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何度訪れても新しい発見がある南房総市。災害を乗り越えたまちの現在とは<前編>

みんなとチョイス」のnoteでは、ふるさと納税を通じて、地域をもっと元気にするために頑張るヒトの声を、ふるさとチョイススタッフとの対話を通して、お伝えします。


9月24日(日)、千葉県南房総市で「みんなとチョイス」のファンミーティングを開催。

南房総市は、令和元年9月9日に発生した台風15号で被災した際、ふるさとチョイス災害支援を立ち上げ、ふるさと納税の寄付や応援を受けながら、災害を乗り越えてきました。

ふるさとチョイス災害支援とは?
災害発生時、自治体がふるさと納税を活用して迅速に災害復興のための寄付を募る緊急寄付受付サイト。
自治体が直接寄付を募ることで、寄付金が速やかにかつ、ダイレクトに被災地へ届きます。

今回は、被災した事業者や施設をめぐりながら、現在のまちの様子について教えていただきました。そして、南房総市の未来につながるアイデアについて、みんなと意見交換をするなど、盛りだくさんな1日。

ファンミーティング終了後、南房総市のふるさと納税担当者と、ふるさとチョイススタッフが振り返りながら話した様子を、<前編><後編>の2回に分けて、お届け!

このnoteは、前編。災害支援を立ち上げた当時の様子や、寄付金を活用した復興への道のりについて紹介します。

川名 恭介(かわな きょうすけ)さん
千葉県南房総市役所 総務部企画財政課
南房総市出身。2006年4月に南房総市役所に入庁し、2023年4月からふるさと納税担当者となる。現在は、ふるさと納税と移住定住業務を担う。

阿部 瑛里花(あべ えりか)
ふるさとチョイス事業部/マーケティング統括部/ ブランドコミュニケーション部
宮城県仙台市出身。2021年にトラストバンクに入社。「みんなとチョイス」の企画運営を担当。現在は、ふるさとチョイスのSNS運用も担う。

令和元年台風15号発生時の様子

「災害が少ないまち」を襲った、台風の被害

阿部:今日のファンミーティングは、いい天気に恵まれましたね!

川名:天気が良いと、南房総のいいところをより感じてもらえるので、よかったです。

阿部:今回のファンミーティングは、南房総市に大きな被害をもたらした「令和元年台風15号」について振り返りながら、現在のまちの様子を見ていただくツアーでした。災害当時のことを、教えていただけますでしょうか?

川名:あれは本当にすごい台風で。もともと房総半島は、災害が少ない場所と言われているのですが、「 東京湾に台風が入るとかなり危険」という話を、先人の知恵みたいによく聞いていて。だから、あの台風が東京湾に向かって進行するにつれて、「ああ、とんでもないものが来た」と震えました。

阿部:そうだったんですね。

川名:台風直撃後、停電や断水も起こりました。電気が通っているところでスマホを充電させていただいたり、お風呂に水を溜めて過ごしていましたね。当時は9月上旬で暑かったので、水を浴びていた記憶があります。

阿部:きっと市民の方も、ここまで大きな被害は初めてでしたよね。まちや役所内の混乱も、さぞ大きかったはず…。

川名:そうですね。燃料がなくなったり、物流が滞ってコンビニから商品が減ったり。市役所でも、公用車がひっくり返り、飛来物で車のガラスが割れていました。僕も、自分の業務をこなしつつ、避難所の開設をし、家に帰って寝て、避難所に行って…という日々が数週間続きましたね。

阿部:ライフラインが乱れたり、まちの被害が大きいと、何から手をつけたらいいか分からなくなりそうです。

川名:はい。「道の駅とみうら 枇杷倶楽部」は、屋根が吹き飛ぶなど、総額約3千万円の甚大な被害を受けました。また、富津館山道路の脇にある「道の駅富楽里とみやま」も、倉庫として使われていた平屋の建物が、少し離れた富津館山道路を超えた反対側に飛ばされていたり。僕もそんな光景は初めてで、すごく不安でした。

「道の駅とみうら枇杷倶楽部」の被害状況

阿部:一夜にして、まちの様子が一変してしまったら、誰でも不安になりますよね。当時、川名さんはどのような部署に所属していたのでしょうか?

川名:商工観光部観光プロモーション課です。海水浴場のライフセーバーのマネージャーや、登山道管理で"木こり"のような業務を担当していました。

阿部:やっぱり自然環境にも影響はありましたよね。

川名:登山道は倒れた木などが散乱していて、「山の中は手をつけられない」という印象でした。

阿部:そうですよね。実は、私もあの台風15号が発生した1週間後に、南房総付近に行くことがあって。道の至る所に自衛隊員さんがいて「ここは通れないよ!」と何度も迂回して…という経験をしました。現場は相当大変だったと思います。

川名:僕もこれまでずっと南房総で育っていますが、あんな台風は経験したことないですし、これからも起きてほしくないと願っています。

まちの事業者への影響

阿部:南房総市は、海・山・陸それぞれの魅力があるので、まちの事業者も多いはず。実際、被害に遭われた事業者も多かったですか?

川名:はい。事業者の施設が損壊してしまったり、抱えていた在庫が停電によって全てダメになってしまったり。ただでさえ普段の日常が変わって悲しい思いをしているのに、品を出したくても出せない、どんどん品が腐ってしまうという困難があったといいます。

阿部:そうですよね。当時ふるさと納税担当だった南房総市職員さんが、ふるさとチョイスAWARD2019で「事業者への被害」について話していた内容が印象的で、私も胸が苦しくなりました。

ふるさとチョイスAWARD」とは?
地域で頑張る「人」にスポットを当て、ふるさと納税の裏側で起きたストーリーや地域の人の熱い想いを表彰する年に一度のイベント。

南房総市と岩手県北上市は、惜しくも大賞受賞とはならなかったものの、「この自治体さんの勇気と行動にぜひ賞を贈りたい」という審査員全員の総意により急遽「審査員特別賞」が贈られました。

川名:今日のファンミーティングでも伺った、海産物卸・製造加工などを行う水産会社与助丸商店さん。ふるさと納税では、伊勢海老やアワビ、サザエなどをお礼の品として出していますが、この事業者さんも、停電の影響で扱っている海産物が腐敗し、ダメになってしまった。しかも、生け簀で育てていた伊勢海老が、高潮の影響で海に流されてしまうという経験をし、被害総額も高く、経営的にも心身的にも、かなり苦しい思いをしたと聞いています。

被害のあった「与助丸商店」の生け簀

阿部:一生懸命育ててきたのに、目の前でどんどんダメになっていく様子を見るのは、想像しただけでも辛いですよね。

川名:あと今日伺ったところで言うと、「安田メロン農園」さん。南房総の温暖な気候を生かして、ガラス温室で1年中メロンを育てているのですが、そのガラスが割れ、あたりに破片が散らばってメロンに傷がつくなどの被害もあったといいます。

被害のあった「安田メロン農園」の温室の様子

阿部:先ほども触れた、ふるさとチョイスAWARD2019で、こうした被害があると知った当時の担当者が、「事業者が口を揃えて"くやしい"と言っていた」「その言葉を聞けば聞くほど、地域が滅んでいくのではないかと思った」と話していました。

川名:ふるさと納税担当として、日々、事業者さんとコミュニケーションをとっていたからこそ、本気でそう感じたんだと思います。そこですぐに、東日本大震災で被災した事業者を、ふるさと納税で応援してきた、岩手県北上市にいる知り合いの方に連絡をとって、「どうにかできないか」と相談したそうです。

阿部:それで、「思いやり型返礼品 ・災害復旧支援型」を実施することにつながったんですね。

「思いやり型返礼品」とは?
寄付した自分が品を受け取るのではなく、誰かに返礼品を送ったり(直接支援)、障がい者福祉施設等で作られた品を受け取る(間接支援)ことで、地域のNPOや児童養護施設などの支援に繋がります。

ふるさとチョイスでは、「思いやり型返礼品」を全国に普及させていく『きふと、』というプロジェクトを実施しています。

川名:はい。被災した事業者は、ふるさと納税していただいても、お返しできるお礼の品がない。だから、代わりに「お礼の手紙」を事業者に書いていただきました。被災して9日後、「思いやり型返礼品 ・災害復旧支援型」を公開すると、すぐに100件を超える寄付と、寄付者の皆さんからの応援メッセージが届きました。

阿部:当時の事業者さんとしては、ふるさと納税による応援が、本当に心の支えになったはずです。

川名:「くやしい」と目に涙を溜めて話していた事業者さんが、「また何か面白いことをやろうよ!」と、前を向くきっかけになったと聞きました。ふるさと納税には、そういう力があると僕も思います。

笑顔でアクアメロンの紹介をする、安田さん

ふるさとチョイス災害支援プロジェクトの立ち上げ

全国から約6,000万円の寄付が集まる

阿部:この台風による被害で、損壊してしまった建物などを復旧するために、1日も経たずに令和元年台風15号復興支援に伴う緊急寄付受付フォームを開設されましたよね。

川名:はい。ふるさと納税でできる災害支援ということで、全国から3,446件、60,714,711円の寄付と応援をいただきました。本当に感謝をしています。

阿部:まだ先が見えない中で、たくさんの応援メッセージが届いたことも励みになったのではと思います。

川名:被災してから10日間で3,000万円、その一ヶ月後には4,000万円が集まったと聞きました。もし自分が当時の担当者だったら、このスピード感でこれだけの応援が届いたことは、ものすごく大きな力と感じるはずです。

阿部:集まった寄付金は、どのように活用されたのでしょうか?

川名:主には、損壊した施設の修繕費用です。富浦中学校の体育館の外壁が飛ばされてしまっていたので、学校行事などに間に合うように、早急に着手しました。

阿部:そのほかにも、道の駅やこども園の修繕に活用しているという報告を、寄付受付フォームの「更新情報」をみて把握していました。こうして、寄付金の活用報告をしていくことって、大事ですよね。

「富浦中学校」の外壁工事の様子

地域と連携しながら立ち上げる、災害支援

川名:僕も改めて実感したのですが、災害が起きると、やらなければいけないことが山積み。そんな中で、この災害支援による寄付受付フォームは、ふるさとチョイスさんが立ち上げてくれる。現場目線で言うと、本当に助かります。

阿部:私たちも、地震や土砂崩れが発生したニュースを見たり、大雨や豪雪の予報が出た時点で、「あの地域の被害がすごそうだから、自治体さんに連絡してみよう」と、社員一人ひとりが、自然災害にアンテナを張って構える体制を取っています。

川名:被災から時間が経てば経つほど、地域外の人の意識は薄れていくと思うんですね。だから、災害が起きてすぐに対応していただく、そのスピード感が、本当にありがたい。

ふるさとチョイス災害支援のTOP画面

阿部:ニュースを見て「災害支援」したくても、何をすればいいのかわからなくて、なかなか動けない…という人も多いと思うんです。でも、ふるさとチョイスの災害支援は、ふるさと納税という形で、自分の意思で被災地・被災者を支援できる。

川名:ふるさと納税制度の、在るべき形ですね。

阿部:日本は災害が多い国。一時しか報道されない災害、けれど復旧活動は長期の支援を必要としています。物資や資金も必要ですが、大切なのは、”想いや関心を持ち続けてもらうこと”。そのために、私たちは継続的な発信、寄付金の使い道の報告などを通して、”いまも地域で頑張っている人がいること”を、一緒に伝え続けていく使命があると考えています。

川名:今日のファンミーティングも、まさに地域の現状を伝える内容でした。後ろばかり振り返ってはいられませんし、参加した皆さんに少しでも、「ふるさと納税で地域は前を向くことができる」と感じてもらえたなら嬉しいです。


”ふるさと納税による応援が、地域を変える”

地域で起きていることは、外から見ると分かりづらいこともありますよね。

私たちはただのポータルサイトではなく、地域に伴走するブランドとして、「ふるさとチョイス」や「災害支援」のサイトの中で、そうした"地域のイマ"をお伝えすることを、一番意識しています。

ふるさと納税は「自分の意思で、税金の使い道を選ぶ」ことができる制度。

地域が本当に大変なときにいただく寄付は、その地域で働く自治体職員、事業者、景色を変えていく力がある。そう感じた対談でした。

<後編>では、南房総市内で開催した、ファンミーティング当日の内容を振り返ります。また、これから南房総市が目指していきたい “まちの未来” について話す様子もお届けしますので、おたのしみに!

※<後編>を公開しました(10/30)


千葉県南房総市をふるさと納税で応援

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「みんなとチョイス」とは?

私たちは、ふるさと納税ポータルサイトを運営している「ふるさとチョイス」です。私たちは、寄付者の想いを地域に届け、地域の変化を寄付者に発信しています。
その活動の一つである「みんなとチョイス」では、地域で活動するヒトの想いに触れ、地域の魅力や課題についてみんなと一緒に考えるファンミーティングなどを行いながら、持続可能な地域の未来をいっしょに考える場をつくっています。
そして、ふるさと納税を通じて地域をもっと元気にするために頑張るヒトの声を、もっとたくさんの方と共有したいと思い、このnoteで、ふるさとチョイススタッフとの対話を通してお伝えしています。

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