいわれた。しかし結局は資本家の代表であり労働者の怨嗟の的であった。

教育臨調
「臨時教育審議会(臨教審)」の通称で、1984年に教育改革に取り組むことに意欲を示した当時の中曽根首相が内閣総理大臣直属の審議機関として設置した審議会。
『ひと言』第12回 「学校へ行こう」 参照https://note.com/minoru732/n/n2fe57f8802c4

全斗煥(ぜん・とかん、チョン・ドゥファン)
韓国の政治家、軍人、大統領。
『ひと言』第5回 「誰がバクロするか」参照https://note.com/minoru732/n/n3c471d99a554

韓国大統領就任中、国賓として1984年9月6日より8日まで3日間日本を公式訪問し、迎賓館で行われた歓迎行事で天皇の歓迎を受け皇居で会見し、中曽根首相と首脳会談を行った。

全民労協
全日本民間労働組合協議会の略称。労働戦線の統一を目ざして1982年(昭和57)に結成された組織。1989年日本労働組合総連合会(連合)の結成によりこれに参加した。
連合の母体となった組織であり、戦闘的ナショナルセンターであった総評(日本労働組合総評議会)の解体、右翼的労働戦線統一の先駆けとなった。

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8月15日の敗戦記念日にちなみ「反戦」のコラムである。

筆者自身が少年期に「軍国少年」と国家に「教育」された経験から、「私たちはつねに階級的自覚を高めることを怠たらず、『国益』に奉仕」させられることを戒め、戦争反対の階級的労働運動の旗を堅持するよう警鐘を鳴らしている。

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