見出し画像

ドラマ「海のはじまり」 切なさの渋滞を弾き飛ばすエゴ

この夏1番のホラーと銘打たれたーいや、打たれとらんわ!

最初からず〜っと、切ない。
出てくる全員が切ない。
とりわけ水季(古川琴音)を、密かに想っていただろう同僚の津野(池松壮亮)が切ない。
めちゃくちゃ可愛いくてあどけない海ちゃん、そしてエモい劇伴。
切なさが渋滞しまくっておる。

相まって、何度も泣きそうになっちゃうんだけれど…。
急に背筋が寒くなって、切なさがぶっ飛ぶんですわ。
やっぱり、怖いよ〜。
で、怖いが勝っちゃうのは、女性陣の振り切ったエゴのせいだと思うのです。


* * *

何がうまいって母親の古川琴音よりも目黒蓮に似てるなあ、と思わせる海ちゃんの配役。
残酷だよね。(夏にとって)

水季を思いっきり突拍子もない娘、夏を振り切ったスーパーモジモジくんに描いたことで、彼氏に隠して出産しちゃうことや、それに全く気づかない彼氏に、ぎり説得力を持たせているとは思う。
が、もうちょっと全く違うタイプの二人が惹かれあっていった過程を描いてくれると、さらに色々と腑に落ちるかもしれません。

みんながみんな誰かを思いやって、その思いやりが過ぎて、噛み合わなくなっていく。
過剰な優しさに見えて、その正体はエゴなんだろう。
そのエゴが、怖さの所以になっている。

水季が夏に黙って出産し、子育てしたこと。
弥生(有村架純)が、自身の過去を償うかのように、海の母になることを決意すること。
朱音(大竹しのぶ)が、夏に海を育ててほしいこと。そして、娘がした苦労と同じ苦労を夏にさせたいこと。水季がいたはずの場所に、弥生が入ってくることが許せないこと。

どれも、それぞれのエゴなんだよな。それも、強烈な。
そのど真ん中にいる夏、お気の毒様…としか言いようがない。
なのに、モジモジがすぎるため、あまりかわいそうにはならない。なんなら、ちょっとイラッとするのも、あえての演出だと思います。
そこが、面白い。

だいたい、夏以外の登場人物たちも、はっきり物を言ってそうで、実は心のうちは全く晒していないという意味では、夏と同類モジモジくんなのであった。
言わずもがな、津野もモジモジくんやで。(津野は、結構気に入ってます)

でも、海のことを隠さずに弥生に伝えたことや、安易に海と会う決断をしなかったところは、夏は偉かったな〜と思うよ。
夏の、嘘のなさが、きっとこのドラマを救っていくのではないかと期待します。

自分は親世代だから、大竹しのぶの気持ちは一番わかる気がしますね。
有村架純じゃなきゃ、しのぶに対抗できないと思うので、ここもナイス配役。

* * *

マスクなしの夏だ!ヒャッホ〜〜〜〜ウ!!
と、浮かれ飛んでる若者に、冷や水を浴びせかけるような夏ドラマ。
「海のはじまり」
いいと思います。
「あの子の子ども」ともども、なんだか昭和ドラマの懐かしさを感じるけれど、令和のトレンドなのか?(「このこ誰の子」を思い出したよ)

自分本位に見えた水季の真意も、追々明かされる時が来るのではないかと思います。

キレイなの。
切ないの。
だけどどうしようもなくサイコなの。
でも、どんな家族の在り方も肯定してくれそうな、そんな期待感もあります。
そこが、面白い。

言わずにおこうかと思ったけど、無垢さ故の言動が、一撃一撃夏をブッ刺していく海。
一番怖いよね。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?