いつかは、ファーストペンギン
「ファーストペンギン」という言葉を聞いたことがあるだろうか。ペンギンは基本的に群れで生活する。その中で、魚を獲るために1番最初に海に飛び込むことのできる、勇敢なペンギンのことを「ファーストペンギン」と呼ぶのだそうだ。
海にはペンギンの敵となるシャチやオットセイなどの肉食獣が待ち構えているかもしれない。しかし、厳しい環境の中で、ペンギンだって海に潜って魚を獲らなければ生きていくことはできない。そうした恐怖や迷いの中で、勇気をもって海の中へ飛び込んでいくことができるのが「ファーストペンギン」だ。
君も、この「ファーストペンギン」のように、自分の思いや信念をもって、たくさんのことに自らすすんで飛び込んでみてほしい。たとえそこに失敗や困難があったとしても、「自分の意志で飛び込んだ」ということそのものに価値がある。「他人と同じ」でいることに安心感を覚えるのではなく、リスクを恐れず、ファーストペンギンを目指し、仲間のために、社会のために、そしてなにより、あなたが生きるために。
実は、ペンギンの群れには特定のリーダーはいない。ちなみに、子育ても、いわゆる保育園のような役割をする者がいて、お互いに助け合いながら育てるらしい。リーダーがいないため、群れに何らかの危険が迫ったときには、いち早く察知して動き出した最初の1羽のあとに他のペンギンたちが続くことで、まわりも一緒に難を逃れることができる。強いボスやリーダーではなく、「最初の1羽」に従うのが彼らの集団行動の特徴だ。
裏を返せば、リーダーが不在なのではなく、誰しもがリーダーになれるということだ。だからこそ、誰もが自分の意志をもち、自分にできることを自覚し、行動する勇気をもっていなければならない。
これは、ペンギンの話ではない。あなたの話だ。唯一異なる点があるとすれば、それは過酷な環境で暮らすペンギンと、豊かな社会で暮らす人間、という点だろうか。この満たされた世界の中で、誰が「ファーストペンギン」になろうと思うだろう。誰が危険で不安定な大海原に飛び込もうというのだろう。けれども、ファーストペンギンが現れなければ、地上の豊かさは日に日に失われ、持続可能な未来の保障は、もはやない。
あなたが、あなたらしく生きるために。誰もが自分らしく生きることのできる社会のために。ただし、むやみに危険に満ちた海に飛び込んではいけない。知識をもって、風を読め。教養をもって、空を見上げろ。信頼を得て、仲間を集めろ。
いつかは、ファーストペンギンに。あなたも、私も。
追記:勇敢だと思われるファーストペンギンだが、実はうっかり海に飛び込んで食べられてしまうマヌケなペンギンもあるらしい。海は恐ろしい。
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