カレーの話

#ショートショート
さて、こんばんは、大森です。
昨日初めて登録投稿してみたのですが、読んでくださった方がいたようで、何だかとっても嬉しかったです。自分で読み返してみたら隙間がなくて読みづらかったですね。反省。

僕はしばらく前からカレーをランチに食べようと思って心に留めておいているのですが、なかなかいざ昼ご飯の時間になると昨日の自分と気持ちがぴったりと合わないもんですね。カレーはまだ食べられていません。

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■ 井澤さんとランチに行こうと挨拶を交わしてからどれくらいが過ぎただろう。そういうことは女子の間ではよくあることだ。私は気にはなっているけれど気にしてはいないし、別にランチに行かなかったからと言って仲が良くなったり悪くなったりすることはない。この世界の女子社会人のうち、「社交辞令」をどれだけ実効しているのか逆に聞いてみたいところだ。

 私と井澤さんの職場は一階しか離れていない。私と井澤さんの年も一歳しか離れていない。私は今日も井澤さんと行こうと思っていたカレー屋さんを通り過ぎ、ひとりでサンドイッチを買いに職場を出た。

 だが、今日は少し違った。井澤さんが二人分テイクアウトしたカレーを片手に職場と反対方向に向かっているのを目撃してしまったのだ。もともと、井澤さんは私の誘いを頑なに断っているわけでも、私が井澤さんに懲りずに声をかけているわけでもなかった。なかったはずだ。その曖昧な関係が崩れる瞬間だった。

 申し訳ない気持ちもなく、純粋な自分の心のままに井澤さんのもとに足は向かった。今となってはやめておけばよかったのに、後悔は先に立たないものだ。きっと誰かと食べるはずなのに、私はこんな風に聞いてしまったのだ。

 井澤さん、カレーふたり分も食べるんですか。
 井澤さんは答えなかった。こんなことなら聞かなければよかったのだ。私は黙ってしまった。今度は、井澤さんが話し始める。
 「一緒に食べようと思って」
 なんだ。それならそうと、最初から言ってくれたらよかったのに。そう思いながら私は手を伸ばす。井澤さんは、なぜか苦笑いをしながらそのひとパックを鞄にしまってしまう。
 「買ってしまっても、ひとりで二人分は食べられないな」

 ほうら、やっぱり私の分だったんじゃないか。ほっとして空を見上げる。目の前を舞っているこの桜の花びらを、去年も、そのおととしも見たような気がしてならない。

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いかがでしたでしょうか。陳腐でもまあいいんです。
今日はずいぶん遅くなりました。それでは、みなさん、おやすみなさい。

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