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エッセイ

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2024年5月の記事一覧

【エッセイ】いつだって、きみの笑顔を祈っている

【エッセイ】いつだって、きみの笑顔を祈っている

寝坊して、明るく陽気に遅刻を選んだ息子を、小学校まで送って行った。

児童玄関の前で、中に入れず、しゃがんで泣いている子がいた。
そばには先生がついていて、一緒にしゃがんで、
押すでも引くでもなく、一生懸命に寄り添おうとしている姿が、目に入る。

心臓が、ぎゅうっと絞られるような気持ちになる。
私にも、身に覚えがあるからだ。
子どもとしても、親としても。

「そこまでして、学校に行く必要はない」と

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【エッセイ】「今ここ」のホットケーキ

【エッセイ】「今ここ」のホットケーキ

義祖母が入院した。

認知症が進んではいたのだけれど、すこぶる元気で、迫力満点の90歳。
癖の強さでは、町内でも指折りの有名人である。

諸事情により、しばらく病院で預かってもらえることになった。

義祖母の身体機能は、年相応よりも健康であったので、
私には、いわゆる「介護」と言われて一般的に想像されるような、日々の苦労があったわけではない。
ただ「対応する」だけだった。

呼ばれたら、話を聞く。

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【エッセイ】海を見に行く

【エッセイ】海を見に行く

今日は、海を見に行こう、と決めていた。

歩いて5分ほどで海に着くのに、近いがゆえに、
わざわざ目的地にすることが減っていたのだ。

海を見ると決めて、最初に浮かんだ場所は、高台の公園だった。
平日は、人の気配が、ほとんどないところ。

急勾配の階段を上ると、眼下に町並みと水平線が広がる、眺めのよい公園なのだが、
階段の途中で、大きな猿がガサガサと走り抜けてゆき、
短いしっぽをぴんと立てて、こちら

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