カタオモイ

今思えば、きっと一目惚れだったんだと思う。
くせっ毛の髪と私と同じ背。
女性の中では背が高い方である自分より身長が高いなんて滅多になくて嬉しさと珍しさで笑って話した記憶がある。

「好きだったんだ。」
十年ぶりに会った彼の口から出た私の親友への恋心。
聞いた瞬間、納得感と呆れと、失恋したんだという感情を抱いたのを一年経った今でも覚えている。
失恋と同時に無自覚の恋を自覚した瞬間だった。
「恋」を自覚した瞬間から失恋したなんて笑い話だ。
笑い話なのに私は今でもその失恋を引きずっている。
空白で空白じゃない十年という期間は随分と重いものなんだなと思う。

十年の中で気になった人は彼に面影がある人ばかりだったな、とか。
ふとした瞬間に幸せを共有したいのは彼だったな、とか。
会えないかなと思っていたのは彼だったな、とか。

そんな事を思いながら隣で笑う彼と過ごす。
人が多いと迷子になる私が思わず掴んだ腕に拒否反応を示さず受け入れるのも、
離れてないか時折、後ろを見てくれる姿も、
十年の中にいた自分の胸を締め付ける。

帰りの電車。
あと数分で別れる時に我慢できなくなって口にした「前、好きだったんだよ。」の言葉に
彼は少し驚いた後に困ったように笑って「知ってたよ。」と口にした。
それに酷く驚いた。知られていたのか。
知っていて何も知らない顔をしていたのか。
それなら、今は? 今でも好きかとは彼は聞かない。
それが酷く悲しいのに、同時に許された気にもなって泣きそうになった。
「そっか……知ってたんだ……。」
「うん、知ってたよ。」
「……過去形なんだ。」
「そうだよ、過去形だよ。」
「なんで?」
「だって、そうでしょ?」
彼の言葉に素直に頷く事が出来た。
でも、十年無自覚だったどうすればいいか分からない恋心に私は未だに浸かっているのだ。

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