タルシル中庸∞影と光(15話)

真壁「痛ってーなぁ、本当に蹴りやがった」

西崎「仲いいな」

真壁「んなこと無よ。さっきのガンダム。どっかで見たような気がする」

西崎「そお?」

真壁「よく分からんけど」

西崎「何だそれ。とりあえずさぁ、ちょっとでもいいから観光してーなぁ」

真壁「おまえはもうしてんじゃん。京劇とか長城とか」

西崎「へへへ。あ、もう着いたんじゃない?」

真壁「誤魔化すな!」

《バタンっ》

《ピーンポーン》

西崎「空港って何かいつも緊張すんな。これ見てみ。ダウンロードしといたんだぁ、空港のマップ」

真壁「お、やるじゃん。本屋どこ?」

西崎「今、ここの入口から入ってきたからぁ、、、えーっと、あのコーヒー屋の隣かな?」

真壁「んだね。もういるかな。エージェント」

西崎「立ち読みしながら待ってよう」

真壁「時間無いから探さなきゃ」

西崎「あれ?あそこ、関守さんじゃない?」

真壁「あ、本当だ。今日は休みなのかな?学校とかバイトとか」

西崎「関守さぁーん!」

関守「ん?あれ?西崎さん!ん?真壁さんも?帰国は?」

真壁「ちょっと用事が出来て帰国延期したんです。関守さんこそどうしたんです?学校とバイトはお休みですか?研修疲れとか?」

関守「まぁ、ちょっとヤボ用で…」

西崎「何か知ってる人に会うと安心するぅぅ、、、んん?ん?」

西崎・真壁「ガンダムっっ!」

真壁「関守さん、あのぉ、もしかしてぇ、ヤボ用って、そのぉ、何か極秘の何かとか?」

関守「え?君達まさか?あ!ガンダム!」

真壁「はいぃぃ、私の兄に持たされました」

関守「君達が?真壁さんから連絡あったけど。真壁さん、真壁さん、兄、、兄弟?」

真壁「はい、私の兄です。しかしまさか関守さんがエージェ……、鍼灸師っしょ?」

関守「まぁ、色々、、そういうことなら、もう時間無いからとりあえずチェックインしちゃいましょう。ボーディング始まったアナウンスありましたから。チケットこれね」

西崎「あ、ありがとうございます。ちょっと、この雑誌買ってきていいっすか?」

真壁「早くっ!」


蹴飛ばされるようにタクシーに飛び乗ったのは本当に蹴られて押し込まれたのだった。
実はこのタクシーの運転手もエージェントの一人で、空港に着くまでのしばしの間、真壁兄からの依頼でいくつかポイントをレクチャーしてくれた。
ド素人が急にスパイの真似事なんて出来る訳がない。が、このエージェント曰く、普通に観光しろとのことだった。素人感が大事だと。それから常に周囲には仲間のエージェント達がいるはずだからそれを見極めろと。
当然、ガンダムだ。

空港に到着して、無賃乗車でタクシーを飛び降り、見ず知らずのエージェントを探すのは難儀だと思われたがまさかの再会!
今回の中国研修でスタッフとしてサポートしてくれた関守だった。
しっかりガンダムのストラップがスマホケースに付けられていた。

西崎と真壁は研修中の休憩時間に関守のガンダムストラップを見つけたことでガンダム談義で盛り上がっていた。
真壁兄に目印だと見せられたガンダムストラップに見覚えがあったのはこのため。

関守は現在、留学生として勉強しながら中国の治療院でバイトしていると聞いていたが、実は真壁兄の仲間で諜報活動をするエージェントだったようだ。

真壁兄はここでのサポートエージェントが関守で、関守は鍼灸師であるということも知らない様子に思える。

真壁と西崎はエージェントが関守だったということとで予想外だったことと知り合いだった安心感で複雑な気持ちだったが、既にボーディングが始まっていたのでそんなことは気にしていられず、搭乗ゲートまで全速力で走った。

優先クラスは既に終わっていたがエコノミークラスの搭乗が始まったばかりで余裕で間に合った。
真壁と西崎は息を切らしながらも関守にお礼を言って搭乗しようとしたら関守も同行するのだと一緒に搭乗ゲートを通過した。
何とも心強い。


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