ニューノーマル?60年前からずっとわたしたちの生き方そのものです
夫が前職をやめて、農業の研修を始めたのは、2020年5月コロナ禍真っ只中でした。
ちょうど緊急事態宣言が出始めた中で、周りは混乱を極める中でしたが、私たちは意外にも落ち着いて、むしろ希望さえ感じて、就農準備に取り組めた気がします。
その理由が、最近やっと明らかになってきました。
それは、「トマトは、待ってくれないからな。」と当たり前に日々仕事に取り組む師匠たちの姿を見ていたから。
師匠がUターンしてこの地に帰ってきたのは40年前。当時から、地域の農家のスタンダードを塗り替えてきたと聞きます。
米作がメインだった土地で、農家として生き残る道を模索する。
トマトの小規模産地として、地域に根付き長く続けられる農家のあり方を模索する。
当時から、王道を行く人には全く理解されなかったというその道のりは、いつでも私たちの進むべき未来のとても心強い灯台です。
農家として、激動の時代の中で、データを見つめ、お客様のニーズに応え、何度も挫折と復活を繰り返しながら磨いてきた道。
「なぜ、農家がそんなことまでしなきゃならんのか」と言われ続けて、歩いてきた道。
先の見えない時代に入ったと、コロナ真っ只中でたくさんの場所で耳にしました。けれどもなんとかやってこれたのは、
「安定?そんなの、そもそもないよ。進むだけだ。」
まるでそう語りかけるような、師匠たちの深い気概が、私達の頼りない歩みをいつでも照らしてくれたからです。
やってみるまで知らなかったけれど、農業って、その土地の本質と人柄が嫌ほど見えてくる職業なんだなって。
だって全てが根源的でシンプルすぎるから。
楽しいことばかりではないけれど、知れば知るほど、あぁ、いい町だなあって思えることも増えてきました。
住んでみて、噛みしめるたびつくづくと、ここは、まさに普通の庶民の日本の心のふるさとなんじゃないかなぁって感じます。
ここ設楽町を舞台にした『忘れられた日本人』という本は60年も前に発刊されています。
ずっと忘れられて、その都度思い返されてきた場所。
ことあるごとに立ち止まって、あらゆる小さな変化を起こしてきた場所。
いわば、ニューノーマルとあたらしいスタンダードを誰にも頼まれないのに、磨き続けてくるしかなかった場所とも言えるのではないでしょうか。
そんなことが、研修2年、実践2年のこの4年でやっとわかってきました。
2025年、日本は大きな転換期を迎えると言われています。世代が大きく変化するから。それは、高齢者の著しく進む農業の世界では特に顕著です。
ここ設楽町には、引き継がれていない素晴らしい資源と資産があらゆる方面にめちゃくちゃある。
しかも農業においては、行政主導でなく、自律的な農家集団としての試行錯誤があるから、小回りがとても効く。
実は、自分らしいライフスタイルを確立したい人の複業の一つとして最高の基盤が揃っているんですよね。
田舎暮らしや半農半Xをやりたい人にとってこんな魅力的な場所、そうそうはないということが、この1年で、聞き込みと検証を繰り返しながら、確信に変わっていきました。
だから、2024年からは、本格的に農家仲間を増やしていく取り組みにシフトしていきたいと思っています。
ふつうの会社員から、(むしろ会社員がオススメ!)ある程度の基盤を持ってフリーランスとして始められる農業。
自分の好きを大事にしながら、稼ぎも暮らしも犠牲にしない農業。
そんな、あたらしい時代の農業のニューノーマルを磨き、今現在4軒(うち70代2軒)しかいなくなってしまったルネッサンストマト農家を、少しずつ広げていきたい。
そんな取り組みを始めていけたらと思います。
2023年は、本当に皆様に支えられた1年でした。
特に12月の320キロチャレンジでは、たくさんの方に応援、お求めいただけたおかげで、このトマトと地域の魅力を改めて実感しました。
来年もこの学びをますます力に変えていきたいと思います。
みなさま、今年はほんとうにありがとうございました!来年も、どうぞよろしくお願いいたします!
良いお年を!
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