見出し画像

ドイツのポッドキャスト10選

僕はドイツのポッドキャストをここ2年くらい、よく聴いています。ひっそりと楽しんでいたのですが、この間、知り合いの方とお話ししている際に、「それ、聞きたがる人多いと思いますよ」とのお言葉をいただき、ここにまとめてみようと思い立ちました。
〈カルチャー〉〈トーク〉〈ニュース/政治〉〈ドキュメンタリー〉の4つに勝手にカテゴリを絞り、僕の特によく聴いているポッドキャストを紹介します。

〈カルチャー〉

❶ "Der Tag" (hr2 Kultur)
ヘッセン州公共放送のカルチャー専門チャンネルが月曜日から金曜日まで配信する、毎日50分ほどの極めて密度の高いポッドキャスト。毎日、時事ニュースを一つ取り上げ、「文化」の視点からじっくりとテーマを深めている。たとえば、清掃員の低賃金がテーマになったときは清掃員が出てくる文学を掘り起こし、コロナ危機についての回ではマキャヴェリを引用する。どうやってこのようなハイクオリティの番組を毎日配信しているのかは不明。

❷ "Lakonisch Elegant" (Deutschlandfunk Kultur)
ドイツ公共ラジオ放送のカルチャー専門チャンネルが週一回配信する、カルチャーポッドキャスト。若手のラジオジャーナリストが一つのテーマについて、ゲストを交えてトークする。テーマは演劇、映画から、時事的なものを扱うこともある。とても仲の良さそうなモデレーター陣の軽快な語り口(結構早口)が聞いていて心地よく、エピソードの長さは40分から50分ほど。

❸ "Kunst und Leben" (monopol, detektor.fm)
ベルリン発のカルチャーマガジン『モノポール』のポッドキャスト。月に一度、芸術にまつわるテーマを選び、同誌に寄稿するライターからキュレーター、批評家などが登場する。制作はネットラジオ・ポッドキャストを手がけるDetektor.fm社が担当している。ドイツのカルチャーシーンの裏側が聴けるポッドキャスト。エピソードは30分から1時間まで振れ幅がある。

〈トーク〉

❶ "Alles gesagt?" (ZEIT ONLINE, ZEIT MAGAZIN)
言わずと知れた高級週刊紙『ツァイト』の電子版『ZEIT ONLINE』編集長ヨッヘン・ヴェーグナー(Jochen Wegner)と、同紙に毎号同封される雑誌『ZEIT MAGAZIN』編集長クリストフ・アーメント(Christoph Amend)が一人のゲストを迎えて「ゲストが『言うべきことは全て言った(Alles gesagt)』と思うまで」トークを続ける。ゲストになるのは有名な政治家、歌手、ユーチューバー、料理研究家など多岐にわたる。一回の配信時間は12分から8時間40分まで毎回様々。配信頻度はだいたい月1回だが、結構マチマチ。それでもファンは多く、ポッドキャスト特有の、自分があたかもそこにいるかのような没入感が病みつきになる。
ちなみにホストの片割れ、ヴェーグナーは趣味が盆栽で日本通。よく話にも出てくる。

❷ "Deutschland 3000" (Junge ARD-Programme & funk)
新進気鋭のジャーナリスト、エファ・シュルツ(Eva Schulz)のトークポッドキャスト。とはいっても堅苦しさは全くない。毎回1時間前後のエピソードで、ゲストは政治家からミュージシャンまで多岐に渡るが、概ね30歳以下と若いことが特徴。ちなみに意味ありげな「3000」という数字に意味はなく、響きで決めたらしい。 上の "Alles gesagt?" が徹底的に没入感のあるトークであるのに対し、こちらは時々ナレーションが入って話を整理してくれるので、とても聞きやすい。2020年ドイツポッドキャストアワード、ベスト・インタビュアー部門でグランプリを獲得。

❸ "Kanackische Welle" (Marcel Aburakia, Malcolm Ohanwe)
タイトルにも入っている "Kanacke" という言葉は、外国、特にアラビア語圏やトルコなどにバックグラウンドを持つドイツ人を指す蔑称(気軽にも使ってはいけない言葉)。このポッドキャストではホストのマルコム・オーハンウィー(Malcolm Ohanwe)とマルセル・アブラキア(Marcel Aburakia)が、「"Kanacke"であること」について語っている。フェチシズムの対象とされることや、ホワイトウォッシングなど、彼らが受けている差別をより細かく区分けして、自らの体験も交えて話している。エピソードの長さは1時間半ほどで、聞き応え十分。二人はジャーナリストなので、内容にも信憑性がある。さらに、独特のドイツ語も面白い。ここで挙げた他のポッドキャストでは聞けないような言葉遣い、英語が混ざる語彙なども魅力。

❹ "Doppelkopf" (hr2 Kultur) 
"Der Tag" と同じヘッセン州公共放送の番組。俳優、作家、音楽家、研究所など文化シーンの著名人を呼んで約45分間、モデレーターのインタビューに答える。今回紹介する中ではもっとも古典的な「ラジオ番組」っぽさがある。ゲストとして呼ばれるのはどちらかと言えばすでに名声を築いた大御所で、インタビュアーもベテラン。

〈ニュース/政治〉

❶ "Update" (Deutschlandfunk Nova)
ドイツ公共ラジオ放送の若者向けチャンネルが毎日配信しているポッドキャスト。ラジオ番組をポッドキャスト化したもので、とても聴きやすいのに加え、毎日ドイツ時間の夜に放送され、その後配信されるので、日本では朝起きて聞くと、ちょうど最新のニュースがドイツから届く形になる。番組の時間は30分ほどで、最新のニュースから、ちょっとした面白ニュースまで聞き応え十分。月曜日から金曜日まで配信。

❷ "Was jetzt?" (ZEIT ONLINE)
"ZEIT ONLINE" のニュースポッドキャスト。ドイツ時間の朝に配信されるので、日本では午後になるが、10分以下でその日知るべきニュースをまとめてくれる。話しているのは記者なので、話し方はラジオパーソナリティとは少し違い、飾らず実直な感じ。平日は毎日配信。


❸ "Das Thema" (Süddeutsche Zeitung)
タックスヘイヴンに関わる機密文書「パナマ文書」を匿名のリーク主に託されたことで知られる、ドイツを代表する日刊紙『南ドイツ新聞』が毎週配信するポッドキャスト。同紙のオーディオ部門を率いるラウラ・テアベアル(Laura Terberl)が、重点的に報道されているテーマについて、記者と議論する。定評のある南ドイツ新聞の探査ジャーナリズム(英:investigative journalism)をオーディオでも聴けるのが魅力。エピソードの長さは30分から50分ほど。

〈ドキュメンタリー〉

❶ "180 Grad: Geschichten gegen den Hass" (NDR Info)
定期配信型ではなく、完結型のポッドキャスト。制作は北ドイツ放送。難民に対するヘイト、ホモフォビアなど社会の分断をテーマに、7エピソードかけて、憎しみ合いが、対話を通して「180度」反転した例を紹介している。ドイツ、アイルランド、スイス、アメリカ、ボツワナなどでの綿密な取材、臨場感のあるオーディオが、ホストの二人の対話の中に差し込まれる。一人はこれらの取材を行ったジャーナリストのバスティアン・ベルブナー(Bastian Berbner)、そしてもう一人はアレクサンドラ・ロイコフ(Alexandra Rojkov)だ。ポッドキャストは、ベルブナーが「対話を通してヘイトは乗り越えられる」と力説し、エピソードを紹介していき、ロイコフはそれに対して懐疑的な目を向ける話し相手、という構図で、非常に引き込まれる。
ちなみにロイコフは2019年、性暴力被害を公表した日本のジャーナリスト伊藤詩織のルポルタージュを週刊誌『シュピーゲル』で発表した。

今回のおすすめは以上です。ポッドキャストは、家でのちょっとした時間、移動中の時間などに、耳だけで楽しめるコンテンツ。日本にも、数こそドイツに比べると少ないですが、面白いポッドキャストがあるので、ぜひいいものがあれば教えてください。
最後に、ドイツのポッドキャストを聴き始めてからポッドキャストというメディアの魅力に気づき、友人と始めたポッドキャスト『一宿一飯』がこちらです。暇だったらぜひ聞いてみてください。

皆様健康にお気をつけて!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?