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[書評]「語りの場からの学問創成 当事者、ケア、コミュニティ」

京都大学学術出版会では西洋古典叢書というシリーズがあって私は何冊か本棚に置いてある。
西洋古典が好きな人間なら一冊は持っているややマニアックなシリーズだ。年配の方は京都大学と言えば左翼をイメージする方もいるかもしれない。

実は京都大学学術出版会ではマイノリティ向けの本も出版もされている。

「語りの場からの学問創成 当事者、ケア、コミュニティ」は先日出版されたばかりの本だ。
本書は複数の著者により書かれているがその中には当事者研究で有名な熊谷晋一郎がいる。

本書は当事者研究と密接に繋がっている。当事者研究はべてるの家というコミニュティからはじまった。

学問と言えばアンケートや実験、統計など定量的な尺度が重視される。数字は目に見えるから人は納得しやすいし、それ自体が正しさとされる。

当事者研究と似ている行いに障害者における語りというものがある。障害者というよりマイノリティといった方が正確かもしれない。
これはいわゆるマイノリティがマイノリティとしての体験を語るもので先述の定量的な尺度で探っていくアプローチとは対をなす。

本書の良い点はマイノリティの語りの最前線の事情を知ることができるところにある。類書はそう多くない。

本書にある通り、障害者が語ったとしてもそれは障害者に普遍的なものとは限らない。当然、語りの内容は個人差がある。語ることによって語り手は受容する。

第三部バリアフリーフォーラムという学問創成の場も内容が細かく事情が知れて悪くないと感じた。

ただ、不満点もある。第一部は哲学や倫理学などの記述も多く難解でアプローチとしてはやや周りくどく感じる。

本筋である第二部に注力してほしいと個人的には思った。
第二部に関しても内容にやや一貫性と統一性に欠けている点をどうしても無視できなかった。
単一の著者によって書かれるかテーマが統一されていたらもう少し読みやすくかったかも知れない。

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