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お互いに不幸だった頃

6年ほど前、ばあばの認知症が出始めて、周辺症状が激しかったころの、メモを読み返してみた。当時の私は、毎日が辛すぎて、殴り書きのようにノートに書き記している。

〈当時のメモ〉+++

・「殺される!」と怒鳴りながら、家にやってくる。目がおかしい。感情垂れ流し。
・人(※私)をたたく。激怒して。
・ひいおばあちゃん(※私の祖母)の財産を、娘たち(※私の母と叔母)が狙っている。お嫁さん(※私の叔父の妻)はそれで追い出された。自分は全てわかっていると主張。作話。
・「認知症かもしれない!でもいいんだよ!!」と言っている。
・「来ると約束したのに来なかった」とクレームの電話。事実無根だが、あいまいな話は理解できないよう。
・敬老の日のイベント、出かけるのに30分くらいかかる。カバンや眼鏡を決めたとおりにしないと気が済まない。
・牛乳大量買い。医師からそうしろと言われた、と思っていて、それを忠実にやろうとする。
・「2人の男が付けてくる。」「マンション中が敵だ」、と言う。
・吹き出す悪感情。変なことを言うけれど、痛いところを突くことも。大人の嫌らしさ。周りは辛い。心の奥底ではこういうことをずっと思っていたのかと・・・確かに人にはいろいろな面があるけど、その一番暗い部分がむき出しになったよう。

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今、過去の自分の文章を書き写していて、ああ、あの頃の私は自分の辛さでいっぱいいっぱいだったんだと、改めて感じる。ばあばの気持ちには全く目を向けられていなかった。

実は、ばあばの死後、遺品を整理していたら、ノートが出てきた。それは、認知症が出始めた頃に書かれたもので、親戚や友達の名前や、銀行口座などがびっしりと記されていた。

もしかすると、「わからなくなってしまう」ことに恐怖心を覚えて、必死で書き記したんじゃないかと思う。

今の私が、当時の私に言えるとしたら、こんな一言だ。

「ばあばの行動のおかしさをあげつらって、いちいち振り回されるんじゃなく、その行動の根っこに横たわる”不安”を取り除いてあげればいいんだよ。」


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